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子猫は何度も確かめるように私の方を向きながら、絶妙な距離を保って先へ進んでいく。
路地とも言えないような細いビルとビルの隙間を縫うように歩き、子猫が立ち止まった場所には「リーフ亭」と書かれた看板があった。


「えっ!?リーフ亭!?」


スマホアプリに投稿されているぼやけた写真と見比べると、なるほど同じ外観だ。
どこをどう歩いたかよくわからないが、子猫の案内で目的地にたどり着いてしまった。


「子猫ちゃん、ありがと・・・あれ?」


お礼を言おうと周りを見ても、子猫の姿はそこになかった。
代わりにそこに居たのは、見とれてしまうほど素敵な男の子だった。
シルバーの髪に長いまつげと憂いを帯びたようなブルーグレーの瞳。ボーイのような白いシャツに黒いベスト、黒いパンツとタイにエプロン姿だ。
絵画から出てきたように整った顔は、イケメンにそこまで興味がない私でも、目を奪われてしまう程に美しい。
一瞬、時が止まったように感じた。


「お姉さん、うちのお客だろ?入るの?入らないの?」


見た目とは違うぶっきらぼうな言葉遣いに、はっと我に返る。


「え、ええ。実は抽選でクーポンが当たったので。」


スマホで当選画面を見せると、男の子が店内に案内してくれる。
お店のアプローチを歩きながら子猫を探してみたものの、見当たらなかった。


「凄く可愛い子猫だったなあ。ちょっとモフりたかったなあ。」


ぼそっと呟き、お店の扉を男の子に続いて入る。


「オーナー、客だぜ!クーポン当選者!」


男の子はまたぶっきらぼうに店内に向かって声を挙げる。
この美しい容姿からは想像もつかないくらいの乱暴な言葉遣いにあっけにとられる。
店内には、自分たちの他に人が居ない。
こんなにしっかりした外観で、わくわくするような店構えなのに客が居ない。


「あの、今日はイベントか何かですか?」


ランチ時に人が居ない飲食店なんて珍しいし、1日だけの限定クーポンだったことから、もしかしたら特別なイベントかな?と私が考えたのも仕方がないと思う。


「あ?なんで?」

「いえ、他のお客がいないので。限定クーポン客の招待イベントか何かかと。」

「はぁ、うちはいつも閑古鳥こんなだよ。」

「え!?サイトに載ってるお料理はとても美味しそうなのに!?」

「まあな、オーナーのメシは美味いよ。腕に間違いはねぇから、安心して食ってけ。せっかくたどり着いたんだからな!」


少年は得意げに笑っている。天使のような笑みに見とれていると、カウンターの奥から、長身の男性が顔を覗かせた。
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