島の少女(海女編)

きさらぎ ゆき

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3)漁場へ

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3)漁場へ

雄一が気持ちを集中させられないまま食事を続けていると、ゆうこおばさんが話しかけてきた。
「 そう言えば、雄一くんってまだ10代なんだって? いくつなの? 」
これは、組合長から聞いていたので、心の準備は出来ている。
「 はい、 今、映像系の専門学校の1年生で18です。 まだまだ未熟なのに、取材とか受けて下さって有難うございます 」
「 わあ、そう、 18か~、若いなあ… 私とは… えーっ 30… までいかないか… 29歳ちがい… でも、雄一くんは、若いのに礼儀正しいね。 えらいなあ… 」
「 そんなことないです。 本当に、まだまだ全然なのに、取材協力してくれて、すっごく助かります… 」
「 え~、 そんなこと無いよう。 それに、取材受けるのは、さなだから… あ、でも、遠慮なく取材してね。 映像系だから撮影中心? 本当に遠慮なしで、さなの事、いろいろ何でも撮ってやってね。 難しい要求でも、根性で頑張っちゃう子だから… 本当に、私に… 親にも遠慮しないでいいから… こんな撮影どうかなって思っても、聞かないでいいから好きに撮って… ねえ、組合長さん、 もうここで許可するから証人になって。 雄一くんが撮りたい事は、さなの全部、撮っていいからね、 保護者がここで許可します! 私、雄一くんの事、気に入っちゃったから 」

母親… ゆうこおばさんも、組合長に負けず劣らず、しゃべりだすと勢いが止まらない。ノリが良いのは、この島の特徴なのだろうか。

すると、組合長も、ますます悪ノリして話しかけてくる。
「 雄一くん、本当に若いよねえ… しかも、かわいいし、 おまけに元気そうよねえ、あっちも… ん~っと、私が見たところ、あっちのほうは、もうそこそこは経験しているよねえ… ねえ、ゆうこさん、どう思う… 」

これは、どうやら下ネタが始まったらしい。確かに、中年のおばさんが2人いれば、こういう話も出てきそうな事は雄一も分かっていた。
一応、雄一という『男』はいるのだが、この場合の若造は聞かせる為の必須アイテムなので、かえって下ネタを発動させる理由になってしまう。

「 う~ん、そうよねえ… 私も、経験は アリ だと思うなあ… きっとスタミナも十分だから、じゃあ、今晩辺り、相手してもらおうかなあ… 」
と、ゆうこおばさんもノリ良く答えながら、雄一の指に指を絡めてくる。
雄一も、セックスの経験は20代後半~30代半ばの女性相手ならかなり豊富で、今現在もその年齢のセックスフレンドは7人もいる。同年代からは全くモテない地味な男なのに、年上には本当にモテる。ただ、その内容は、付き合うとか彼氏とかの対象ではなく、セックスの相手、としてのモテ方なのだが…
それでも、今まで相手にした事も近づいた事も無い様な、47歳のおばさんの圧に圧倒されている。確かに、間近で見ても、化粧っ気が無いにもかかわらず若くて明るいから、からかわれているのは分かっていても股間が硬くなってしまう。
更に一緒になってからかってくるのが、やっぱり圧の強い組合長なのだから、いつの間にか、雄一は遊ばれ放題になっていた。

顔が熱い。返事もしどろもどろ。その仕草まで「 かわいい~ 」と、弄られてしまう。
ゆうこおばさんの顔も組合長の顔も、本当に楽しそうだ。
雄一は実際には23歳であっても、47と40前後のおばさん2人がかりに対抗できる訳が無い。
冗談だと分かっているけど、こんな昼間からの下ネタなんて、おばさんパワーには押し潰されるしかない。

その時、部屋の奥の扉が がらり と開く音がして、雄一はやっと、おばさん達の(口による)セクハラから解放される事になった。
さなが着替え終えて部屋に入って来たのだ。おばさん2人は きゃあきゃあ 笑っていた事を特に隠そうともせず、笑い続けたまま、「さな、準備できたの」と声を掛けている。
雄一としても、気になっていた衣装を見られる、と思って、視線を音の方に向けた。

すると、そこには、普通? の格好をした少女が立っていた。
『普通』と言うのは、一瞬の雄一の感想であり、それが普通なのかは人によって感じ方が違う、そんな『普通』である。
着物… と言うよりも、旅館の客用の浴衣を考えると想像しやすい。薄い生地の白地に紺の細い線で模様が入っている。ただ、浴衣の袖は無い。
そして、裾も浴衣よりはかなり短かった。さっきまで、さながはいていた標準服のスカートは太ももの半分の長さだったが、この着物は太ももが4分の3は出ている。スカートよりも太もも4分の1は短いのだ。
足元は裸足なので、さなの足先から脚までが、太ももの4分の1以外、全てが表にさらされている。

予想通り… いや、予想以上にきれいな脚だ…

雄一は目の前にすらりと、ほとんど全てをさらけ出している足と脚を見て、『普通』の格好と思った事も、おばさん2人によるセクハラの事も忘れていた。
腕を見た時と同じで、脚も細いのに軟らかそうで、やさしいのに力強さがある。やはり、見習いとは言え海女の練習で鍛えているからなのだろう、と想像出来る。

あらためて、畳の上に立っている少女の全身を眺める。
薄い浴衣地の着物は、袖が無く、裾も太ももの4分の1しか隠していない。
足の爪先から脚の付け根まで、ほぼ全部が空気にさらされていて、腕も付け根から全部が見えている。着物の合わせ目は、これも旅館の浴衣と同じ様な紺色の細い帯で結ばれている。首は喉元から上が見えているが、腕や脚と同じくすらりとしていて、さなの身体は全身のバランスがとてもきれいだ。
そして、外に露出している肌は、うっすらと日焼けして少し小麦色がかっている。まだ、春の名残がある季節でも、やはりこの島は暖かいらしい。
顔には照れ臭そうな、はにかんだ様な笑みが見える。でもそれは、視線を集めている事に対してだと分かる。
さっきまではあんなに気にしていた太ももを、ほとんど付け根まで出しているのに、恥ずかしさを全く感じていない様だ。照れの表情以外は、姿勢も堂々としていて、胸を張って真っ直ぐに立っている。

さなは、雄一の側の土間に、裸足のまま降りてきた。
「 あの… せんせい… お待たせして申し訳ありませんでした。 支度、出来ました 」
横に並ぶと、やはり雄一との身長差はかなりある。
「 うん、いいよ。ご飯、食べてたから全然待ってないよ。 さなは潜る前は食べられないんだってね。 大丈夫? 」
「 はい、いつもそうなんです。 だから全然大丈夫です 」
と言いながら、手荷物を持ち直した。古風でシンプルな風呂敷包みである。

さなは、
「 じゃあ、組合長さん、ゆうこさん、行ってきます。 組合長さんが言われた『海女の代表』と思って頑張ります 」
と、おばさん2人にも挨拶をした。この時、初めて気が付いたのだが、さなは継母の事を、『おかあさん』ではなく名前で呼ぶようだ。
「 ああ、さな、行っといで。 どんな難しい撮影でも先生の言う事をよく聞いて、絶対にやり遂げるんだよ 」
とゆうこおばさんが励ます。
「 さなちゃん、『海女代表』、頼んだよ。 見習いでも、さなちゃんは頑張れる子だって知っているからね 」
と組合長も元気よく言う。

そして、雄一は、さなと2人で漁場へ向かった。
ドアを出ると太陽が真上から照り付けている。そのまま家の裏手に回る。家に隣接している小さな建物が見える。さなに聞くと、やはり、これが風呂場の様だ。
そこから奥は、木が茂った森になっていた。さなは、裸足のまま、森に向かって歩いていく。どうやら、靴は履かずに漁場へ行くようだ。
「 さな、 森の中は裸足で痛くないの? 」
「 はい、 もう慣れているから全然大丈夫です。 足の裏の感覚が大事だって組合長さんから教えてもらって、だから、お仕事の練習の時は、いっつも裸足で行きます 」
小さな足で、草の中に踏み分けていく。家で見た時は軟らかそうな足裏だと思ったが、本当に痛くはなさそうだ。雄一の靴に比べると音が小さい。慣れたら裸足の方が歩きやすいのかもしれないと雄一は思った。

一見、道が無い様に見えたが、さなが毎日の様に通るところが踏み分けられて、自然の道が出来ている。
雄一の目の前を、小柄な少女の黒髪が揺れている。長さは首が隠れるくらいで、少しふんわりしている。
「 ところで、さなの身長は何センチかな? ちょっと、データも記録しておきたいから 」
「 あ… えーっと… 先月の新学期の検査では143センチでした。 クラスで前の方です 」
「 143ね。全然問題無いよ。 じゃあ次は体重ね 」
「 体重ですか… ちょっと重くて恥ずかしいんですが… あの、38キロもあるんです。 すみません、重くて『ひしゃたい』無理ですか? 」
雄一は頭の中で年齢別の平均数値を呼び起こす。身長は低め。体重はほぼ平均値。だから、確かに体重の方が多めだが、少女の体型は、むしろ見た目は細い方だ。きっと、筋肉の発達が見た目よりも重くしているのだろう。
「 大丈夫だよ。 『被写体』なってもらうのは変わらないよ。 ぼくも撮影する以上は、一人前の大人だと思って指示をするから、頑張ってね 」
「 はいっ! 」
と振り返りながら、さなは笑顔で元気に返事を返す。

少女の足音が さくさく… と軽やかに鳴って、その後を、雄一の靴音が ざくざく… と続いていく。

「 そう言えば、さな。 さっき標準服の時は、スカート丈が短いから恥ずかしいって言ってたよね。 今は平気なの? もっと短い気がするんだけど… 」
と、ふと思い付いたことを聞いてみた。
「 あ… そう言えば、そうですね。 ほんとだ、スカートより短いのに全然恥ずかしくない… 何でだろう… せんせい、今は恥ずかしく無いです。 不思議です 」

本人は、丈が短い事を意識してもいなかったし、気づいてからも、やはり恥ずかしく無い様だ。
その事を、雄一は何となく分かる気がした。
例えば、学校のプールの授業。水着からは脚が全部出るし、胸元とかの肌の露出も多い。それでも、全然、恥ずかしいとは思わないはずだ。
スポーツ選手でも、ユニフォームで開脚をする競技もあるけれど、それも恥ずかしいとは、誰も思っていない。
江戸時代の銭湯は混浴ばかりだったというけれど、みんな恥ずかしがらずに入っていたそうだ。

だから、こういう決まった、決められた事に着る服は、恥ずかしいとは思わないのだ、と雄一は思った。
「 ねえ、さな。 学校ではプールの授業ってあるよね 」
「 はい、夏になったらあります 」
「 クラスに男の子はいるの? 」
「 いえ、 ここの小学校は、男女別々なんです。 海女エリアだからかもしれないけど、考えた事はありませんでした 」
「 じゃあ、男の先生は? 」
「 先生なら、いっぱいいます… あ、そうか… そうですよね… わたし、男の先生の前で水着になっても恥ずかしく無かったです。 脚も見えてるのに… そういう事なんですね… 」
と、1人で納得していった。さなは頭の回転も速そうだった。

「 あっ、じゃあ、今日の海女さんの撮影も、恥ずかしくないと思います。 今まで考えてなかったけど、普通ならすごくはずかしい格好だと思います。 でも、わたし、その事を全然考えてなかったし、今も、海女さの撮影で海女さんの格好をする、と考えても、全然、恥ずかしいと思わないです。 あ、よかった、今、気が付いて… わたし、撮影の時、慌てなくて済みます。 その時、急に格好の事を考えたとしたら、わたし、焦ったり、ご迷惑かけてたと思います。 でも、今から気持ちが出来てます。 決心ていうんでしょうか、こういう気持ち… せんせい? 」

雄一は、さなの言っている事が、言おうとしてる事は何となく分かるけれど、はっきりとは分からなかった。
それは、さなが全部、自分の頭の中で巡らせていた事から漏れ出た言葉だけを聞いたからかもしれないし、海女の格好(たぶん衣装)が何か分からないまま聞いているからかもしれなかった。
でも、さなが、たぶん恥ずかしい衣装を着る事を自分で受け止めている事は確かなので、雄一にとっては良い情報だった。

それでも、衣装の事は気になるので、さっきからの疑問を聞いてみる事にした。
「 そう言えば、さな。 その今着ている着物で潜るの? 」
と、気になっていた事を聞いてみる。風呂敷包みの中に、もしかしたら潜水服が入っているのか、それだけが心配だったのだ。せめて、今の格好ならば、きれいな脚を存分に撮影できる。
雄一の頭の中では、海女の活動記録映像を撮る、という最初の目的が、いつの間にか、目の前の容姿レベルの高い少女の肢体を映像として自分の手元に保存する、という事に置き換わっていた。

「 いいえ、せんせい… これは、わたしの上着なんです… 海女の服装は、この下に着ているんです… 全然きれいな衣装じゃなくて、仕事のしやすさだけのものなので、きれいじゃないけど、いつものお仕事通りでもいいですか? 」
雄一は、先ずは ほっ とした。今の着物の下に着ているのなら、少なくとも脚は完全に撮影できる。手のラインもきれいだし、身体自体は小学生の未成熟なものであっても、このかわいい顔と合わせると、やはりレベルの高い被写体になりそうだ。
「 さな、大丈夫、心配しないでいいよ。 いつも通りで全然大丈夫だから。 いや、いつも通りがいいな。 普段通りの さな を撮影したいからね 」
「 すみません、有難うございます。 組合長さんから『海女の代表』って言われて、わたし、うれしかったけど、とても不安なんです。ちゃんと、できるかって… 」
「 大丈夫。 いつも通りでいいから。 もちろん、レベルの高い内容をお願いする事もあるから、いつも以上が必要だけど、組合長さんとゆうこさんからも、どんなに難しい事でも、さなは頑張る子だからって聞いてるから 」
「 そうですか… すごいプレッシャーですけど… でも頑張ります 何でもします 」
と、前を向いて歩きながら、肩に力を込めて少女が答えた。

やがて、木々が切れて、目の前に海が現れた。
小さな入り江で、ぐるっと崖に囲まれているが、今いる森から出て来たところだけが小さな砂浜になっていた。
いつもここで、潜る準備や、獲物の処理などをするそうだ。
ここなら波が静かなので、確かに見習いの練習場所としては良い所に見える。そして、獲物はあまり獲れない、と組合長が言っていたのも何となく分かる。

さなが、風呂敷包みをほどいて中身を広げているので、雄一もリュックから機材を出して並べる。それでも、数は多くない。デジカメとビデオカメラ。どちらも片手で操作できる小型の物だ。その他、いつも入れている現場七つ道具の袋。三脚も脚を伸ばしておく。ビデオカメラ以外は、いずれも今日は使うかどうか分からない。

横を見ると、拡げた風呂敷の上に、いろいろな道具が並べられていく。
細長いナイフの様な物。細長い棒。網で出来た袋。
ただ、定番の頭の被り物とか、水中メガネは見当たらなかった。
その事を少女に聞くと、
「 わたしは、まだ、ウェットスーツは着られないんですけど、でも、大人は着るので、今は、あたまかぶり、は使わないんだと思います。組合長さんからも借りてなくて。 でも、わたしの髪はここまでだから、このままで潜ってます。 水中メガネは、わたし、使ってなくて、皆さん、メガネが無いと見えにくいって言うんですけど、わたしの目は珍しくて、メガネなしで見えるんです。わたしは普通なんですが、珍しいらしくて、アジアの方の潜る人に多いそうです 」

確かに、今回の準備で潜水漁を調べた時に、東南アジアの方の民族で、そんな目のグループが居る様な事が書いてあった。さなは本人は知らなくても、生まれつき海女の素質があるのかもしれない。

「 ところで、さな。 そろそろ、潜る衣装になってもらっていいかな。 その衣装を見てから撮影プランを考えたいし 」
と、雄一は、いよいよ、と楽しみと少しの不安が混ざった指示を出した。
風呂敷に全部の道具を並べ終えた少女は、
「 はい、よろしくお願いします 」
と答えてから雄一の前に立つと、腰の細い帯をほどき始める。そして、さっと着物を脱ぐ…

すると…

そこには、まだ幼い張り出しかけたばかりの腰骨に、1本のわら縄だけを撒いた少女の身体があった。
他には何もまとっていない。
整ったかわいい顔立ちと、素直な首までの黒髪。
小柄で細身の少し小麦色に焼けた身体。
ほっそりとした撫で肩から、すらりとした腕が流れている。
無防備な胸元には左右に2つ、フジツボの様な形の直径2センチくらいの淡い色の突起~乳暈~を頂点に、高さ5センチのテントの様な出っ張りが、お互いに顔をそむけながら、それぞれ斜め上に向かって突き出している。
わら縄を引っ掛けた幼い腰骨の下からは、細いけれど弾力が溢れている2本の脚がすらりと伸びている。太腿は素直で軟らかく、ふくらはぎはしなやかに足首のくびれまで続いている。裸足の先の指は細くて指先の爪はきれいに切り揃えられている。

そして、肩幅よりも少し拡げた股間には…

全く何も生えていない1本の切れ込みだけが、くっきりと溝を縦に刻み込んでいた。
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