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第二章 ドワーフの国

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 ダブルオーバックを近距離で撃ち込まれた標的は穴だらけになり、岩柱から派手に砂埃が舞い上がる。

 バウンッ! ジャキン バウンッ! ジャキン

 石動イスルギは岩柱の間を駆け抜けながら、次々と標的に散弾を撃ち込む。

 6発撃ってチューブマガジンが空になった段階で、薬室に1発残しながら手に2発のダブルオーバックを持って素早く装填するコンバットリロードの練習もした。
 
 何度かリロードを繰り返し、最後には標的に向けて引き金を引きっぱなしのまま、フォアアームをスライドさせるだけで連続発砲させるスラムファイアを試す。

 そんな攻撃に、直径30センチほどの砂岩で出来ている岩柱は、ダブルオーバックの強烈な連射に耐え切れず、標的を貼った場所ごと削られて折れてしまった。

 ズズーンッと音をたてながら倒れ込んできた岩柱を避けると、石動は顔がほころんで笑顔になり、手に持ったM12の性能に満足する。

 思う存分撃ちまくり、身体を動かしたおかげで、気分も晴れた。
 撃ち終わった真鍮製の薬莢は再利用するので拾っておく。

 ついでに100メートルの標的にライフルドスラグを撃ってみると、猛烈な反動が肩を襲ってきたが、なかなかどうして狙ったところにまとまるのが分かった。
 200メートルになるとかなり弾着が乱れ、銃弾が届かないことは無いという程度だと分かる。

「この火力なら、近距離なら無敵だな。いざとなれば銃剣もあるし。
・・・・・・そうか、考えてみれば、燃焼速度が速い無煙火薬の特性を生かした中距離用の連発銃を造るのも面白いな。近距離はショットガンで何とかなりそうだし。
 それに拳銃とかもアリじゃない? すぐに緩燃剤も見つかりそうにないし、それまでの間、他の銃を検討してみる価値はあるかもな・・・・・・」

 

 その夜、宿に帰って部屋に入ると、ロサが戻っていた。
 
 驚いた石動が、思わず声をあげる。

「ロサっ! おかえり! 驚いたよ。リーリウムは元気だったかい?」

「ウフフ、ただいま。リーリウムがあなたによろしく、と言っていたわ」

 部屋のソファに座っていたロサが立ち上がると、笑顔を見せながら石動を迎える。

「でも、ロサ。もう少しゆっくりしてくるような話じゃなかったっけ? もちろん私は嬉しいけど、良かったの?」

「うん、もういいの。それよりツトムの方こそ上手くいってる? そういえば肩にかけてる銃が違うわね。新しいのが出来たんだ!」

「そうなんだ。でもどこから話したものか・・・・・・」

「時間はたっぷりあるわ。全部話してよ」

 それから石動はカプリュス工房であった話を、ロサに順序だてて話すことになる。
 途中で部屋に夕食が運び込まれ、食事をしながら話は続いた。

「・・・・・・というわけで、ちょっと今、壁に当たっていてね。何とかできないか、方法を模索している状態なんだ」

「ウフフ、『壁』ね・・・・・・」

「うん? なにか言った?」

「ううん、何でもない。こっちのこと」

 石動は不思議に心が落ち着くのを感じていた。
 ロサに壱から話を聞いてもらうことで、自分の考えがまとまり、状況を冷静に分析できたことにも気がつく。

「リーリウムの言うとおりだったわ」

「えっ?」

「リーリウムがね、ツトムがこの世界に無いものを造り出そうとしているなら、商売でもそうだけど何事も最初が一番大変なんだって。肉体的にも精神的にもボロボロになることがあるって言ってた」

 ロサは立ち上がり、テーブルを回ると石動の隣に椅子に座り、石動の両手をとる。

「そんな話を聞いたらツトムは大丈夫かな、って心配になって帰ってきちゃったの。リーリウムにもツトムの心の支えになってあげなさいって言われちゃったしね」

「・・・・・・」

「だから、ツトム。これからもいろんな『壁』にぶつかると思うの。
 そんな時はひとりで悩まないで、私にも話してちょうだい。
 私は聞いてあげることしか出来ないかもしれない。
 でもひとりで抱え込むより、二人で抱えたほうが軽くなることもあるんじゃないかな」

「・・・・・・ロサ、ありがとう。本当に話を聞いてもらっただけで心が軽くなったような気がする」

 石動は自分の頬が濡れていることに気付き、手で触ると自分の流した涙だと分かって、更に驚く。

 自分は自分で思っていた以上に思い詰めていたのか? 
 思えば、孤独な作業に心が折れかけていたのかも・・・・・・?
 必要だったのは自分を理解してくれる人の暖かい言葉だったのかもしれない。
 それがロサの言葉だったということだろうか・・・・・・。

 石動は何年かぶりに人前で涙を流したという事態に、少し動揺しうろたえながらも、心が暖かくなるのを感じていた。
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