上 下
110 / 142
第二章 ドワーフの国

エレファントガン

しおりを挟む
 結局のところ石動イスルギが最初に造る無煙火薬使用の銃は、いろいろと考えた挙句、まずはシャープスライフルを造り直すという常識的な線に落ち着いた。
 
 ディアトリマにハンマーが折られてしまったほうは、パーツを修理したうえで、ドワーフに教える時の教材に使用するつもりだ。
 その時にシャープスライフル以外の銃を造ってしまっていると、ドワーフ達が目移りしても困る。

 連発できる銃と単発銃を比べれば、誰だって連発銃を欲しがるだろう。
 それに石動は、今のところドワーフには無煙火薬ではなく、黒色火薬の弾丸しか渡すつもりはない。
 そのためには、まずはシャープスライフルを造って見せるしかないのだ。

 ただせっかくなので、ついでに石動も狙撃用に作ったシャープスライフルを、無煙火薬対応可能に造り直そうと思っている。
 今の黒色火薬仕様のままで無煙火薬を詰めた弾薬を使用したら、間違いなく弾薬の発砲時に発生する圧力に耐えきれず、機関部か銃身が破損するからだ。
 
 石動は、今のシャープスライフルの口径が50口径なのでそのままにして、弾薬を50-110WCFウインチェスターセンターファイアーを再現しようかと考えた。

 無煙火薬を使用する50-110WCFというカートリッジは、銃さえ耐えられるなら火薬量と弾頭の重さ如何では、最大6,000フィートポンド(8,100J)という巨大なエネルギーを発揮できるポテンシャルを持っている。

 これはアフリカで象撃ちに使用される弾薬として有名な、458ウインチェスター・マグナムの最大値5,336フィートポンド(7,235J)というパワーを超えるものだ。

 プロのハンティングガイドが使う最大口径である600ニトロ・エキスプレスという弾薬の、6,840フィートポンド(9,270J)の威力に近い。

 カプリュスの造った合金がこの50-110WCFの圧力にどこまで耐えられるか、火薬量や弾頭の重さを変えることで、段階的に試す材料としてはちょうど良いと思ったのだ。

「(もし、最大値の能力を引き出せるほどの銃が出来あがったら、あのキングサラマンダーだって倒せるかもしれないな・・・・・・。せっかくの大口径なんだし、象でも倒せるエレファント・ガンというのも面白いかも)」


 本当は、せっかくの無煙火薬が出来たのだから、黒色火薬よりも速い弾速で撃てる利点を活かした銃や弾薬を造りたい。

 今までは黒色火薬の弾速の遅さを、弾頭の大口径化と火薬の増量という力技によって、相手に与えるダメージが最大になるよう工夫してきた。

 黒色火薬だと長距離射撃をする場合は、弾速が遅いので高い山なりの弾道を描く必要がある。
 無煙火薬なら早い弾速を活かして、低い山なりのフラットに近い弾道を描けるはずだ。

 これからは高性能な無煙火薬の弾速の速さによるエネルギーによって、そこまで大口径にしなくても黒色火薬弾以上のダメージを与えることが可能となるだろう。

 クロムモリブデン鋼の合金が完成し、シャープスライフルで試して鋼材が高圧力に耐えられるなら、次の段階に進むことができると石動は考えている。

 合金完成後に契約通り、シャープスライフルの作成方法をカプリュスに伝授し終えたら、その後は新しい銃を造るつもりだ。


 まず造るとしたら、今のシャープスライフルの代わりに銃剣の取り付けが可能で、接近戦用の銃として使える散弾銃が欲しい。

 銃剣を着けられる散弾銃といえば、トレンチガンとしてのウインチェスターM1897が有名だ。

 12ゲージで作動方式はポンプアクションの銘銃で、映画「アンタッチャブル」でショーン・コネリーらが使っていた。
 モデルガンで石動も持っていたほど好きな銃だが、シャープスライフル同様にハンマーが露出しているのが安全面や防塵性からみても難点となる。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜

華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日  この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。  札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。  渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。  この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。  一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。  そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。 この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。 この作品はフィクションです。 実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

異世界災派 ~1514億4000万円を失った自衛隊、海外に災害派遣す~

ス々月帶爲
ファンタジー
元号が令和となり一年。自衛隊に数々の災難が、襲い掛かっていた。 対戦闘機訓練の為、東北沖を飛行していた航空自衛隊のF-35A戦闘機が何の前触れもなく消失。そのF-35Aを捜索していた海上自衛隊護衛艦のありあけも、同じく捜索活動を行っていた、いずも型護衛艦2番艦かがの目の前で消えた。約一週間後、厄災は東北沖だけにとどまらなかった事を知らされた。陸上自衛隊の車両を積載しアメリカ合衆国に向かっていたC-2が津軽海峡上空で消失したのだ。 これまでの損失を計ると、1514億4000万円。過去に類をみない、恐ろしい損害を負った防衛省・自衛隊。 防衛省は、対策本部を設置し陸上自衛隊の東部方面隊、陸上総隊より選抜された部隊で混成団を編成。 損失を取り返すため、何より一緒に消えてしまった自衛官を見つけ出す為、混成団を災害派遣する決定を下したのだった。 派遣を任されたのは、陸上自衛隊のプロフェッショナル集団、陸上総隊の隷下に入る中央即応連隊。彼等は、国際平和協力活動等に尽力する為、先遣部隊等として主力部隊到着迄活動基盤を準備する事等を主任務とし、日々訓練に励んでいる。 其の第一中隊長を任されているのは、暗い過去を持つ新渡戸愛桜。彼女は、この派遣に於て、指揮官としての特殊な苦悩を味い、高みを目指す。 海上自衛隊版、出しました →https://ncode.syosetu.com/n3744fn/ ※作中で、F-35A ライトニングⅡが墜落したことを示唆する表現がございます。ですが、実際に墜落した時より前に書かれた表現ということをご理解いただければ幸いです。捜索が打ち切りとなったことにつきまして、本心から残念に思います。搭乗員の方、戦闘機にご冥福をお祈り申し上げます。 「小説家になろう」に於ても投稿させて頂いております。 →https://ncode.syosetu.com/n3570fj/ 「カクヨム」に於ても投稿させて頂いております。 →https://kakuyomu.jp/works/1177354054889229369

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

超文明日本

点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。 そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。 異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

―異質― 邂逅の編/日本国の〝隊〟、その異世界を巡る叙事詩――《第一部完結》

EPIC
SF
日本国の混成1個中隊、そして超常的存在。異世界へ―― とある別の歴史を歩んだ世界。 その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。 第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる―― 日本国陸隊の有事官、――〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟。 歪で醜く禍々しい容姿と、常識外れの身体能力、そしてスタンスを持つ、隊員として非常に異質な存在である彼。 そんな隊員である制刻は、陸隊の行う大規模な演習に参加中であったが、その最中に取った一時的な休眠の途中で、不可解な空間へと導かれる。そして、そこで会った作業服と白衣姿の謎の人物からこう告げられた。 「異なる世界から我々の世界に、殴り込みを掛けようとしている奴らがいる。先手を打ちその世界に踏み込み、この企みを潰せ」――と。 そして再び目を覚ました時、制刻は――そして制刻の所属する普通科小隊を始めとする、各職種混成の約一個中隊は。剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する未知の世界へと降り立っていた――。 制刻を始めとする異質な隊員等。 そして問題部隊、〝第54普通科連隊〟を始めとする各部隊。 元居た世界の常識が通用しないその異世界を、それを越える常識外れな存在が、掻き乱し始める。 〇案内と注意 1) このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。 2) 部隊規模(始めは中隊規模)での転移物となります。 3) チャプター3くらいまでは単一事件をいくつか描き、チャプター4くらいから単一事件を混ぜつつ、一つの大筋にだんだん乗っていく流れになっています。 4) 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。ぶっ飛んでます。かなりなんでも有りです。 5) 小説家になろう、カクヨムにてすでに投稿済のものになりますが、そちらより一話当たり分量を多くして話数を減らす整理のし直しを行っています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

処理中です...