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第二章 ドワーフの国

発火テスト

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 フラスコの中から、出来上がった雷酸水銀の結晶を取り出す。

 結晶をみた石動イスルギの頭の中に「雷酸水銀」という言葉が浮かんでくる。

 成功した。
 それなら次はいよいよ、おまちかね、雷管の作製だ。
 
 雷酸水銀の結晶を「精製」し、僅かの量を薄い銅の小さなキャップに詰め、ボクサー型雷管をイメージして「錬成」「組成」する。
 エルフの郷で火の魔石を使って造った時より、ランクが上がったせいなのか、以前よりも速いスピードで苦も無く造ることができた。

 出来た。
 出来てしまった。
 
 この世界に来てからまだ1年も経っていないが、いちから銃を作るのに最も大きな壁だったのが、この雷管だった。

 銃が作れても弾が無ければ始まらない。

 いろんなラノベや漫画で読んだ主人公たちのように、異世界に転生したら簡単に銃を造って撃ちまくる彼らを思い出すと、たとえ物語の中の話だとしても何度羨ましく思い呪ったことか。
 幸い、エルフの郷で錬金術の師匠に恵まれ、火の魔石という代用品でなんとかやってきたがそれもこれまでだ。
 
 ついに本来の雷管が完成したのだから。
 しかもコストは火の魔石の何千分の1に過ぎない。

「(考えてみれば、錬金術スキルも相当チートだよなぁ。錬金術と鑑定スキルが無かったら、とてもじゃないけどここまで出来なかっただろう)」

 石動は無煙火薬ができた時より感動している。銅製の小さなキャップを指で摘みながら、こいつのためにどれだけ苦労したか、転生してからのことを思い出していた。
 
 でも、感慨にふけっているわけにもいかない。
 雷管が出来たのなら、是非、発射実験をしなくては。

 石動は百個の雷管を錬成した後、狙撃用のシャープスライフルをマジックバッグから取り出した。

 以前、黒色火薬を使用した50-90金属薬莢弾を作った際に、多めに造ってストックしていた真鍮製薬莢も取り出すと雷酸水銀を使用したボクサー型雷管を填める。

 無煙火薬の使用量は黒色火薬の3分の1くらいの量で、同じ威力になると言われている。
 高性能な無煙火薬を黒色火薬と同じ量を詰めると、発砲した際の圧力が高すぎて銃が破裂してしまうのだ。

 あくまでテストなので、薬莢に入れる無煙火薬の量は、黒色火薬の場合の4分の1くらいの量にしておいた。
 逆にあまり少なくして、銃身内で弾頭が止まってしまっても面倒だ。

 出来上がった50-90無煙火薬金属薬莢弾を見て、また石動はウルッときそうだった。

 苦労した挙句に授かった、我が子に近い感情がこみあげてくる。

「(と言っても、未だに独身だし、子供持った事無いけどな・・・・・・)」

 まじまじと弾丸を見ながら複雑な感情となり、石動は泣き笑いのような、苦笑いのような変な顔をしてしまう。

 気を取り直してセーフルーム内のテーブルの上に台を設え、シャープスライフルを固定する。
 銃口の先は土壁だから、特に配慮は要らないだろう。

 レバーを下げてチャンバーを開き、薬室に無煙火薬の金属薬莢弾を込める。
 レバーを戻して薬室を閉鎖したら、引き金に紐をつけると、石動は遮蔽板の後ろに隠れた。

 遮蔽板の裏で紐を引くと、引き金が引かれ、ハンマーが撃針を打つ。

 バンッ

 火薬量が少ないせいか、室内なのに銃声はさほど響かず、無事発射できた。

 石動はシャープスライフル手に取り、レバーを下げてチャンバーを開く。
 チンッという音とともに発射済の空薬きょうが排出された。

 薬室内や機関部、銃身内も点検してみたが、異常はないようだ。

 続いて10発ほどテストしてみたが、無煙火薬と雷管の発火能力に問題は無い、と結論付ける。
 もちろん、さらに実地テストもおこなう必要があるが、成功したことで石動は既に次の銃を考えるとワクワクしてきた。

 これで念願の連発銃の開発が可能となったからだ。

 「(よしっ、どの銃を造ろうかな・・・・・・。長距離射撃用のボルトアクションライフルは必須だけど、いきなりレミントンM700のような精度は無理だろう。やはりモーゼルライフルあたりからやってみるのがいいか・・・・・・。それとは別に接近戦で使える銃も欲しいな。う~ん・・・・・・)」

 目眩がし始めるまで、錬金術スキルで雷管を作り続けていた石動だが、頭の中では悩みが尽きなかった。
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