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第二章 ドワーフの国
エドワルドの報告
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部屋に入ると、すでにエドワルドも戻っていた。
ソファーに座っていたエドワルドは、帰ってきた石動達に手を振って「おかえり」と笑顔を見せる。
「機嫌がよさそうなところを見ると、なにか収穫があったようだな」
「おかげさまでね。エドワルドはどうだった?」
「まかせよ、といったであろう」
エドワルドはニヤリと笑って親指を立てて見せた。
夕食まで、もう少し時間があったので、早速情報交換することになった。
石動たちもエドワルドの向かい側のソファーに座り、支配人のオルキスを通じてドワーフを紹介してもらう手筈になったことや、また明日再度訪問する予定であることを話す。
そのほか紹介してもらった店を回ってみると、素材を見る限り、思った以上にドワーフの金属加工の技術が高そうだと分かったことも伝えた。
「だから、ドワーフの工房を紹介してもらったら、しばらくそこで学ぶことになるかも。もちろん、蝙蝠の洞窟に行ってからになるとは思うけどね」
「ふむ、では吾輩の報告次第ということだな!」
エドワルドの聞き込みしてきた内容はこうだった。
まず、蝙蝠の魔物の洞窟は実在する。
今いる麓の街から、馬で山間に2日ほど入ったところらしい。
そこは盆地になっていて、ミルガルズ山脈の山から流れてきた河が、盆地の真ん中を横切っている。
盆地はちょっとした密林になっていて、密林の奥に山肌が裂けたような洞窟があるのだそうだ。
その洞窟の中には、蝙蝠の魔物が数万の単位で住んでいるが、こちらから刺激しない限り何も害はないという。
しかし、洞窟奥の狭いところまで入っていくと一斉に暴れ出して、襲ってくるらしい。
奥には子供を抱えた巣でもあるのではないか、と言われているそうだ。
蝙蝠の大きさは羽を広げた幅が1メートルくらい。
頭から足までが50センチくらいで、食事も吸血とかではなく、虫や小動物を主食としている。
ただ、鋭い牙と厄介な病原菌を持っているので、噛まれると高熱にうなされるか、人によっては死ぬこともあるという。
洞窟の中に入った事のある冒険者の話では、足元も地下水が滲み、じめじめとしていて、植物は生えてなく、岩肌が露出しているという。
そこには蝙蝠たちの糞が堆積し、塔のように積もっているところもあるらしい。
物好きな冒険者が糞の塔を触ってみると、石のようにカチカチで、石の中に白く結晶のようなものが光っていたそうだ。
その塔の間にかなり大きな水たまりというか、池のようなものがある。
水かと思えば、刺激臭がしたので鉄の剣を差し入れてみると、ジュッいう音と共に酸化して色が変わったという・・・・・・。
石動は目を爛々と光らせながら、エドワルドの報告を聞いていたが、ここにきてついに声を上げる。
「キターーーーー! 濃硝酸だ、間違いない! すぐ行こう! いや、採取したものを持ち帰る容器がいるな。山ほど買って行かねば!」
ロサとエドワルドはあっけにとられて、興奮してソファーから立ち上がり、ブツブツ呟いている石動を見た。
「ザ、ザミエル、ちょっと落ち着こう? エドワルドの話もまだ終わってないし、明日はオルキスさんのところに行かないとだから、すぐには行けないわ」
「う、うむ。吾輩の報告はほとんどもう終わりなのだがな。勢いに驚いて、聞いたことを忘れてしまいそうだ。えーと、あと、なにかあったかな・・・・・・」
その後、興奮する石動をふたりでなだめ明日のオルキスとの面談を済ませたら、できるだけ早く洞窟に向かうように準備することで話し合いはまとまった。
石動は寝る前に、スイートルームの書斎に一人こもって、シャープスライフルの弾丸を錬成する。
今回は、通常の50-90紙薬莢弾だけでなく、散弾も造るつもりだ。
前世界の実銃にも、シャープスライフルを日本の法律にあわせてライフリングをなくし、410番の散弾銃に改造したものがあった。
それは45-70口径のものを改造していたものなので、石動のは50口径だからややそれより口径が太い。
ライフルでは50口径は大口径だけど、散弾銃に口径にくらべると小さい。
50口径をメートル法で表すと12.7mmなのに、散弾銃の12番径は18.5mmもある。
洞窟内で発砲するのは危険だし出来れば避けたいが、もし蝙蝠に襲われたらそうも言っていられない。
蝙蝠に数で押してこられたら、撃つのは散弾が効果的だろう。
石動はシャープスライフルのライフリングにできるだけ傷をつけないよう、サボットと呼ばれる籠のようなものをまず錬成する。
その中に6ミリBB弾ほどの大きさの鉛球をザラザラッと入れ、火薬の入った紙薬莢の中にコルクを丸く切ったワッズと共に差し入れ、厚紙と蝋で蓋をして完成だ。
撃つと20発程の鉛球が飛び出すので、あまり身体の大きくない蝙蝠には効果バツグンだ。
もっとも、石動も本気で数万匹の蝙蝠に、単発銃の散弾で対抗しようとは思っていない。
以前から用意しようと思っていたので、念のためだ。
硝酸を手に入れたら、雷管をなんとしてでも作り上げるのだ、と石動は再度、心の中で誓う。
無煙火薬もつくれば、火の魔石を使わずに安価で安全な無煙火薬銃弾が造れる。
そうなれば、ようやく待ちに待った本格的な金属薬莢弾時代がくるぞぉ!
興奮してなかなか寝付けなかった石動は、興に乗って弾丸を造りつづけ、しまいにはロサに「早く寝なさい!」と怒られてしまうのだった。
ソファーに座っていたエドワルドは、帰ってきた石動達に手を振って「おかえり」と笑顔を見せる。
「機嫌がよさそうなところを見ると、なにか収穫があったようだな」
「おかげさまでね。エドワルドはどうだった?」
「まかせよ、といったであろう」
エドワルドはニヤリと笑って親指を立てて見せた。
夕食まで、もう少し時間があったので、早速情報交換することになった。
石動たちもエドワルドの向かい側のソファーに座り、支配人のオルキスを通じてドワーフを紹介してもらう手筈になったことや、また明日再度訪問する予定であることを話す。
そのほか紹介してもらった店を回ってみると、素材を見る限り、思った以上にドワーフの金属加工の技術が高そうだと分かったことも伝えた。
「だから、ドワーフの工房を紹介してもらったら、しばらくそこで学ぶことになるかも。もちろん、蝙蝠の洞窟に行ってからになるとは思うけどね」
「ふむ、では吾輩の報告次第ということだな!」
エドワルドの聞き込みしてきた内容はこうだった。
まず、蝙蝠の魔物の洞窟は実在する。
今いる麓の街から、馬で山間に2日ほど入ったところらしい。
そこは盆地になっていて、ミルガルズ山脈の山から流れてきた河が、盆地の真ん中を横切っている。
盆地はちょっとした密林になっていて、密林の奥に山肌が裂けたような洞窟があるのだそうだ。
その洞窟の中には、蝙蝠の魔物が数万の単位で住んでいるが、こちらから刺激しない限り何も害はないという。
しかし、洞窟奥の狭いところまで入っていくと一斉に暴れ出して、襲ってくるらしい。
奥には子供を抱えた巣でもあるのではないか、と言われているそうだ。
蝙蝠の大きさは羽を広げた幅が1メートルくらい。
頭から足までが50センチくらいで、食事も吸血とかではなく、虫や小動物を主食としている。
ただ、鋭い牙と厄介な病原菌を持っているので、噛まれると高熱にうなされるか、人によっては死ぬこともあるという。
洞窟の中に入った事のある冒険者の話では、足元も地下水が滲み、じめじめとしていて、植物は生えてなく、岩肌が露出しているという。
そこには蝙蝠たちの糞が堆積し、塔のように積もっているところもあるらしい。
物好きな冒険者が糞の塔を触ってみると、石のようにカチカチで、石の中に白く結晶のようなものが光っていたそうだ。
その塔の間にかなり大きな水たまりというか、池のようなものがある。
水かと思えば、刺激臭がしたので鉄の剣を差し入れてみると、ジュッいう音と共に酸化して色が変わったという・・・・・・。
石動は目を爛々と光らせながら、エドワルドの報告を聞いていたが、ここにきてついに声を上げる。
「キターーーーー! 濃硝酸だ、間違いない! すぐ行こう! いや、採取したものを持ち帰る容器がいるな。山ほど買って行かねば!」
ロサとエドワルドはあっけにとられて、興奮してソファーから立ち上がり、ブツブツ呟いている石動を見た。
「ザ、ザミエル、ちょっと落ち着こう? エドワルドの話もまだ終わってないし、明日はオルキスさんのところに行かないとだから、すぐには行けないわ」
「う、うむ。吾輩の報告はほとんどもう終わりなのだがな。勢いに驚いて、聞いたことを忘れてしまいそうだ。えーと、あと、なにかあったかな・・・・・・」
その後、興奮する石動をふたりでなだめ明日のオルキスとの面談を済ませたら、できるだけ早く洞窟に向かうように準備することで話し合いはまとまった。
石動は寝る前に、スイートルームの書斎に一人こもって、シャープスライフルの弾丸を錬成する。
今回は、通常の50-90紙薬莢弾だけでなく、散弾も造るつもりだ。
前世界の実銃にも、シャープスライフルを日本の法律にあわせてライフリングをなくし、410番の散弾銃に改造したものがあった。
それは45-70口径のものを改造していたものなので、石動のは50口径だからややそれより口径が太い。
ライフルでは50口径は大口径だけど、散弾銃に口径にくらべると小さい。
50口径をメートル法で表すと12.7mmなのに、散弾銃の12番径は18.5mmもある。
洞窟内で発砲するのは危険だし出来れば避けたいが、もし蝙蝠に襲われたらそうも言っていられない。
蝙蝠に数で押してこられたら、撃つのは散弾が効果的だろう。
石動はシャープスライフルのライフリングにできるだけ傷をつけないよう、サボットと呼ばれる籠のようなものをまず錬成する。
その中に6ミリBB弾ほどの大きさの鉛球をザラザラッと入れ、火薬の入った紙薬莢の中にコルクを丸く切ったワッズと共に差し入れ、厚紙と蝋で蓋をして完成だ。
撃つと20発程の鉛球が飛び出すので、あまり身体の大きくない蝙蝠には効果バツグンだ。
もっとも、石動も本気で数万匹の蝙蝠に、単発銃の散弾で対抗しようとは思っていない。
以前から用意しようと思っていたので、念のためだ。
硝酸を手に入れたら、雷管をなんとしてでも作り上げるのだ、と石動は再度、心の中で誓う。
無煙火薬もつくれば、火の魔石を使わずに安価で安全な無煙火薬銃弾が造れる。
そうなれば、ようやく待ちに待った本格的な金属薬莢弾時代がくるぞぉ!
興奮してなかなか寝付けなかった石動は、興に乗って弾丸を造りつづけ、しまいにはロサに「早く寝なさい!」と怒られてしまうのだった。
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