【完結】忌み姫と氷の魔法使いの白くない結婚

白滝春菊

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甘え上手※

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 モヤモヤとした気持ちを抱えたまま寝室に入るとグラッセがベッドの上で半身を起こして本を読んでいたがシエルが部屋に入るなり彼は本を閉じる。

「旦那様、もう起き上がって大丈夫なのですか?」
「ああ……もうすっかり元気だ」

 グラッセがいつものように笑うので、シエルは安堵のため息を漏らす。
 シエルはベッドの端に座ってシルクの手袋を外してからグラッセの頬に触れると、彼の体温が温かいことを確認して笑みを浮かべた。
 氷の精霊がシエルの体から離れた時から彼女の手は「とても冷たい」から「少し冷たい」程度になった。つまり人並みの温度になったのだ。

「お母様のこと……」
「ん?」

 ずっと気にしていた。死んだ母はどんな人だったのか。外の世界に出るようになって会う人によって母の評判はバラバラだったからだ。
 ある人は我儘な女性だ。ある人は真面目な女性だと。ある人は悪魔のような恐ろしい魔女だったと。ある人は普通の人だったと。

「私のお母様はどんな人だったのかなって……」
「……キミの母上は魔法使いだった」

 寂しそうに亡くなった母のことを聞くシエルにグラッセは自分が調べ上げた内容を静かに語り始めた。
 シエルの母親は幼い頃から魔法の才があり、将来を期待されるほど優秀だった。
 身分はそれほど高くはなかったものの、才能を見抜いた宮廷魔術師が弟子にとり、大切に教育をしていたそうだ。

 しかしある日、彼女は突然、当時王子だったオスカーにその才能を見初められ、愛人としてこの屋敷に囲われ、数年後、シエルが生まれた。

「あの杖はキミの母上が自分で稼いで買った大事な杖だったそうだ。宝石や恋愛には目もくれずに魔法が好きで、暇さえあれば魔法書を読んでいたらしい」

 シエルはグラッセの話を聞きながら、今は亡き母親の姿を思い浮かべる。
 今まで、オスカーやロゼリア達はシエルの母親は贅沢三昧をして遊んで暮らしていると吹聴していたが、それは全く違っていた。
 グラッセはシエルの髪をすくようにして頭を撫でながら慈愛に満ちた優しい声で囁く。

「シエル。これから先、面倒なことがたくさんあると思う」
「旦那様……」

 グラッセはシエルの手を握り締めると真っ直ぐに彼女の瞳を見る。

「俺を信じろ。必ず幸せにする」
「はい……」

 シエルは彼の言葉に嬉しくて涙を流すが、すぐに拭って笑顔を見せた。グラッセは彼女の体をそっと抱き寄せると額にキスを落とす。

「俺はキミを愛している」
「私も……愛しています」

 結婚式の時よりもずっと強い想いを込めて二人は誓いの言葉を口にするとそのまま唇を重ねた。
 そしてその口づけが自然と深いものに変わると互いの舌を絡めて求め合う。

 甘い吐息が漏れて体が熱くなると、シエルはもっと深く繋がりたくてグラッセの首の後ろに腕を回して引き寄せた。
 だが、グラッセの手が服の中に入ってきたところでハッと気づくと慌てて彼から離れようとする。

「だっ……だめです!まだ病み上がりなのに!」
「俺は平気だが……そうだな。まだ昼間だし、シエルが嫌がるなら何もしないぞ」
「え……」

 グラッセは残念そうな表情を浮かべるとシエルから離れて横になる。シエルは顔を真っ赤にして俯くと自分の体を抱き寄せた。

(どうしよう……旦那様に触れて欲しい……)

 グラッセが触れたところがまだ熱い。自分から拒絶したのに矛盾しているとは思うが、シエルは彼が欲しかった。

「だ、旦那様……少し、少しだけ……触ってくださいませんか……?」

 シエルはベッドに上がり、彼の体を軽く揺さぶりながら恥ずかしそうに懇願する。するとグラッセがその手を握ってくれた。そして指を絡ませると

「キミの方から先に断ったんじゃないか」

 意地悪な笑みを向けられて、シエルは更に顔が赤く染めて、ゆっくりとグラッセの方に近づいていくと首筋に吸い付いた。

「こら、痕はつけるなと言っただろう」
「旦那様だっていつも私に痕、たくさんつけましたよ……おあいこです」
「全く……仕方のない奴だ……何かして欲しいことはあるか?」

 グラッセは呆れたように言うが、その声はどこか楽しげだ。シエルは恐る恐る彼の上に跨がり、首筋に顔を埋めると耳元で小さく呟いた。

「……いっぱい……甘えてもいいですか……?」
「ああ、いいよ」

 グラッセはフッと笑うと優しくシエルの背中を撫でた。まるで子供をあやすような手つきだったがシエルはそれさえも心地よく感じた。

「ん……」

 シエルの方から唇を重ねるとグラッセがそれを受け止めて何度も角度を変えて啄むような軽いキスを繰り返す。

「はぁ……んぅ……」

 次第にキスが深くなり、シエルは夢中でキスをしながら無意識のうちに腰を動かしてグラッセの下腹部を刺激する。

「随分……積極的だな」

 布越しでもわかるほど膨らんだソコに当たるとシエルはビクッとして唇を離して視線を下げる。
 そこには久しぶりに元気になっている昂ぶりがあった。固くて大きくて、ドクンドクンと脈打っている。

(熱い……)

 シエルは頬を緩めると、再び唇を重ねて今度は舌を差し入れた。グラッセの舌を絡め取ると激しく動かして唾液が混ざり合う。

「ん……ちゅ……ふっ……」

 シエルは口内を犯しながら腰の動きを早めていく。このドレスの中は一体どんな風になっているのか。想像すると熱が高まる。

「失礼、しますね……」

 シエルは唇を離すと微笑んでから少し後ろに下がるとナイトローブ、更に下着の中から固くなった夫のソレを取り出して手で包み込むようにして握った。

「……っ……キミという子は……」
「今、手が温かいので触っても大丈夫……です」

 グラッセはその温かさに息を飲む。彼女は両手を使って上下に動かすと先端からは透明な液体が出てきた。それが潤滑油となり、滑りが良くなる。たくましいそれが愛おしくてシエルはうっとりとした表情を浮かべる。

 シエルが必死になって奉仕をする姿はとても健気だ、グラッセは我慢できずに上半身を起こすとドレスを捲って白い太ももを露わにした。
 白いガーターベルトに白いストッキング、そして愛液で濡れたピンク色の下着が見えるとグラッセはゴクリと唾を飲み込む。

「キミも俺を求めてくれるなら、俺もキミを欲していいだろう?」

 そう言ってストッキング越しに彼女の秘部に触れる。そこは熱く湿っていて、指を動かす度に水音が響いた。

「あっ……んっ!」

 シエルは突然の事に驚いたものの、抵抗せずに受け入れる。そんな彼女を見てグラッセは微笑むとゆっくりと中へと押し込んだ。

「ふぁっ!あぁっ……」

 シエルは甘い声を上げると体を震わせる。グラッセはそのまま布越しに陰核を刺激すると膣内から更に蜜が溢れてきた。

「あぅっ……だめぇっ」
「直接触って欲しいか?」
「うぅ……いじわる……」

 シエルは顔を真っ赤にして恥ずかしそうにする。しかし、彼は手を休めずにいた。

「ほら、どうして欲しい?」
「お願い……直接触って下さい」

 グラッセの言葉責めに耐えられず、ついに折れてしまった。涙目になりながら懇願する彼女にグラッセは満足すると、下着の中に片手を入れて指で直接触れる。
 その瞬間、ビクンッと大きく跳ね上がった。

「んんっ」
「ここが良いのか?こんなにも濡らしていやらしい子だ」

 グラッセは意地悪そうな笑みを浮かべると指を増やして激しく動かしていく。
 卑猥な音を立てながら動かされる度、シエルは彼の肩にしがみついて快感に耐えるしかなかったが、やがて限界に達した彼女は絶頂を迎える。グラッセは荒くなった呼吸を整えている彼女をぎゅうと抱きしめた。

「最後までするつもりは無かったんだが……するか?」

 耳元で囁かれる言葉にシエルは小さくコクりと首を縦に振る。



 グラッセはシエルの腰を持ち上げると、座ったまま向かい合って抱き合い、大きく固くなったそれをそのままひくついた割れ目に沿って下から上へと滑っていく。
 ずっと子供が出来てしまうからと入れて貰えなかった。しかし今は違う。

「ほら、ちゃんと掴まっていろ」
「は、はい……」

 ゆっくり慎重にシエルの中に入ってくる。指よりもずっと太くて大きい。グラッセは根元まで入れるとシエルの頭を撫でて鎖骨にキスをする。

「久しぶりだから少しキツイな……」

 グラッセは眉間にシワを寄せると苦しそうに息を吐く。シエルは彼の首に腕を回したまま小さく震えていた。

「痛いか?」
「いえ……嬉しい、です……」

 シエルはそう言って笑うとグラッセの首筋に舌を這わせる。触れてもらえるだけでも幸せだったし心地良かった。
 だが、身体の奥で彼を受け入れたいと思う熱い欲望が無かったかと言えば嘘になる。そして耳元に唇を持ってくると甘い声で囁いた。

「動いてください……」
「ああ、わかった」

 グラッセがゆっくりと彼女の腰を動かすと、シエルは彼にしがみついて快感に耐る。

「ひゃぁ……あ……あぁ……っ」
「はぁ……すごいな……中が熱くうねって絡み付いてきて……すぐに持っていかれそうだ」

 グラッセが腰を打ち付ける度に結合部からは卑猥な音が鳴る。シエルはグラッセにしがみついたまま、されるがままに揺さぶられていた。

「やっ……そんな……はげしくしたら……わたし……もう……」
「ああ……いいよ……」

 グラッセはそう言うとシエルの耳たぶを食み、最奥を突き上げるとシエルの体が大きく跳ねたかと思った瞬間、グラッセのソレを締め付けて絶頂を迎えた。
 グラッセも散々弄られたせいか限界が近く、シエルを強く抱きしめたまま中に白濁液を流し込んだ。

「はぁ……んぅ……旦那様……」

 グラッセはシエルの背中を優しく摩る。しばらく余韻に浸っていたがドレスの胸元のボタンを外して前を開くとふるり、と乳房が飛び出しピンク色の乳首が現れた。
 それを口に含むとシエルはビクッとして顔を赤く染めて身じろぎする。

「赤ちゃん、みたいですね……んっ」

 シエルはクスリと笑ってグラッセの頭を抱き寄せる。彼は恥ずかしくなったのか黙ったまま片方の突起物を舐めながら押し潰したりした。
 そのたびにシエルの体は反応を示して、無意識のうちに腰を揺らしていた。

「んっ……旦那様……また固くなってきましたね……」
「たくさん甘えたいと言っていたな」

 グラッセは一度引き抜き、シエルのドレスを脱がせ、自分も着ていたものを全て脱いで綺麗な肢体を露わにする。
 シエルは嬉しそうな表情を浮かべると、その体に手を伸ばしてそっと触れた。


 グラッセはシエルをベッドに押し倒すと頬を優しく包み込むと再び口づけをした。そして足の間に入ると先程出したばかりだというのにすっかり元気を取り戻しているソレを割れ目に押し付けて擦りつける。

「あっ……あん……だんなさまっ……」
「ここも素直だ」

 シエルの秘部は早く欲しいと言わんばかりにヒクついており、グラッセは意地悪そうに微笑むと今度は一気に突き上げた。

「ああぁ……!」

 突然の強い刺激にシエルは悲鳴にも似た声を上げて背筋を仰け反らせると、グラッセは腰を動かしながらそのまま覆い被さった。

「あっ……ああっ……おくっ……当たって……ああん……ああっ……」

 グラッセはシエルの手を握ると指を絡めてシーツの上に縫い付けた。
 もう片方の手でシエルの腰を押さえると激しく打ち付けていく。敏感な膣中が擦られてシエルの口からは喘ぐことしか出来ない。
 感じれば感じるほどグラッセのモノをキュウキュウッと締め付ける。それが気持ち良くて何度も繰り返してしまう。

「あっ……ああっ……だめぇ……おかしくなるっ……あっ……あああっ……」
「くっ……シエルっ……」

 グラッセは腰の動きを早めて子宮口に先端を押し当てて射精すると、シエルも絶頂を迎えて甘い声を上げた。
 グラッセはそのまま倒れ込んでシエルに抱きつく。まだ息が荒くて呼吸を整えるのに必死だった。シエルもグラッセの頭を撫でて落ち着くまで待った。

「ん……旦那様、あの……もう一回しませんか……?もっと、甘えたいです」
「シエルは本当に甘え上手だな……」

 グラッセは苦笑してシエルにキスをする。
 それから何度も、何度も求め合いお互いを求め合うように愛し合った。
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