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精霊の解放
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あれからシエルは自国を知る為に護衛を付けて直接足を運んで城下を散策したり、城の中を案内してもらっていた。
元々、暇さえあれば書物を読み漁っていたので情報だけはあったが、実際に目で見て確かめるのは大事なことだ。おかげで大分理解が深まったと思う。
グラッセは調べ物に加えて最近では公務を任されるようになったらしく忙しい日々を送っており、寂しくもあるが、彼も頑張っているので自分も負けていられないと奮起していた。
そんなある日のこと、グラッセに庭へ呼び出さたシエルは浅い雪を踏み鳴らしながら歩く。グラッセはシエルが来ると振り返り、自分が持っていた杖を差し出した。
これはずいぶんと前にシエルがグラッセに譲った母の形見の杖だ。
前は新品同様だったが、今ではあちこち小さな傷がついて武器としてちゃんと使い込まれているのがよくわかる。
「氷の精霊との協和をするんだ。やってみてくれないか?」
「協和?」
「元々、精霊とは共存共栄の関係を築いていたんだ。それがいつの間にか一方的に精霊を体の中に閉じ込めるようになり、力だけを搾取するようになった。そのせいで精霊も力が安定しなくなって関わった人間に影響が出てしまうようになった」
「そうなんですね……どうすればいいのでしょうか?」
シエルはこくりと小さく首を縦に振ると、杖を受け取り両手でしっかりと握った。その姿はまるで祈りを捧げているようだった。
「精霊を解放するようなイメージで力を杖に注いでみてほしい。俺も手伝う」
「わかりました。やってみます……」
シエルは目を閉じて意識を集中させ、グラッセは彼女の肩に手を添えながら杖を握る手にも重ねる。
すると二人の魔力が合わさっていく感覚があり、それはやがて一つに溶け合っていった。
彼女の身体から淡い光が溢れ出し、杖の先端の青白い宝石が輝き出す。
「あ……」
そして、シエルの目の前に真っ白くて丸い鳥のようなものが現れた。雰囲気も大きさもウサギのスノウと同じぐらいだろう。
「あなたが氷の精霊ですか……?」
そっと手を近づけてみるとそれは手の上に乗り、とても軽いのに冷たくて心地良い感触が伝わってくる。
それなにのふわふわしていて綿毛のような見た目をしていた。
「精霊とは……人の想像の姿に具現化するものだ……シエルの思い描く姿になったんだろう」
声の苦し気なグラッセの説明を聞いてシエルは嬉しさのあまり頬を緩ませる。こんなにも可愛らしい姿をしているなんて思わなかったからだ。
「これからは呼び出したいときに呼ぶようになるから……キミの身を自動的に守ってはくれなくなるが……手が冷たいとか……力が暴走するとか子供を産んだら死ぬとかは……ない……」
「ありがとうございます旦那様!……だ、旦那様!?」
ドサッと音がしたのでシエルが慌てて足元を見るとグラッセが雪の上に倒れていた。
「疲れた……人生で一番、疲れた……」
「相手は精霊ですからね。生きている方が不思議です」
クリアがグラッセの脈を確認する。彼の言葉通り、グラッセは今までの疲労が溜まっていたのもあって体力の限界を迎えて立つこともできなくなったのだ。
「シマエナガみたいですね」
「シマ……?」
アサヒがシエルが抱き抱えている氷の精霊を見てそう言った。アサヒのいた世界の故郷にいる白や黒色の羽毛で覆われた小鳥らしい。
シマエナガと呼ばれる鳥に似ているらしい氷の精霊はシエルの腕の中から飛び立つと雪山の山頂を目指して飛んでいった。
元々、暇さえあれば書物を読み漁っていたので情報だけはあったが、実際に目で見て確かめるのは大事なことだ。おかげで大分理解が深まったと思う。
グラッセは調べ物に加えて最近では公務を任されるようになったらしく忙しい日々を送っており、寂しくもあるが、彼も頑張っているので自分も負けていられないと奮起していた。
そんなある日のこと、グラッセに庭へ呼び出さたシエルは浅い雪を踏み鳴らしながら歩く。グラッセはシエルが来ると振り返り、自分が持っていた杖を差し出した。
これはずいぶんと前にシエルがグラッセに譲った母の形見の杖だ。
前は新品同様だったが、今ではあちこち小さな傷がついて武器としてちゃんと使い込まれているのがよくわかる。
「氷の精霊との協和をするんだ。やってみてくれないか?」
「協和?」
「元々、精霊とは共存共栄の関係を築いていたんだ。それがいつの間にか一方的に精霊を体の中に閉じ込めるようになり、力だけを搾取するようになった。そのせいで精霊も力が安定しなくなって関わった人間に影響が出てしまうようになった」
「そうなんですね……どうすればいいのでしょうか?」
シエルはこくりと小さく首を縦に振ると、杖を受け取り両手でしっかりと握った。その姿はまるで祈りを捧げているようだった。
「精霊を解放するようなイメージで力を杖に注いでみてほしい。俺も手伝う」
「わかりました。やってみます……」
シエルは目を閉じて意識を集中させ、グラッセは彼女の肩に手を添えながら杖を握る手にも重ねる。
すると二人の魔力が合わさっていく感覚があり、それはやがて一つに溶け合っていった。
彼女の身体から淡い光が溢れ出し、杖の先端の青白い宝石が輝き出す。
「あ……」
そして、シエルの目の前に真っ白くて丸い鳥のようなものが現れた。雰囲気も大きさもウサギのスノウと同じぐらいだろう。
「あなたが氷の精霊ですか……?」
そっと手を近づけてみるとそれは手の上に乗り、とても軽いのに冷たくて心地良い感触が伝わってくる。
それなにのふわふわしていて綿毛のような見た目をしていた。
「精霊とは……人の想像の姿に具現化するものだ……シエルの思い描く姿になったんだろう」
声の苦し気なグラッセの説明を聞いてシエルは嬉しさのあまり頬を緩ませる。こんなにも可愛らしい姿をしているなんて思わなかったからだ。
「これからは呼び出したいときに呼ぶようになるから……キミの身を自動的に守ってはくれなくなるが……手が冷たいとか……力が暴走するとか子供を産んだら死ぬとかは……ない……」
「ありがとうございます旦那様!……だ、旦那様!?」
ドサッと音がしたのでシエルが慌てて足元を見るとグラッセが雪の上に倒れていた。
「疲れた……人生で一番、疲れた……」
「相手は精霊ですからね。生きている方が不思議です」
クリアがグラッセの脈を確認する。彼の言葉通り、グラッセは今までの疲労が溜まっていたのもあって体力の限界を迎えて立つこともできなくなったのだ。
「シマエナガみたいですね」
「シマ……?」
アサヒがシエルが抱き抱えている氷の精霊を見てそう言った。アサヒのいた世界の故郷にいる白や黒色の羽毛で覆われた小鳥らしい。
シマエナガと呼ばれる鳥に似ているらしい氷の精霊はシエルの腕の中から飛び立つと雪山の山頂を目指して飛んでいった。
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