26 / 34
後始末
しおりを挟む
グラッセは移動用のフェンリルを作り出して素早くアイスドラゴンの住処へと辿り着き、アイスドラゴンを凍らせて一時的に動きを封じることに成功をした。
「流石です!グラッセ様!」
一年ぶりに会ったグラッセの部下達は尊敬の眼差しで彼を見る。彼らの危機的状況に駆けつけたグラッセが相性最悪のアイスドラゴンに氷魔法で対抗し、全魔力を使ってアイスドラゴンを氷漬けにすることに成功した。
アイスドラゴンは希少な魔物なので討伐は禁止されており、この場で殺してしまうと罪になってしまう。しかし、このまま放置しておけば誰かが襲われてしまうので氷魔法で動けないようにしたのだ。
「アイスドラゴンの前に詫びの食料を置いておけ、氷が解けた時に腹が減っていれば勝手に食うだろう」
グラッセは魔力がほとんど残っておらず、立っているのもやっとの状態だ。部下達の手前で倒れこむわけにもいかずになんとか耐えている。魔力回復薬を飲んだとしても全快には程遠い。
「後は怪我をした殿下を城に……」
「大変です!!!」
重症のシグリッドを連れて城に帰ろうとしたその時、一人の騎士が慌てて駆け寄ってくる。グラッセは嫌な予感がして、胸騒ぎを覚えた。そして、その悪い予感は当たってしまう。
「シグリッド様の炎魔法が原因で雪崩が!このままでは城下町にまで被害が及ぶかもしれません!」
「何だと!?」
グラッセは急いで騎士の案内の元、現場へと向かう。そこには巨大な雪の塊が転がっており、それが斜面を滑り落ちていくのが見えた。
「次から次へと問題ばかり起こしおって!!!」
グラッセは怒りを爆発させながらフェンリルに乗って一気に下山する。
山の下方に着くと手持ちの魔力回復薬一気に飲み干し、目の前にアイスゴーレムを作り出した。
彼は更に氷魔法で氷の壁を作るが強度や大きさが足りない。先ほど、アイスドラゴンを凍らせた時にほとんどの魔力を使い切ってしまったのだ。
それでもグラッセは諦めず、新たな魔力回復薬を補充する為に騎士を呼ぼうとした時だった。
「スノウ?」
視界の端に白い生き物を見つけると、グラッセの肩目掛けて毛深くなったスノウがピョンっと飛び乗ってきた。スノウはグラッセに擦り寄るように身体をくっつける。
スノウはシエルから貰った魔力をグラッセに分け与えてくれた。おかげで魔力が回復したグラッセは再び氷の壁を作り出す。
すると今度は壁がどんどん厚みを増して巨大化をして、アイスゴーレムは壁が倒れないように支えると雪崩を完全に抑え込むことに成功した。その光景を見た騎士達は唖然としていたが、やがて歓喜の声を上げる。
「……はあ……」
グラッセは安堵するとその場に胡坐で座り込み、スノウを撫でた。毛並みはいつも通りに戻っており、グラッセの膝の上に飛び降りると丸くなる。
「シエルが守ってくれたのか」
スノウのおかげもあり、町への被害は最小限に抑えることができた。グラッセはシエルに感謝をしながら目の前の氷の壁を見つめる。そして手に持っていた彼女から譲り受けた魔法の杖も。
「流石です!グラッセ様!」
一年ぶりに会ったグラッセの部下達は尊敬の眼差しで彼を見る。彼らの危機的状況に駆けつけたグラッセが相性最悪のアイスドラゴンに氷魔法で対抗し、全魔力を使ってアイスドラゴンを氷漬けにすることに成功した。
アイスドラゴンは希少な魔物なので討伐は禁止されており、この場で殺してしまうと罪になってしまう。しかし、このまま放置しておけば誰かが襲われてしまうので氷魔法で動けないようにしたのだ。
「アイスドラゴンの前に詫びの食料を置いておけ、氷が解けた時に腹が減っていれば勝手に食うだろう」
グラッセは魔力がほとんど残っておらず、立っているのもやっとの状態だ。部下達の手前で倒れこむわけにもいかずになんとか耐えている。魔力回復薬を飲んだとしても全快には程遠い。
「後は怪我をした殿下を城に……」
「大変です!!!」
重症のシグリッドを連れて城に帰ろうとしたその時、一人の騎士が慌てて駆け寄ってくる。グラッセは嫌な予感がして、胸騒ぎを覚えた。そして、その悪い予感は当たってしまう。
「シグリッド様の炎魔法が原因で雪崩が!このままでは城下町にまで被害が及ぶかもしれません!」
「何だと!?」
グラッセは急いで騎士の案内の元、現場へと向かう。そこには巨大な雪の塊が転がっており、それが斜面を滑り落ちていくのが見えた。
「次から次へと問題ばかり起こしおって!!!」
グラッセは怒りを爆発させながらフェンリルに乗って一気に下山する。
山の下方に着くと手持ちの魔力回復薬一気に飲み干し、目の前にアイスゴーレムを作り出した。
彼は更に氷魔法で氷の壁を作るが強度や大きさが足りない。先ほど、アイスドラゴンを凍らせた時にほとんどの魔力を使い切ってしまったのだ。
それでもグラッセは諦めず、新たな魔力回復薬を補充する為に騎士を呼ぼうとした時だった。
「スノウ?」
視界の端に白い生き物を見つけると、グラッセの肩目掛けて毛深くなったスノウがピョンっと飛び乗ってきた。スノウはグラッセに擦り寄るように身体をくっつける。
スノウはシエルから貰った魔力をグラッセに分け与えてくれた。おかげで魔力が回復したグラッセは再び氷の壁を作り出す。
すると今度は壁がどんどん厚みを増して巨大化をして、アイスゴーレムは壁が倒れないように支えると雪崩を完全に抑え込むことに成功した。その光景を見た騎士達は唖然としていたが、やがて歓喜の声を上げる。
「……はあ……」
グラッセは安堵するとその場に胡坐で座り込み、スノウを撫でた。毛並みはいつも通りに戻っており、グラッセの膝の上に飛び降りると丸くなる。
「シエルが守ってくれたのか」
スノウのおかげもあり、町への被害は最小限に抑えることができた。グラッセはシエルに感謝をしながら目の前の氷の壁を見つめる。そして手に持っていた彼女から譲り受けた魔法の杖も。
49
お気に入りに追加
931
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】22皇太子妃として必要ありませんね。なら、もう、、。
華蓮
恋愛
皇太子妃として、3ヶ月が経ったある日、皇太子の部屋に呼ばれて行くと隣には、女の人が、座っていた。
嫌な予感がした、、、、
皇太子妃の運命は、どうなるのでしょう?
指導係、教育係編Part1
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる