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ぬるま湯に浸る※
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この屋敷の浴室はまあまあ大きい、丸い形の浴槽で手足を思いっきり伸ばしてもまだ余裕があるほどだ。温かいお湯に浸かりながらグラッセは考え事をしていた。
(俺は一体何を望んでいるんだろうか)
自分が一番悪いことは自覚している。彼女に偽りの愛情を与えていたのにそれを喜ばれたり感謝されると優越感のようなものを感じたりして自分の心を満たしていた。だから強く拒んだり無視をするようなことがどうしても出来なかったのだ。それはただの偽善者に過ぎないというのに。
シエルを愛しているフリをしているが本当に愛していないのか?と言われれば答えにくい。最初は義務的な気持ちだったが今は違う。彼女の笑顔を見る度に胸の奥が暖かくなる。しかしそれが本当の愛情と言えるのか、自信がなかった。
恋をしたことがないのだ。まともに女性と付き合ったのもこれが初めてなのでよくわからなかった。しかしシエルのことは大切にしたいと思っている。自由を求めているのに彼女が傷つくところを見たくはない矛盾を抱えていた。
「旦那様、一緒に入ってもいいですか?」
シエルの声にグラッセは思考を中断すると、振り向いた。そこには恥ずかしげにしている彼女がいた。ホワイトブロンドの髪は綺麗にまとめており、当然服は何も身につけていない状態。透き通るような白い肌と女性らしい丸みを帯びたラインが目に映った瞬間、見慣れているはずなのにグラッセは顔が熱くなった。
「……構わないが」
断る理由もないため動揺を悟られないようにしながら了承すればシエルはほっと安堵しながら近寄ると音を立てないよう、静かに入り、隣に座ってきた。そしてそっと寄り添うように肩を触れ合わせると彼の顔を覗き込んだ。
「今日はアサヒと一緒にお菓子を作ったんです」
「そうだったのか」
「ほとんどアサヒが作ったので私は少しお手伝いをしただけで……」
楽しかった思い出を語るシエルの顔はとても穏やかで満ち足りているように見えた。きっとシエルにとってもアサヒは友人のような存在になっているのだろうと思う。
アサヒは彼女に対して怖がらずに接することができる貴重な人物。だからこそ、彼に対しては信頼を寄せることができるのかもしれない。
「あ、そうだ。お湯に入っている間は手が冷えないんですよ。触ってみてください」
シエルがお湯から手を出すとグラッセは言われた通りに手を掴んでみた。確かに冷たい手ではなく温かい手になっている。シエルの手はいつもひんやりとしているので新鮮味があった。
「温かいな」
「えへへ」
そう言って微笑むシエルはまるで天使のように可愛らしく見えた。グラッセは思わず頬を撫でると、シエルは心地良さそうに目を閉じて擦り寄ってきた。猫みたいな仕草にやはり可愛いなと思う。
「……温かい所でしたら……赤ちゃん、できやすいような気がします」
シエルがぽつりと呟いてから数秒後、グラッセは彼女の発言の意味を理解して固まってしまった。
「本に書いてあったのか?」
「……いいえ。でも前に読んだ本にそういうシーンがあって…………ご、ごめんなさい。変なこと言いましたっ」
慌てて謝るとグラッセから離れて距離を取ろうとした。だが、グラッセは逃げるシエルの腕を掴むと引き寄せるように抱きしめる。
「どんなシーンだったんだ?」
「そ、それは……その……」
「教えてくれないか、キミの口から聞きたい」
耳元で囁かれるとシエルは身を震わせた。グラッセが懇願するように言えば、シエルは観念して小さな声で言った。
「お風呂で、ご令嬢が……ご、ご奉仕していまして……それで、キスをして、王子様がご令嬢の大事な所に指を入れてかき混ぜて……ひゃっ」
シエルの口からしどろもどろに出た言葉を聞いてグラッセはシエルの胸に触れた。柔らかい乳房に触れられたシエルはくすぐったさに声を上げる。
「あっ、やぁ」
「最後まで続けてくれ」
胸を揉まれて先端を摘まれるとくぐもった悲鳴が漏れる。羞恥心に耐えながらもシエルは必死で説明を続けた。
「それから……たくさ、あっ、たくさん、口づけを交わして、愛を……伝えあって、最後はひとつになって、お互いの身体を求め合う、のです」
話を聞き終えたグラッセはシエルの首筋に吸い付くと、赤い痕を残した。火照った肌が更に紅潮していく。その様子を楽しむように舌先でなぞれば彼女はびくんと反応を示した。
その反応を見ながら今度は向かい合わせになるようにシエルの体を反転させると艶のある唇を自分のものと重ねた。何度も繰り返していると呼吸が荒くなり、お互いに貪り尽くすかのように激しくなっていく。互いの体が密着しているせいかシエルの柔らかな乳房は押し潰され、形を変えている。
やがてシエルが苦しそうな息を吐いたことでグラッセは一旦離れるとシエルは潤んだ瞳で見つめてきた。その姿が煽情的で下半身は疼いてしまう。今すぐに抱きたいと理性が崩れかけそうになり、グラッセはその気持ちを抑えながら尋ねた。
「嫌か?」
この問いかけに対する返答はシエルがここに来た時点で聞かずともわかっている。しかし、それでもグラッセは彼女の意思を確認したかったのだ。大切にしたいから。
そんなシエルは首を横に振ると恥ずかしそうにはにかみながら、小さくこう答える。
「嫌じゃありません……あっ」
シエルの返事を聞くなり、乳首を舌で舐め上げてから口に含んで吸うと甘い矯声が聞こえた。だんだんと硬くなるそこを舌先で潰しながらもう片方の手で彼女の足の間に触れるとお湯の中だというのにぬかるんでいる感触が伝わる。
「もう入れる準備ができているな」
「い、言わないで……あっ……んんっ」
乳首から口を話して耳元で言うと、感じていることを示すかのような甘えた声が返ってくる。もっと彼女の乱れる姿が見たくなってゆっくりと指を中に入れると内壁がきゅっと締め付けた。それに抵抗するように動かすと彼女の身体は小刻みに震え始める。
「あんっ!あぁ……」
喘ぎ声を出しながらも決して嫌がる様子を見せないどころか自分から抱き着いて深い繋がりを求めるような仕草を取る姿にグラッセは興奮してしまい、早く彼女を味わいたいという欲望が湧き上がる。
「欲しいか?」
そう尋ねれば彼女は素直に首を縦に振ってみせた。普段から欲を言わないシエルが唯一、欲深くなる瞬間。この時だけはグラッセだけのものだとわかる瞬間。
そしてそれを引き出しているのは自分だと思えることで愛しさと独占欲で満たされ、グラッセの中でシエルは誰よりも特別な存在となる。他の誰にも渡したくないと。
(これは……嫉妬、なのか?)
「……旦那様?」
途中で動きを止めたことに不安を覚えたのかシエルはこちらを見上げてくるのでグラッセは誤魔化すために額や頬、耳に軽い口付けをした。そして彼女に優しく笑いかけると、もう一度、行為を再開した。
秘部に入れていた指を引き抜くとシエルの尻を持ち上げたグラッセは固くそそり立つ自身をそこに宛てがうと、そのままゆっくり下ろしていく。
「はぁ……あっ……あっ」
ただ挿入されただけで感じるらしいシエルの口から漏れるのは歓喜にも似たため息。まだ先しか入っていないというのに達してしまいそうな彼女にグラッセは再びキスをして落ち着けようとする。その間にもグラッセのものは沈められていき、やがて全て収まる。
「んっ……全部、入りました?」
「ああ、中にしっかり入っているぞ」
そう言いながら軽く下から突き上げると彼女は「あっ!」と甲高い声を出してグラッセに抱き着く力を強めた。それがまた愛しくてグラッセは何度もシエルを突き上げて攻め立てる。
シエルの身体が上下するたびにぱしゃんぱしゃんとお湯が大きく波打った。浴室内に響く水音さえも快楽に変わっていき、どんどん熱を帯びて蕩けていくようだ。
「んぅっ、ひゃっ……だめ……」
奥まで届いたところでグラッセがシエルを支えながら動きを変えると今までとは違う刺激を受けて戸惑った様子を見せるも彼女は無意識のうちに自ら動くようになっていた。
「あ、う……旦那様……熱い、です……」
お湯のせいでいつもより体温が高くなっているシエルはさらに快感を感じやすくなっており、膣内は痙攣していた。そのためグラッセのものを強く包み込みながら絡みついてきて離そうとしない。それはシエルだけでなくグラッセも同じだった。
「のぼせる前に終わらせよう」
グラッセはそう言うとシエルを抱え直すと、さらに揺さぶった。シエルはされるがままに揺れ、ただひたすらに彼を受け入れることだけに集中する。
「あっ、あんっ、あっあっ」
突かれる度に甘く切なげな声を上げる彼女の顔からはすっかり余裕が失われており、ぎゅっと目を閉じて一心不乱に快楽を貪っていた。
「はっ……シエル、出すぞ」
限界が近いことを告げればシエルは小さく、だがはっきりとした動作で首を縦に振る。それを見たグラッセは動きをさらに早めた。
「んんっ!あ、あ、あぁっ!!」
最後に力強く最深部を穿つとシエルは大きく仰反りながら絶頂を迎える。その締めつけによってグラッセもまた果てた。どくんっ、と脈打ち、大量の精液を吐き出すとそれに呼応するように中が激しく収縮を繰り返す。
最後の最後まで搾り取るかのようにきゅうと締まったかと思うと弛緩していき、シエルは一度身体を離して呼吸を整え始めた。
「はぁ……はぁ……あ、冷たい……」
急にグラッセの大きな手がシエルの赤くなった頬に触れた。風呂の中で、身体が熱くなるような行為をしていたのに手だけがひんやりと冷たく感じられ、不思議そうな顔をすると彼は苦笑を浮かべる。
「氷魔法で手だけを少し冷やしたんだ。使いこなせれば逆も可能かもしれない」
つまり氷の精霊の加護を持っていても、その力を使いこなせればいつかはシエルの手も温かい手にすることが可能になるのかもしれない……ということだ。そこまで考えてくれたことにシエルは嬉しさを覚えると同時にグラッセに対する想いがまた強くなっていくのを感じた。
「がんばります……」
彼の手のひらに自分の手を重ね合わせるシエルのその姿は熱に浮かされたようにぼうっとしており、瞳には涙が溜まっている。そんな彼女の姿はグラッセを煽るのに十分すぎるほど扇情的だ。
グラッセはごくりと生唾を飲み込むと再び下半身に血が集まっていく感覚が襲ってきた。
「あ、大きくなりましたね……もう少し、しますか?」
「いや……のぼせる前にベッドへ行こう」
「はい、旦那様」
シエルの提案に乗る形でグラッセは彼女の乱れた前髪をかき上げて軽く額に口付けを落とした。
*
暖炉の火だけがこの部屋の灯りだった。部屋全体を照らすほどの光量はないが、お互いの顔を見るくらいなら問題ない程度の明るさはある。
グラッセは隣ですやすやと眠るシエルを見つめていた。彼女は夜着を着ておらず、全裸のまま羽毛の布団を被っている。室内は十分、暖かくしてあるので風邪を引く心配はないだろう。
ローブを身に纏い、グラッセはサイドテーブルの引き出しから薬の入った紙の包みを取り出すと暖炉の方へと歩いて行く。そして紙包みごと、火の中に投げ入れた。
数秒後、炎に包まれて燃え尽きていくそれを見届けるとグラッセはシエルの隣に戻って横になり、彼女を抱きしめた。
今日は避妊薬を飲まなかった。今日だけじゃない、今後も飲むつもりはない。
(これでいい)
グラッセは穏やかに眠るシエルを抱き寄せながらそう思った。
このまま騙し続けると罪の意識で押し潰されそうになる。それに
(他の男に渡したくない)
このまま離縁をし、再婚をした彼女が自分以外の誰かに身を委ねるなど考えただけでも吐き気がする。それなら一生、自分の手元に置いておくと決めた。
(俺は一体何を望んでいるんだろうか)
自分が一番悪いことは自覚している。彼女に偽りの愛情を与えていたのにそれを喜ばれたり感謝されると優越感のようなものを感じたりして自分の心を満たしていた。だから強く拒んだり無視をするようなことがどうしても出来なかったのだ。それはただの偽善者に過ぎないというのに。
シエルを愛しているフリをしているが本当に愛していないのか?と言われれば答えにくい。最初は義務的な気持ちだったが今は違う。彼女の笑顔を見る度に胸の奥が暖かくなる。しかしそれが本当の愛情と言えるのか、自信がなかった。
恋をしたことがないのだ。まともに女性と付き合ったのもこれが初めてなのでよくわからなかった。しかしシエルのことは大切にしたいと思っている。自由を求めているのに彼女が傷つくところを見たくはない矛盾を抱えていた。
「旦那様、一緒に入ってもいいですか?」
シエルの声にグラッセは思考を中断すると、振り向いた。そこには恥ずかしげにしている彼女がいた。ホワイトブロンドの髪は綺麗にまとめており、当然服は何も身につけていない状態。透き通るような白い肌と女性らしい丸みを帯びたラインが目に映った瞬間、見慣れているはずなのにグラッセは顔が熱くなった。
「……構わないが」
断る理由もないため動揺を悟られないようにしながら了承すればシエルはほっと安堵しながら近寄ると音を立てないよう、静かに入り、隣に座ってきた。そしてそっと寄り添うように肩を触れ合わせると彼の顔を覗き込んだ。
「今日はアサヒと一緒にお菓子を作ったんです」
「そうだったのか」
「ほとんどアサヒが作ったので私は少しお手伝いをしただけで……」
楽しかった思い出を語るシエルの顔はとても穏やかで満ち足りているように見えた。きっとシエルにとってもアサヒは友人のような存在になっているのだろうと思う。
アサヒは彼女に対して怖がらずに接することができる貴重な人物。だからこそ、彼に対しては信頼を寄せることができるのかもしれない。
「あ、そうだ。お湯に入っている間は手が冷えないんですよ。触ってみてください」
シエルがお湯から手を出すとグラッセは言われた通りに手を掴んでみた。確かに冷たい手ではなく温かい手になっている。シエルの手はいつもひんやりとしているので新鮮味があった。
「温かいな」
「えへへ」
そう言って微笑むシエルはまるで天使のように可愛らしく見えた。グラッセは思わず頬を撫でると、シエルは心地良さそうに目を閉じて擦り寄ってきた。猫みたいな仕草にやはり可愛いなと思う。
「……温かい所でしたら……赤ちゃん、できやすいような気がします」
シエルがぽつりと呟いてから数秒後、グラッセは彼女の発言の意味を理解して固まってしまった。
「本に書いてあったのか?」
「……いいえ。でも前に読んだ本にそういうシーンがあって…………ご、ごめんなさい。変なこと言いましたっ」
慌てて謝るとグラッセから離れて距離を取ろうとした。だが、グラッセは逃げるシエルの腕を掴むと引き寄せるように抱きしめる。
「どんなシーンだったんだ?」
「そ、それは……その……」
「教えてくれないか、キミの口から聞きたい」
耳元で囁かれるとシエルは身を震わせた。グラッセが懇願するように言えば、シエルは観念して小さな声で言った。
「お風呂で、ご令嬢が……ご、ご奉仕していまして……それで、キスをして、王子様がご令嬢の大事な所に指を入れてかき混ぜて……ひゃっ」
シエルの口からしどろもどろに出た言葉を聞いてグラッセはシエルの胸に触れた。柔らかい乳房に触れられたシエルはくすぐったさに声を上げる。
「あっ、やぁ」
「最後まで続けてくれ」
胸を揉まれて先端を摘まれるとくぐもった悲鳴が漏れる。羞恥心に耐えながらもシエルは必死で説明を続けた。
「それから……たくさ、あっ、たくさん、口づけを交わして、愛を……伝えあって、最後はひとつになって、お互いの身体を求め合う、のです」
話を聞き終えたグラッセはシエルの首筋に吸い付くと、赤い痕を残した。火照った肌が更に紅潮していく。その様子を楽しむように舌先でなぞれば彼女はびくんと反応を示した。
その反応を見ながら今度は向かい合わせになるようにシエルの体を反転させると艶のある唇を自分のものと重ねた。何度も繰り返していると呼吸が荒くなり、お互いに貪り尽くすかのように激しくなっていく。互いの体が密着しているせいかシエルの柔らかな乳房は押し潰され、形を変えている。
やがてシエルが苦しそうな息を吐いたことでグラッセは一旦離れるとシエルは潤んだ瞳で見つめてきた。その姿が煽情的で下半身は疼いてしまう。今すぐに抱きたいと理性が崩れかけそうになり、グラッセはその気持ちを抑えながら尋ねた。
「嫌か?」
この問いかけに対する返答はシエルがここに来た時点で聞かずともわかっている。しかし、それでもグラッセは彼女の意思を確認したかったのだ。大切にしたいから。
そんなシエルは首を横に振ると恥ずかしそうにはにかみながら、小さくこう答える。
「嫌じゃありません……あっ」
シエルの返事を聞くなり、乳首を舌で舐め上げてから口に含んで吸うと甘い矯声が聞こえた。だんだんと硬くなるそこを舌先で潰しながらもう片方の手で彼女の足の間に触れるとお湯の中だというのにぬかるんでいる感触が伝わる。
「もう入れる準備ができているな」
「い、言わないで……あっ……んんっ」
乳首から口を話して耳元で言うと、感じていることを示すかのような甘えた声が返ってくる。もっと彼女の乱れる姿が見たくなってゆっくりと指を中に入れると内壁がきゅっと締め付けた。それに抵抗するように動かすと彼女の身体は小刻みに震え始める。
「あんっ!あぁ……」
喘ぎ声を出しながらも決して嫌がる様子を見せないどころか自分から抱き着いて深い繋がりを求めるような仕草を取る姿にグラッセは興奮してしまい、早く彼女を味わいたいという欲望が湧き上がる。
「欲しいか?」
そう尋ねれば彼女は素直に首を縦に振ってみせた。普段から欲を言わないシエルが唯一、欲深くなる瞬間。この時だけはグラッセだけのものだとわかる瞬間。
そしてそれを引き出しているのは自分だと思えることで愛しさと独占欲で満たされ、グラッセの中でシエルは誰よりも特別な存在となる。他の誰にも渡したくないと。
(これは……嫉妬、なのか?)
「……旦那様?」
途中で動きを止めたことに不安を覚えたのかシエルはこちらを見上げてくるのでグラッセは誤魔化すために額や頬、耳に軽い口付けをした。そして彼女に優しく笑いかけると、もう一度、行為を再開した。
秘部に入れていた指を引き抜くとシエルの尻を持ち上げたグラッセは固くそそり立つ自身をそこに宛てがうと、そのままゆっくり下ろしていく。
「はぁ……あっ……あっ」
ただ挿入されただけで感じるらしいシエルの口から漏れるのは歓喜にも似たため息。まだ先しか入っていないというのに達してしまいそうな彼女にグラッセは再びキスをして落ち着けようとする。その間にもグラッセのものは沈められていき、やがて全て収まる。
「んっ……全部、入りました?」
「ああ、中にしっかり入っているぞ」
そう言いながら軽く下から突き上げると彼女は「あっ!」と甲高い声を出してグラッセに抱き着く力を強めた。それがまた愛しくてグラッセは何度もシエルを突き上げて攻め立てる。
シエルの身体が上下するたびにぱしゃんぱしゃんとお湯が大きく波打った。浴室内に響く水音さえも快楽に変わっていき、どんどん熱を帯びて蕩けていくようだ。
「んぅっ、ひゃっ……だめ……」
奥まで届いたところでグラッセがシエルを支えながら動きを変えると今までとは違う刺激を受けて戸惑った様子を見せるも彼女は無意識のうちに自ら動くようになっていた。
「あ、う……旦那様……熱い、です……」
お湯のせいでいつもより体温が高くなっているシエルはさらに快感を感じやすくなっており、膣内は痙攣していた。そのためグラッセのものを強く包み込みながら絡みついてきて離そうとしない。それはシエルだけでなくグラッセも同じだった。
「のぼせる前に終わらせよう」
グラッセはそう言うとシエルを抱え直すと、さらに揺さぶった。シエルはされるがままに揺れ、ただひたすらに彼を受け入れることだけに集中する。
「あっ、あんっ、あっあっ」
突かれる度に甘く切なげな声を上げる彼女の顔からはすっかり余裕が失われており、ぎゅっと目を閉じて一心不乱に快楽を貪っていた。
「はっ……シエル、出すぞ」
限界が近いことを告げればシエルは小さく、だがはっきりとした動作で首を縦に振る。それを見たグラッセは動きをさらに早めた。
「んんっ!あ、あ、あぁっ!!」
最後に力強く最深部を穿つとシエルは大きく仰反りながら絶頂を迎える。その締めつけによってグラッセもまた果てた。どくんっ、と脈打ち、大量の精液を吐き出すとそれに呼応するように中が激しく収縮を繰り返す。
最後の最後まで搾り取るかのようにきゅうと締まったかと思うと弛緩していき、シエルは一度身体を離して呼吸を整え始めた。
「はぁ……はぁ……あ、冷たい……」
急にグラッセの大きな手がシエルの赤くなった頬に触れた。風呂の中で、身体が熱くなるような行為をしていたのに手だけがひんやりと冷たく感じられ、不思議そうな顔をすると彼は苦笑を浮かべる。
「氷魔法で手だけを少し冷やしたんだ。使いこなせれば逆も可能かもしれない」
つまり氷の精霊の加護を持っていても、その力を使いこなせればいつかはシエルの手も温かい手にすることが可能になるのかもしれない……ということだ。そこまで考えてくれたことにシエルは嬉しさを覚えると同時にグラッセに対する想いがまた強くなっていくのを感じた。
「がんばります……」
彼の手のひらに自分の手を重ね合わせるシエルのその姿は熱に浮かされたようにぼうっとしており、瞳には涙が溜まっている。そんな彼女の姿はグラッセを煽るのに十分すぎるほど扇情的だ。
グラッセはごくりと生唾を飲み込むと再び下半身に血が集まっていく感覚が襲ってきた。
「あ、大きくなりましたね……もう少し、しますか?」
「いや……のぼせる前にベッドへ行こう」
「はい、旦那様」
シエルの提案に乗る形でグラッセは彼女の乱れた前髪をかき上げて軽く額に口付けを落とした。
*
暖炉の火だけがこの部屋の灯りだった。部屋全体を照らすほどの光量はないが、お互いの顔を見るくらいなら問題ない程度の明るさはある。
グラッセは隣ですやすやと眠るシエルを見つめていた。彼女は夜着を着ておらず、全裸のまま羽毛の布団を被っている。室内は十分、暖かくしてあるので風邪を引く心配はないだろう。
ローブを身に纏い、グラッセはサイドテーブルの引き出しから薬の入った紙の包みを取り出すと暖炉の方へと歩いて行く。そして紙包みごと、火の中に投げ入れた。
数秒後、炎に包まれて燃え尽きていくそれを見届けるとグラッセはシエルの隣に戻って横になり、彼女を抱きしめた。
今日は避妊薬を飲まなかった。今日だけじゃない、今後も飲むつもりはない。
(これでいい)
グラッセは穏やかに眠るシエルを抱き寄せながらそう思った。
このまま騙し続けると罪の意識で押し潰されそうになる。それに
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このまま離縁をし、再婚をした彼女が自分以外の誰かに身を委ねるなど考えただけでも吐き気がする。それなら一生、自分の手元に置いておくと決めた。
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