【完結】忌み姫と氷の魔法使いの白くない結婚

白滝春菊

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後悔を抱く※

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 シエルが夫婦の寝室に戻るとグラッセはソファーに座って読書をしていた。彼の隣に魔法の本がたくさん置かれている。
 邪魔をしてしまったと思い先に寝てしまおうと静かにベッドに入ろうとするがグラッセは本を閉じると立ち上がり彼女の手を引いて後ろから抱きしめられて心臓が大きく跳ね上がる。

「あ、あの……旦那様……?どうかされましたか……」

 戸惑いながら尋ねるとグラッセはシエルの頭を撫でながら耳元に唇を寄せてきた。熱い吐息がくすぐったくて身を捩るが腕の中に閉じ込められているため逃げることができない。

「今夜は最後までしようか」
「えっ……」
「駄目だろうか」

 その言葉の意味を理解して頬を紅潮させる。彼がこんな風にストレートに伝えてくることはあまり無いので初めてのことなので戸惑ってしまう。いつもなら誘ってくることなど無かったのだ。

 グラッセはシエルの身体を反転させると向かい合い、額、瞼、頬、首筋、鎖骨へとキスを落としていく。恥ずかしさから目を瞑っていたシエルだったが、胸に触れられた瞬間ビクッと肩を震わせ、慌てて目を開く。

「シエル、続きはベッドで」

 グラッセは優しく問いかけてきたが、有無を言わせないといった雰囲気があり、シエルは小さく震えながらも首を縦に振ることしかできなかった。


 ベッドの上に向かい合って座るとゆっくりと服を脱がされていく。傷一つない白い肌が露わになり、手袋を残して下着姿になると羞恥心に耐えきれなくなったのかシーツで体を隠してしまった。

「したくないのか?」

 グラッセの問いに対してふるふると顔を横に振るとシーツを手放す。そしてそのまま口づけられると、舌を絡め取られ、何度も角度を変えて深くなっていく。

「んぅ……ふぁ……」

 息苦しくなりシエルの口から甘い声が漏れた時グラッセの手が胸に触れた。
 大きな手で包み込むように揉まれ、先端を指先で摘まれるとピクンと反応してしまう。

 下半身からじわりと何かが広がるような感覚に襲われ太腿を合わせるようにして膝を立てると、それに気づいたのか彼はそのまま手を這わせてショーツ越しに秘部に触れる。
 そこはもうすでに湿り気を帯びていて、触れられたことでさらに蜜が溢れ出す。

「どんどんいやらしくなってきてるな」
「や……言っちゃだめです……あっ……!」

 布の上から割れ目に添うように沿ってなぞると、くちゅりと音が鳴り響く。その音を聞いてか、シエルの顔が真っ赤に染まっていく。

「だ、旦那様も気持ちよくなってください……」

 そう言ってシエルはグラッセの下半身に手を伸ばすとすぐに腕を掴まれたため動きを止めると、彼によってベッドに押し倒される。

「お姫様はそんなことしなくていいんだ」

 自分よりも大きな身体に見下ろされると自然と体が強張る。
 手袋をしていたとはいえ、自分から触れるのはいけなかった。悪いことをしてしまったのではと不安になってくる。
 そんなシエルの様子に気づいているはずなのに何も答えず、ただじっと見つめていた。

「はい……でも……私ばっかりじゃなくて……旦那様にも……その……ちゃんと感じて欲しいんです」

 はしたないことを言っている自覚はあったが今日は最後までするとシエルなりに覚悟を決めてきたつもりだ。
 子供を作るだけではなくて、グラッセにも喜んでもらいたかった。いつも気持ちよくなるのは自分だけだったのが心苦しい。

「今日は最後までするから落ち着いてくれ」

 グラッセはシエルの髪をかき上げると現れた耳に唇を落とす。
 その感触にゾクリとして体を震わせ、同時に彼の手が腹部から足の付け根にかけて触れていき、内腿を優しく撫でる。触れられる所、全部が熱を帯びるようで心地良い。

「んっ……」
「俺だってキミが欲しいんだ……だから、シエルを感じさせてくれ」

 耳元で囁かれた言葉に顔が更に赤く染まり、再び彼女に覆い被さると今度は首筋に跡が付かない程度に吸い付く。
 それと同時に形の良い柔らかな乳房を揉みしだかれ、時折先端を弄ばれるとシエルからは甘い吐息だけが吐き出された。

「……だんな、さま……あっ……」

 愛撫ですっかり蕩けさせられたシエルはされるがままになっていた。
 いつの間にか下着を脱がされてしまい裸を晒すことになっても抵抗することなく、むしろ彼に全てを委ねている様子だった。

「わかるか?ここがこんなになっているのが」

 彼の太い指先が入り口を上下に擦るように動くと、くちゃっと水音を鳴らした。それだけで彼女は恥ずかしさに頬を染めた。

「……は、はい……わかります……」
「それじゃあ次はどうすればいいかもわかるな?」

 その言葉にごくりと唾を飲み込みながらゆっくりと脚を広げると彼はその間に入り込んだ。そしてナイトローブの中から硬く反り返った男根が現れる。
 最初に繋がった結婚式の時は天井だけを見ていたので今回初めて見る男性器にシエルは思わず釘付けになった。

(旦那様、私で反応してくれている……)

 自分に欲情してくれていることが嬉しくてつい見惚れてしまうが、次の瞬間には甘い刺激が全身に走り、意識を引き戻されてしまう。

「あっ、あっ……」

 固くなった先端が撫でるように入り口を行き来するだけで敏感になった体はピクンと跳ね上がる。それが焦らされているように感じられ、早く挿れてほしくて無意識のうちに腰が揺れた。

「入れてほしいか?」
「はい……お願いします……旦那様の……ください」

 くちゅり、くちゅりと卑猥な音が響いて聴覚からも犯されていくようだが、シエルは構わずに求め続けた。

「あ、赤ちゃんができるくらいたくさん、注いでほしいです……旦那様の子種、いっぱい中に出してほしい、です……」
「どこで覚えたんだ。そんな台詞」

 普段の彼女なら絶対に言わないであろう台詞を口にしながら懇願するとグラッセは呆れたように笑う。
 だがそれも一瞬のことですぐに表情が変わる。それは獲物を狙う獣のような鋭い眼差しをしていた。

「力を抜いてくれ」

 グラッセは自身を片手に握り込むと入口へとあてがいゆっくりと挿入していく。太く固いものが膣壁を押し広げていく感覚に、シエルの口から声が漏れる。

「んん……ん……」

 最初の時に比べると痛みはなかったが、それでも違和感があるのか苦しそうな声を上げている。
 グラッセが気遣うようにして頭を撫でながらキスをするとその気持ち良さと幸福感に満たされて体の力が抜けていった。

「……ん……旦那様……もっと……奥まで……来て、ください……」

 舌足らずになりながらも必死に訴えかける姿はとても可愛らしく見え、彼女の言う通りにしてやろうと根元近くまではめ込んでいく。

「良い子だ。シエル……」
「あっ!やぁっ……!」

 そのまま最深部まで到達し、子宮口を突かれるとシエルは一際大きな声で喘いだ。

「だ、旦那様のが、私の中に入ってるのですね……」

 まだ二回目なので、ほんの少しの痛みとぎこちなさはあるものの、お互い繋がっていることに喜びを感じていた。その証拠に繋がった部分からトロリとした蜜が流れ出ている。

 彼女の痛みを和らげようと再び口づけをしてやるとそれに応えてくる。そのせいで余計に深く繋がってしまい「あんっ」と小さく悲鳴を上げるも嫌がっている素振りはなくむしろ積極的に受け入れていた。
 彼女はキスが好きなのか、舌で口腔内を舐められると体がビクビクと震え、膣内がきゅっと締まった。

 解きほぐすように優しくゆっくり抜き差しを繰り返しながらキスを続ける。初めて繋げた時と違って甘く蕩けるようなゆったりとした動きはシエルにとって心を落ち着かせるもので心地良く、同時にグラッセへの愛情が増長されていった。

(幸せ……)

 体だけでなく心までも満たされていき、次第に快楽が増してきて自然とうっとりした顔つきになっていった。

「シエル、そろそろいいか」
「大丈夫ですよ……いっぱい、動いてください……」
「…………」

 もう充分に馴染んだと判断したためそう尋ねるとシエルは平気だと答えて微笑んだ。その笑顔を見てグラッセの心が締め付けられる。
 こんなにも健気に尽くしてくれる妻が愛おしくなり、大切にしたいと思った。

「……あっ……あ、あっ……」

 最初は緩やかだった動きが徐々に激しさを増し、肌がぶつかり合う音が大きくなっていく。シエルの唇からはひっきりなしに甘い声が上がり、その度にグラッセを興奮させた。

「旦那様……旦那様……すき……」

 何度も繰り返し夫を呼び、好きだと言うシエルの腰を掴んで引き寄せると更に激しく打ち付ける。

「あぅ……あ……だん、な様の、おっきく、なってます……私の中でびくんって……あ、だめ……怖い……」

 絶頂を迎える寸前になって怖くなったのかシエルの手が伸びてきた。それをしっかりと握ってやり安心させるようにキスを繰り返す。

「んっ……ん……旦那様……きもちよく……」
「ああ、俺も同じだよ」

 自分だけではなく、彼にも快感を与えられているのか不安になっていたらしいがグラッセの言葉に安堵するとシエルはギュッとしがみつく。それに応えるように強く抱きしめ返すとそのまま二人は高みへ上り詰めていく。
 部屋の中に響くのは二人の荒い息遣いと結合部から聞こえる淫靡なものだけだ。

「あっ、あっ、旦那様、旦那様……好き……大好きです……ずっと、一緒に……」
「…………」

 最後の瞬間を迎えようとする直前、グラッセは無言のまま彼女を強く抱き寄せると今までで一番深くを貫いた。

「あ、ああっ……!」

 子宮口に先端が強く押しつけられ、ビクンッと大きく痙攣するとシエルはグラッセにしがみついたまま果てた。
 そしてほぼ同時に彼もまた射精する。ドクンドクンと脈打つたびに熱い精子が注がれ、シエルの体を満たそうとしていた。

「あったかい……旦那様のがたくさん……嬉しいです……赤ちゃん、できるといいですね……」
「………そう、だな」

 呼吸を整えながらグラッセは答える。シエルの嬉しそうな声だけを聞きながら彼は罪悪感を抱いていた。
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