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新しい家族編
交換できるなら
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夕暮れの光が柔らかく街を包み込み、空はオレンジ色に染まっていた。馬車の窓から流れ込む風は少し冷たく、夜の訪れを感じさせる。
シリウスとステラは静かに並んで座っていた。シリウスは時折、ステラの横顔を気にしながら、言葉を探していた。
「ステラ。弟の名前、どうする?」
やわらかな声で声をかけたがステラはその問いに答えることなく、ただ外の景色を無言で見つめていた。目の前の風景が流れていく中、彼女の表情は変わらない。顔を上げることなく、しばらくしてからぽつりとつぶやいた。
「お父さんが考えて」
その声はどこか冷たく、感情がこもっていないように感じられた。ステラの肩は少し落ちており、普段の彼女の元気さがどこかに消えてしまったように見えた。窓の外に目を向けたまま、何かを考えているような、ただ現実に引き戻されているような、そんな背中だ。
「そうか……ステラの考えも聞きたいんだが」
少しでもステラの気持ちを引き出したいと思い、シリウスは優しく促した。だが、ステラの返事はまたしても予想通り、冷たいものだった。
「わかんない」
その言葉はシリウスの心にずしりと重く響いた。彼女の瞳はどこか遠くを見つめているようで、まるで自分の存在がそこにはないかのように、沈黙が続いた。
シリウスは気づいていた。ステラの心にはまだ消化しきれていない何かがあるのだろう。妹がほしいという強い願いを抱いていた彼女にとって、弟の誕生はきっと大きなショックだったに違いない。期待と現実のギャップが壁を作っている。
シリウスは少しでも娘の気持ちを和らげようと、手を伸ばして静かに肩に触れた。温かい手のひらが肩に乗るとステラは微かに体を震わせる。シリウスはその小さな反応に心が痛み、さらに声をかける。
「ステラ、無理にでも話してくれ。俺はちゃんと知りたいんだ」
その言葉が、ステラの心に届いてくれたならいいのだが、とシリウスは期待を込めて声をかけた。しかし、ステラはしばらく黙ったまま、静かに呼吸を整えているようだった。やがて、ほんの少しだけ顔を上げると、彼女の目はどこか遠く、そして少し寂しげに見えた。
「妹がよかったの……」
「そうか……」
シリウスはそれ以上、何も言えなかった。その気持ちを受け止めながら、その小さな肩を優しく抱き寄せた。ステラは抵抗することなくその胸に頭を預け、自分の三つ編みを弄りだす。
今更性別は変えられない。これはステラが受け入れていかなければならない現実だ。その痛みを和らげるため、シリウスはただ黙って娘の頭を撫でた。
◆
学校に行き、ステラが教室の扉を開けるとすぐに半獣人のレオがにこやかな笑顔を浮かべて近づいてきて、レオは元気よく声をかけた。
「ステラ、赤ちゃん産まれたんだって?妹ができたんだよな!」
「ううん…妹じゃなくて、弟だったの」
元気の無いステラの言葉にレオは驚いたように目を見開き、軽く首をかしげた。しばらくそのまま二人はお互いを見つめ合っていたが、すぐにレオは励ますように言った。
「いいじゃん弟!俺も弟欲しいし!」
ステラはその言葉に対して、少し不満げに目を伏せると、うつむきながら答えた。
「それはレオが男の子だからでしょ」
声に少しだけ冷たさが混じり、口調がわずかに硬くなった。レオの反応がまったく無自覚なことに、ステラはますます心の中でため息をつく。
彼の軽い言葉に少し苛立ちながらも、心の中で自分の気持ちが整理できないことに気づいていた。
レオのせいでステラは同い年の男の子が少し苦手だ。シリウスを父親にしたいと言っていたこともあるが、なんだか強引で、わからないことも多い。だから男の子である弟よりも妹が欲しかった。
ステラの様子にレオは全く気づくことなく、話を続ける。
「そういえばさ、俺に新しいお父さんができるかもしれないんだ」
「ふーん……」
レオの声は耳に届いているはずなのにその内容がどこか遠く、ぼんやりとして聞こえる。目の前にいるレオが話していることがどうしても心の中に響いてこない。
頭の中で浮かぶのは目の前に横たわる現実、弟という新たな家族の姿ばかりだった。どこか、レオの話の一つ一つが霞んで見え、彼の存在すらも次第に遠く感じられる。
ステラの心の中で、今はただ「弟」という新しい存在が占めている。その存在が、まるで自分の気持ちの中に無理に押し込まれたような不快さをもたらしている。
妹が欲しかった。妹がいれば、もっと楽しい未来が待っていたのに。けれど今は予想もしなかった弟という現実に直面し、どこか心が曇ったままだった。
◆
学校から帰ってきたステラは静かに工房の扉を開け、そのまま黙って部屋の中に足を踏み入れた。
木の床に足音を立てないように気を使いながら、ゆっくりとケルヴィンの方へ近づいていく。彼は作業台の前でいくつかの小瓶を整理している。木箱の中から瓶を取り出して中身を確認し、うんざりしたようにため息をつく。
ステラが少しずつ彼に近づくと、ケルヴィンは無意識のうちに視線を上げ、気づいた様子を見せるがすぐにまた瓶の中身に目を戻した。
彼の背中にやや緊張が走り、無言のまま作業を続けている。ステラはその背中をじっと見つめ、言葉を発しなかった。ただ静かな空気が流れる。
ケルヴィンはその気配に少し困ったように作業をしながらぼやくように呟いた。
「これ違う奴だ……交換してもらうか」
その時、ステラは突然ケルヴィンの袖を引っ張り、真剣な顔で一言を放った。
「赤ちゃんも……交換してもらえるの?」
その無邪気で、しかもどこか不穏な響きのある質問にケルヴィンは思わず手を止めた。彼は一瞬、目を見開き、驚いた表情を浮かべながらステラを見つめる。その意味がじわじわと理解されると背筋に冷たいものを感じ、背後に冷気が走った。
「な、なに言ってんの」
戸惑いを隠せず、ケルヴィンは思わずステラから少しだけ距離を取る。その動きに、ステラは微動だにせず、真剣なまなざしで彼を見つめ続けていた。
彼女はただそのまま目をぱちぱちと瞬かせているだけだった。ケルヴィンはその無邪気な瞳に一瞬だけ言葉を失う
「それは絶対にアステルさんには言うんじゃないよ。それに、兄弟が欲しいって言ったのはステラだろう?」
ケルヴィンは大きくため息をつきながら、少し冷ややかな声で注意をするとステラはその言葉を受けて、少し下を向きながらぽつりと答えた。
「だってステラ、妹がよかったのに……弟だったし……」
その言葉にはどこか寂しさと落胆が滲んでいる。きっと彼女は「妹」という期待を抱えていたものの、それが突然「弟」になったことで心の中に無理な違和感を覚えているのだろう。
「とにかくお姉さんになるんだから、弟を可愛がってあげないと」
ケルヴィンが作業に戻るとステラは眉をひそめ、顔をしかめた。彼女は駄々をこねるように口をとがらせ、声を絞り出す。
「だって……弟、かわいくない……」
駄々をこねるようにそう言った瞬間、ステラのお腹が「ぐーっ」と大きな音を立てた。
その音に、ケルヴィンは吹き出してしまう。ステラは顔を真っ赤にしてお腹を押さえながら、恥ずかしそうに目を逸らした。そして、むすっとした表情を浮かべて無言で工房を出て行くのであった。
シリウスとステラは静かに並んで座っていた。シリウスは時折、ステラの横顔を気にしながら、言葉を探していた。
「ステラ。弟の名前、どうする?」
やわらかな声で声をかけたがステラはその問いに答えることなく、ただ外の景色を無言で見つめていた。目の前の風景が流れていく中、彼女の表情は変わらない。顔を上げることなく、しばらくしてからぽつりとつぶやいた。
「お父さんが考えて」
その声はどこか冷たく、感情がこもっていないように感じられた。ステラの肩は少し落ちており、普段の彼女の元気さがどこかに消えてしまったように見えた。窓の外に目を向けたまま、何かを考えているような、ただ現実に引き戻されているような、そんな背中だ。
「そうか……ステラの考えも聞きたいんだが」
少しでもステラの気持ちを引き出したいと思い、シリウスは優しく促した。だが、ステラの返事はまたしても予想通り、冷たいものだった。
「わかんない」
その言葉はシリウスの心にずしりと重く響いた。彼女の瞳はどこか遠くを見つめているようで、まるで自分の存在がそこにはないかのように、沈黙が続いた。
シリウスは気づいていた。ステラの心にはまだ消化しきれていない何かがあるのだろう。妹がほしいという強い願いを抱いていた彼女にとって、弟の誕生はきっと大きなショックだったに違いない。期待と現実のギャップが壁を作っている。
シリウスは少しでも娘の気持ちを和らげようと、手を伸ばして静かに肩に触れた。温かい手のひらが肩に乗るとステラは微かに体を震わせる。シリウスはその小さな反応に心が痛み、さらに声をかける。
「ステラ、無理にでも話してくれ。俺はちゃんと知りたいんだ」
その言葉が、ステラの心に届いてくれたならいいのだが、とシリウスは期待を込めて声をかけた。しかし、ステラはしばらく黙ったまま、静かに呼吸を整えているようだった。やがて、ほんの少しだけ顔を上げると、彼女の目はどこか遠く、そして少し寂しげに見えた。
「妹がよかったの……」
「そうか……」
シリウスはそれ以上、何も言えなかった。その気持ちを受け止めながら、その小さな肩を優しく抱き寄せた。ステラは抵抗することなくその胸に頭を預け、自分の三つ編みを弄りだす。
今更性別は変えられない。これはステラが受け入れていかなければならない現実だ。その痛みを和らげるため、シリウスはただ黙って娘の頭を撫でた。
◆
学校に行き、ステラが教室の扉を開けるとすぐに半獣人のレオがにこやかな笑顔を浮かべて近づいてきて、レオは元気よく声をかけた。
「ステラ、赤ちゃん産まれたんだって?妹ができたんだよな!」
「ううん…妹じゃなくて、弟だったの」
元気の無いステラの言葉にレオは驚いたように目を見開き、軽く首をかしげた。しばらくそのまま二人はお互いを見つめ合っていたが、すぐにレオは励ますように言った。
「いいじゃん弟!俺も弟欲しいし!」
ステラはその言葉に対して、少し不満げに目を伏せると、うつむきながら答えた。
「それはレオが男の子だからでしょ」
声に少しだけ冷たさが混じり、口調がわずかに硬くなった。レオの反応がまったく無自覚なことに、ステラはますます心の中でため息をつく。
彼の軽い言葉に少し苛立ちながらも、心の中で自分の気持ちが整理できないことに気づいていた。
レオのせいでステラは同い年の男の子が少し苦手だ。シリウスを父親にしたいと言っていたこともあるが、なんだか強引で、わからないことも多い。だから男の子である弟よりも妹が欲しかった。
ステラの様子にレオは全く気づくことなく、話を続ける。
「そういえばさ、俺に新しいお父さんができるかもしれないんだ」
「ふーん……」
レオの声は耳に届いているはずなのにその内容がどこか遠く、ぼんやりとして聞こえる。目の前にいるレオが話していることがどうしても心の中に響いてこない。
頭の中で浮かぶのは目の前に横たわる現実、弟という新たな家族の姿ばかりだった。どこか、レオの話の一つ一つが霞んで見え、彼の存在すらも次第に遠く感じられる。
ステラの心の中で、今はただ「弟」という新しい存在が占めている。その存在が、まるで自分の気持ちの中に無理に押し込まれたような不快さをもたらしている。
妹が欲しかった。妹がいれば、もっと楽しい未来が待っていたのに。けれど今は予想もしなかった弟という現実に直面し、どこか心が曇ったままだった。
◆
学校から帰ってきたステラは静かに工房の扉を開け、そのまま黙って部屋の中に足を踏み入れた。
木の床に足音を立てないように気を使いながら、ゆっくりとケルヴィンの方へ近づいていく。彼は作業台の前でいくつかの小瓶を整理している。木箱の中から瓶を取り出して中身を確認し、うんざりしたようにため息をつく。
ステラが少しずつ彼に近づくと、ケルヴィンは無意識のうちに視線を上げ、気づいた様子を見せるがすぐにまた瓶の中身に目を戻した。
彼の背中にやや緊張が走り、無言のまま作業を続けている。ステラはその背中をじっと見つめ、言葉を発しなかった。ただ静かな空気が流れる。
ケルヴィンはその気配に少し困ったように作業をしながらぼやくように呟いた。
「これ違う奴だ……交換してもらうか」
その時、ステラは突然ケルヴィンの袖を引っ張り、真剣な顔で一言を放った。
「赤ちゃんも……交換してもらえるの?」
その無邪気で、しかもどこか不穏な響きのある質問にケルヴィンは思わず手を止めた。彼は一瞬、目を見開き、驚いた表情を浮かべながらステラを見つめる。その意味がじわじわと理解されると背筋に冷たいものを感じ、背後に冷気が走った。
「な、なに言ってんの」
戸惑いを隠せず、ケルヴィンは思わずステラから少しだけ距離を取る。その動きに、ステラは微動だにせず、真剣なまなざしで彼を見つめ続けていた。
彼女はただそのまま目をぱちぱちと瞬かせているだけだった。ケルヴィンはその無邪気な瞳に一瞬だけ言葉を失う
「それは絶対にアステルさんには言うんじゃないよ。それに、兄弟が欲しいって言ったのはステラだろう?」
ケルヴィンは大きくため息をつきながら、少し冷ややかな声で注意をするとステラはその言葉を受けて、少し下を向きながらぽつりと答えた。
「だってステラ、妹がよかったのに……弟だったし……」
その言葉にはどこか寂しさと落胆が滲んでいる。きっと彼女は「妹」という期待を抱えていたものの、それが突然「弟」になったことで心の中に無理な違和感を覚えているのだろう。
「とにかくお姉さんになるんだから、弟を可愛がってあげないと」
ケルヴィンが作業に戻るとステラは眉をひそめ、顔をしかめた。彼女は駄々をこねるように口をとがらせ、声を絞り出す。
「だって……弟、かわいくない……」
駄々をこねるようにそう言った瞬間、ステラのお腹が「ぐーっ」と大きな音を立てた。
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