92 / 104
ダークエルフの誘惑編
架け橋
しおりを挟む
戦の終息を告げる凱旋の日。震えるような歓声とともに、騎士団が帰還した。街の広場には多くの人々が集まり、戦場から無事に帰った騎士たちを迎えるために華やかな装飾が施されている。
特にガレットの率いる部隊はその功績が目覚ましく、戦場で幾度となく功を奏し、名を馳せた。その名はすでに広まり、帰国の途上でも多くの者が彼らを讃え、賞賛の声を上げた。
だがその中でも、シリウスの帰還は格別だった。彼は戦場での激しい戦いの傷をものともせず、堂々とした姿で凱旋した。
その姿には、戦の疲れなど微塵も見えず、逆に長い戦の間に養われた精神力と無事に帰ってきたという安堵の表情が滲んでいた。幾多の戦を乗り越え、目の前に広がる平和な光景を見て、その胸は満ち足りた感情でいっぱいだ。
「アステル、ステラ」
シリウスはまず、最も大切な者たちに会いに行く。家族のもとに足を踏み入れると、アステルとステラが待っていた。二人はシリウスを見つけると、笑顔を浮かべてその元へ駆け寄る。
「おかえりなさい、シリウス」
アステルは微笑みながら、彼を迎えた。その瞬間、シリウスの心は温かさで満たされ、長く続いた戦の疲れが一瞬で癒されるような気がした。
「お父さん、とってもカッコよかった!」
ステラもシリウスの腕の中に飛び込むようにして抱きついた。小さな娘の笑顔にシリウスは自然と顔をほころばせて愛おしそうにステラを強く抱きしめる。
「ステラの笑顔が俺にとっては一番の勲章だ」
「くんしょー?」
シリウスはそう言いながら、再び笑顔を見せるステラに頬を寄せた。
「カレンも二人を守ってくれてありがとう」
「ああ、ええ、まあ……」
ガレットと再会を喜んでいたカレンに礼を伝えると彼女は気まずそうな態度でシリウスから視線を逸らした。
アステルとステラをヴェラから守ってやってほしいと頼まれたのに肝心のアステルが勝手に治療をして、お見舞いまでやっていただなんて言えない。だがそんなことがシリウスの耳に入っていないはずもなく……
「……あの女に会ったんだな」
シリウスはステラを抱きしめたまま静かに、しかししっかりとアステルを見つめて言った。
「あ、はい……」
「エルフなのにダークエルフを助けるだなんてアステルはやはりどうかしている」
アステルは彼の言葉を受けて少ししおらしくなり、申し訳なさそうに目を伏せた。しかし、シリウスは責めるような言い方はしなかった。彼の言葉には、どこか諦めのようなものが感じられる。
かつて自分もアステルに看病してもらった。彼女がどんな思いでヴェラを助けたのかシリウスにはわかる。アステルがそんなエルフだからシリウスは今ここに立っているのだから。
「だがそのお陰で平和的に解決できそうだ。これも運命だろう」
カレンの隣で黙って聞いていたガレットは少し微笑んで肩の力を抜いて声をかけるとアステルは驚いたようにガレットを見る。
「どういうことですか?」
自分がもっと責められるのではないかと思っていたアステルはその言葉に耳を疑った。
◆
ガレットの屋敷の広々とした応接室で重厚な空気を漂わせていた。静かな空気の中、アステルは少し緊張した面持ちで椅子に腰掛けていた。
ちなみにステラは久々に帰って来た父親をもっと独り占めしたい様子だったがカレンに息子の面倒を見てほしいと言われて渋々と子供部屋に連れて行かれている。
騎士団は巨大な人身売買組織を壊滅させるために立ち上がり、その拠点を徹底的に潰した。組織が支配していた場所には、数多くの命が奪われ、沢山の人々が苦しんでいたが、シリウスたちはその惨劇を止めることができた。
さらに組織がダークエルフの里を襲うという危機が迫る中、ギリギリで駆けつけ、里を守り抜くことに成功。彼らの迅速な対応と戦術によって、里の人々を守り、ダークエルフとの信頼を築く一歩を踏み出したと説明を受ける。
報告を受けたヴェラはそこに駆けつける前に力尽きてしまったことも教えられた。
「ダークエルフの問題、私も模索し続けていたんだ」
ガレットが静かに言葉を切った。彼の声には静かな決意が宿っていた。アステルは目を見開き、興味と感謝を入り混ぜた表情で答える。
「そうだったのですか……ありがとうございます」
ガレットは頷き、紅茶をゆっくりと口に含む。その所作は、まるで大きな決断を下した後のように落ち着いていて同時に何か重い言葉を続ける準備をしているかのようだった。
「我々としてもシリウスを失いたくない」
シリウスの能力の高さを失うのはあまりにも軍の損失になる。それ以上にガレットにとってシリウスを大切な部下なのだ。
「前に君を襲ったダークエルフ、ノワールを捕虜にしていた。彼をシリウスの代わりに里に送ろうと思っている」
その名を聞いた瞬間、アステルの背筋を冷たいものが走った。かつて奴隷商人に引き渡され、絶望的な状況に追い込んだあの男の顔が脳裏に浮かぶ。その記憶がアステルの心を強くかき乱す。
「安心しろ、アステル。お前には二度とあのダークエルフとは会わせない」
シリウスの言葉はアステルにとって何よりの安堵だった。彼の目には、怒りと覚悟がひしひしと感じられる。アステルはほんの少しだけ気持ちが少し軽くなるのを感じた。
「我が国と契約を結ぶことを約束させ、彼女らの里に引き渡そうと考えている」
ガレットは冷静に話を続ける。彼の表情には計画の成功を確信しているような強い意志が宿っていた。
「ノワールを解放するための条件として俺が高い功績を挙げることになっていた」
「そうだったの……」
シリウスがそう言うとその意味をアステルはすぐに理解した。つまり、今回の戦いでシリウスが大きな役割を果たし、その功績があって初めてノワールの解放が実現したというわけだ。戦場での奮闘がこの結末を導いたのだと。
「国からの承認を得られれば、私がシリウスに代わってノワールを連れてダークエルフの里に向かうだろう」
ガレットが言ったその言葉にアステルは驚いた。シリウスに代わってガレットが行くとは。彼がどれほどシリウスを大切に思い覚悟を持っているのか、それが伝わってくる。
「ガレットさんにそこまでしてもらうだなんて……」
アステルは感謝と驚きの入り混じった表情で言葉を続けた。シリウスは少し顔をしかめながらも、どこか申し訳なさそうな顔をしている。
「俺も行くと言ったのだが……」
「シリウスが行くのは止めた方がいい。何があるのかわからない」
ガレットは真剣な表情でシリウスに向き直る。その目は、シリウスが万が一、ダークエルフの里で捕まってしまうリスクを恐れているようだった。契約を無んだとはいえ足を踏み五入れればどんな危険が待ち受けているか予測がつかない。アステルもその心配には頷かざるを得なかった。
「そして、ノワールを解放するだけでなく、定期的に様子を見に行くことも条件となっている」
「本当にありがとうございます。ガレットさん」
「貴女があのダークエルフの女性を助けたことでこの話は想定よりも上手くまとまりそうなのだ。こちらこそ感謝している」
ガレットは軽く微笑み、首を横に振ると、再び紅茶を口に含んだ。そして、話は続く。
「先程も言ったように、シリウスはこの国にとって必要な存在だ」
その言葉にシリウスがこの国にとって欠かせない存在であり、ガレットが彼の友人として支えていることが伝わってきた。
「そして私は彼の友人でもある」
アステルはふとシリウスを見た。「友人」と呼ばれた彼は照れたように目を逸らしており、アステルは何とも言えない微笑みを浮かべていた。
未来が少しずつ、良い方向へと進んでいると感じる。ダークエルフの問題はまだ解決したわけではないが、希望が見えてきたのだ。
特にガレットの率いる部隊はその功績が目覚ましく、戦場で幾度となく功を奏し、名を馳せた。その名はすでに広まり、帰国の途上でも多くの者が彼らを讃え、賞賛の声を上げた。
だがその中でも、シリウスの帰還は格別だった。彼は戦場での激しい戦いの傷をものともせず、堂々とした姿で凱旋した。
その姿には、戦の疲れなど微塵も見えず、逆に長い戦の間に養われた精神力と無事に帰ってきたという安堵の表情が滲んでいた。幾多の戦を乗り越え、目の前に広がる平和な光景を見て、その胸は満ち足りた感情でいっぱいだ。
「アステル、ステラ」
シリウスはまず、最も大切な者たちに会いに行く。家族のもとに足を踏み入れると、アステルとステラが待っていた。二人はシリウスを見つけると、笑顔を浮かべてその元へ駆け寄る。
「おかえりなさい、シリウス」
アステルは微笑みながら、彼を迎えた。その瞬間、シリウスの心は温かさで満たされ、長く続いた戦の疲れが一瞬で癒されるような気がした。
「お父さん、とってもカッコよかった!」
ステラもシリウスの腕の中に飛び込むようにして抱きついた。小さな娘の笑顔にシリウスは自然と顔をほころばせて愛おしそうにステラを強く抱きしめる。
「ステラの笑顔が俺にとっては一番の勲章だ」
「くんしょー?」
シリウスはそう言いながら、再び笑顔を見せるステラに頬を寄せた。
「カレンも二人を守ってくれてありがとう」
「ああ、ええ、まあ……」
ガレットと再会を喜んでいたカレンに礼を伝えると彼女は気まずそうな態度でシリウスから視線を逸らした。
アステルとステラをヴェラから守ってやってほしいと頼まれたのに肝心のアステルが勝手に治療をして、お見舞いまでやっていただなんて言えない。だがそんなことがシリウスの耳に入っていないはずもなく……
「……あの女に会ったんだな」
シリウスはステラを抱きしめたまま静かに、しかししっかりとアステルを見つめて言った。
「あ、はい……」
「エルフなのにダークエルフを助けるだなんてアステルはやはりどうかしている」
アステルは彼の言葉を受けて少ししおらしくなり、申し訳なさそうに目を伏せた。しかし、シリウスは責めるような言い方はしなかった。彼の言葉には、どこか諦めのようなものが感じられる。
かつて自分もアステルに看病してもらった。彼女がどんな思いでヴェラを助けたのかシリウスにはわかる。アステルがそんなエルフだからシリウスは今ここに立っているのだから。
「だがそのお陰で平和的に解決できそうだ。これも運命だろう」
カレンの隣で黙って聞いていたガレットは少し微笑んで肩の力を抜いて声をかけるとアステルは驚いたようにガレットを見る。
「どういうことですか?」
自分がもっと責められるのではないかと思っていたアステルはその言葉に耳を疑った。
◆
ガレットの屋敷の広々とした応接室で重厚な空気を漂わせていた。静かな空気の中、アステルは少し緊張した面持ちで椅子に腰掛けていた。
ちなみにステラは久々に帰って来た父親をもっと独り占めしたい様子だったがカレンに息子の面倒を見てほしいと言われて渋々と子供部屋に連れて行かれている。
騎士団は巨大な人身売買組織を壊滅させるために立ち上がり、その拠点を徹底的に潰した。組織が支配していた場所には、数多くの命が奪われ、沢山の人々が苦しんでいたが、シリウスたちはその惨劇を止めることができた。
さらに組織がダークエルフの里を襲うという危機が迫る中、ギリギリで駆けつけ、里を守り抜くことに成功。彼らの迅速な対応と戦術によって、里の人々を守り、ダークエルフとの信頼を築く一歩を踏み出したと説明を受ける。
報告を受けたヴェラはそこに駆けつける前に力尽きてしまったことも教えられた。
「ダークエルフの問題、私も模索し続けていたんだ」
ガレットが静かに言葉を切った。彼の声には静かな決意が宿っていた。アステルは目を見開き、興味と感謝を入り混ぜた表情で答える。
「そうだったのですか……ありがとうございます」
ガレットは頷き、紅茶をゆっくりと口に含む。その所作は、まるで大きな決断を下した後のように落ち着いていて同時に何か重い言葉を続ける準備をしているかのようだった。
「我々としてもシリウスを失いたくない」
シリウスの能力の高さを失うのはあまりにも軍の損失になる。それ以上にガレットにとってシリウスを大切な部下なのだ。
「前に君を襲ったダークエルフ、ノワールを捕虜にしていた。彼をシリウスの代わりに里に送ろうと思っている」
その名を聞いた瞬間、アステルの背筋を冷たいものが走った。かつて奴隷商人に引き渡され、絶望的な状況に追い込んだあの男の顔が脳裏に浮かぶ。その記憶がアステルの心を強くかき乱す。
「安心しろ、アステル。お前には二度とあのダークエルフとは会わせない」
シリウスの言葉はアステルにとって何よりの安堵だった。彼の目には、怒りと覚悟がひしひしと感じられる。アステルはほんの少しだけ気持ちが少し軽くなるのを感じた。
「我が国と契約を結ぶことを約束させ、彼女らの里に引き渡そうと考えている」
ガレットは冷静に話を続ける。彼の表情には計画の成功を確信しているような強い意志が宿っていた。
「ノワールを解放するための条件として俺が高い功績を挙げることになっていた」
「そうだったの……」
シリウスがそう言うとその意味をアステルはすぐに理解した。つまり、今回の戦いでシリウスが大きな役割を果たし、その功績があって初めてノワールの解放が実現したというわけだ。戦場での奮闘がこの結末を導いたのだと。
「国からの承認を得られれば、私がシリウスに代わってノワールを連れてダークエルフの里に向かうだろう」
ガレットが言ったその言葉にアステルは驚いた。シリウスに代わってガレットが行くとは。彼がどれほどシリウスを大切に思い覚悟を持っているのか、それが伝わってくる。
「ガレットさんにそこまでしてもらうだなんて……」
アステルは感謝と驚きの入り混じった表情で言葉を続けた。シリウスは少し顔をしかめながらも、どこか申し訳なさそうな顔をしている。
「俺も行くと言ったのだが……」
「シリウスが行くのは止めた方がいい。何があるのかわからない」
ガレットは真剣な表情でシリウスに向き直る。その目は、シリウスが万が一、ダークエルフの里で捕まってしまうリスクを恐れているようだった。契約を無んだとはいえ足を踏み五入れればどんな危険が待ち受けているか予測がつかない。アステルもその心配には頷かざるを得なかった。
「そして、ノワールを解放するだけでなく、定期的に様子を見に行くことも条件となっている」
「本当にありがとうございます。ガレットさん」
「貴女があのダークエルフの女性を助けたことでこの話は想定よりも上手くまとまりそうなのだ。こちらこそ感謝している」
ガレットは軽く微笑み、首を横に振ると、再び紅茶を口に含んだ。そして、話は続く。
「先程も言ったように、シリウスはこの国にとって必要な存在だ」
その言葉にシリウスがこの国にとって欠かせない存在であり、ガレットが彼の友人として支えていることが伝わってきた。
「そして私は彼の友人でもある」
アステルはふとシリウスを見た。「友人」と呼ばれた彼は照れたように目を逸らしており、アステルは何とも言えない微笑みを浮かべていた。
未来が少しずつ、良い方向へと進んでいると感じる。ダークエルフの問題はまだ解決したわけではないが、希望が見えてきたのだ。
60
お気に入りに追加
495
あなたにおすすめの小説
【完結】番(つがい)でした ~美しき竜人の王様の元を去った番の私が、再び彼に囚われるまでのお話~
tea
恋愛
かつて私を妻として番として乞い願ってくれたのは、宝石の様に美しい青い目をし冒険者に扮した、美しき竜人の王様でした。
番に選ばれたものの、一度は辛くて彼の元を去ったレーアが、番であるエーヴェルトラーシュと再び結ばれるまでのお話です。
ヒーローは普段穏やかですが、スイッチ入るとややドS。
そして安定のヤンデレさん☆
ちょっぴり切ない、でもちょっとした剣と魔法の冒険ありの(私とヒロイン的には)ハッピーエンド(執着心むき出しのヒーローに囚われてしまったので、見ようによってはメリバ?)のお話です。
別サイトに公開済の小説を編集し直して掲載しています。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています
水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。
森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。
公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。
◇画像はGirly Drop様からお借りしました
◆エール送ってくれた方ありがとうございます!
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【掌編集】今までお世話になりました旦那様もお元気で〜妻の残していった離婚受理証明書を握りしめイケメン公爵は涙と鼻水を垂らす
まほりろ
恋愛
新婚初夜に「君を愛してないし、これからも愛するつもりはない」と言ってしまった公爵。
彼は今まで、天才、美男子、完璧な貴公子、ポーカーフェイスが似合う氷の公爵などと言われもてはやされてきた。
しかし新婚初夜に暴言を吐いた女性が、初恋の人で、命の恩人で、伝説の聖女で、妖精の愛し子であったことを知り意気消沈している。
彼の手には元妻が置いていった「離婚受理証明書」が握られていた……。
他掌編七作品収録。
※無断転載を禁止します。
※朗読動画の無断配信も禁止します
「Copyright(C)2023-まほりろ/若松咲良」
某小説サイトに投稿した掌編八作品をこちらに転載しました。
【収録作品】
①「今までお世話になりました旦那様もお元気で〜ポーカーフェイスの似合う天才貴公子と称された公爵は、妻の残していった離婚受理証明書を握りしめ涙と鼻水を垂らす」
②「何をされてもやり返せない臆病な公爵令嬢は、王太子に竜の生贄にされ壊れる。能ある鷹と天才美少女は爪を隠す」
③「運命的な出会いからの即日プロポーズ。婚約破棄された天才錬金術師は新しい恋に生きる!」
④「4月1日10時30分喫茶店ルナ、婚約者は遅れてやってきた〜新聞は星座占いを見る為だけにある訳ではない」
⑤「『お姉様はズルい!』が口癖の双子の弟が現世の婚約者! 前世では弟を立てる事を親に強要され馬鹿の振りをしていましたが、現世では奴とは他人なので天才として実力を充分に発揮したいと思います!」
⑥「婚約破棄をしたいと彼は言った。契約書とおふだにご用心」
⑦「伯爵家に半世紀仕えた老メイドは伯爵親子の罠にハマり無一文で追放される。老メイドを助けたのはポーカーフェイスの美女でした」
⑧「お客様の中に褒め褒めの感想を書ける方はいらっしゃいませんか? 天才美文感想書きVS普通の少女がえんぴつで書いた感想!」
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる