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ダークエルフの誘惑編
禁断の交渉
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数日後、まだ雨が止まないが工房の中は薬草の香りと静かな作業音に包まれていた。
アステルはテーブルの上に並べられた薬草を慎重に選び、次々と丁寧に刻んでいく。彼女の手際は熟練のもので、動きの一つ一つには、集中力が漲っていた。
ケルヴィンは目の前の材料を手際よく扱いながら、まだ不器用さを残す若い手で一生懸命に作業を進めていた。
彼はアステルの指導を受け、着実に成長を遂げていたが時折表情に不安の影を見せる。
「ケルヴィン、大きな戦いが近づいているかもしれないから、今のうちにたくさん回復薬を作っておきましょうか」
アステルはそう言いながら、薬を調合するための器具を整えた。彼女の心には緊張感が漂い、シリウスや道具屋アリサからの情報から自分にできることを行っている。
「それは……戦争ですか?」
ケルヴィンが顔を曇らせる。彼の声には、不安が滲んでいた。
「詳しいことはわからないけれど戦争ではないみたい」
アステルは言葉を選びながら続けた。わかることはシリウス抜きの騎士団では戦うのが難しいと早々に現場に駆り出される予定だ。
元々、シリウスは長い休みを取っていたがそのことが快く思われていなかったことも知っている。
シリウスは騎士団にとって重要なものであることが明らかだった。その存在は単なる力だけでなく、仲間たちの士気にも深く関わっている。
「だから私たちができることを精一杯やらなきゃいけないの」
アステルは強い口調で言った。彼女の言葉は自分自身を奮い立たせるためのものでもある。
「シリウスさんがいない間はどうなってしまうんですか?」
ケルヴィンは心配そうに顔を曇らせ、言葉を続けた。その問いには、彼の心の奥に潜む不安が色濃く映し出されている。
「シリウスがいない間は私たちの安全は保証されない。だからしばらくの間はガレットさんの屋敷で世話になれと言われているの」
シリウスがガレットを頼るしかなかった理由を思い起こし、彼女は少しだけ胸が痛むが「必要な時に頼れる場所があるのは心強いわね」とアステルは続けた。
彼女の言葉にはシリウスの心の重荷を軽くする意図が込められている。シリウスはいつも他者を思いやり、自分のことは後回しにしているからだ。
(シリウスは大丈夫かしら)
その時、ふと頭の中に浮かんだのは、あの日のことだった。
あの日、雨が止み、雲間から月が顔を覗かせる夜空を見上げていたシリウスの姿。彼は静かに窓の外を見つめながら、眠る準備をしているアステルに向かって静かに決意を告げていた。
「今度、あの女と直接交渉することに決めた」
「解決策は見つかったの?」
アステルはその言葉に驚いた様子で顔を上げた。彼女の声には期待と不安が交錯している。
「いや……まだだ。俺にその気がないことを伝えることしかできない」
シリウスは素直に答えた。自分の心の中で思い描く道筋はまだ不明瞭だが、彼は行動を起こすことが重要だと感じていたようだ。
「そう……でも無理だけはしないでね」
アステルは優しい目で見つめる。彼女のその言葉にはシリウスへの深い理解と愛情が込められていた。自分の決意を静かに受け止めるその表情は彼にとって何よりも力強い励ましだ。
◆
シリウスが家の前で雨に濡れた地面を見つめながら待っていると黒いフードを被った女、ヴェラが近づいてきた。
彼女の姿はしっとりとした雨に濡れ、まるで神秘的な影のように見える。
「我らの里に来てくれるのですか?」
彼女の声は静かで落ち着いていたがその問いかけには冷たい鋭さがあったが「そんなわけないだろう」とシリウスは無愛想に返した。
警戒心を抱きつつも、彼女の意図を見極めようとする眼差しを向ける。ヴェラが本当に危害を加えないつもりなのか、それとも彼女の背後には何か暗い意図が潜んでいるのか。心の中にざわめく不安が彼を一層、警戒させる。
「場所を変えよう」
先にシリウスが提案し、二人は静かな喫茶店へと足を運んだ。
雨音が薄れ、店内はほのかに漂うコーヒーの香りに包まれている。ヴェラがフードを外すと褐色の肌と銀色の長い髪が露わになり、周りの客が彼女を一瞬見つめた。その視線を気にせずにシリウスは黙って空いた席に座る。
「それで要件は何でしょうか?」
「俺は里に行かないと里に伝えてくれ」
ヴェラも座りながら尋ねると、シリウスは自身の要求を告げた。
「それはできません」
「何故だ?」
淡々と受け答えをするヴェラに対してシリウスの声には不満が滲んでいる。
「貴方を連れて来ないと里に帰ることができませんから」
彼女の毅然とした態度にシリウスは内心の動揺を感じる。今の状態の彼女には帰る故郷がないのだ。その事情を察しつつも首を縦には振れなかった。
「それでも俺は里には行かない。他のダークエルフを当たってくれ」
「どこにいるのですか?」
「知らん。だが探せば見つかる。確か……」
ヴェラの問いかけにシリウスは面倒くさそうに答える。ダークエルフの数はこの世界で希少だが、前にアステルを拉致したノワールのようなダークエルフもこの世界のどこかにいるとシリウスは教えてやる。
だがヴェラは俯いて考え込んでから、静かに問いを続けた。
「……本当に貴方は自分の意思でここを出る気はないのですか?」
その問いに対し、シリウスは小さく首を振る。これ以上断り続ければ彼女は実力行使に出るかもしれないと警戒をしていた。
「この国では貴方の功績に対して随分と不相応の評価を受けているようですね」
「不相応だと?」
シリウスの驚きにヴェラは強い意志をもって首を縦に振った。
「高い戦闘能力を持つ貴方はこの国にとって重要な人材です。そんな貴方にこの国はダークエルフだと差別し、不当な評価を下されています。それはおかしいことです」
彼女の目には、同胞への強い愛情が宿っていた。シリウスは彼女の意外な一面を見つけ、少し驚く。
しかし、シリウスは今の待遇に不満を感じたことはない。
ガレットが手厚く援助をしてくれて、同僚とも打ち解け、何よりアステルとステラが側にいるからだ。
「シリウス殿はもっと評価されるべきです。我が里に来てくだされば、里の者が全員、貴方を丁重に扱うでしょう」
「俺は今の待遇に満足している。何よりこの国のことが気に入っている。離れるつもりはない」
シリウスはそう言いながら注文したコーヒーがテーブルに置かれるとそのまま飲もうとするが
「ではこうしましょう。貴方がここを離れないのならば、我々がここに来て抱いてもらい、子種だけを受け取ります」
「は……?」
シリウスはコーヒーカップを持ったまま言葉を失った。ヴェラが何を言っているのか理解できず、頭が混乱する。
アステル以外の女を抱きたくないからこそ里への訪問を拒んでいるのに彼女たちはわざわざこちらに来て子種だけもらおうとしているのだ。
「そうすれば貴方は里に来る必要はなくなります」
「なぜそうなる……?」
「それが一番穏便な解決法だからです」
彼女の言葉には何の迷いもなく、まるでそれが常識であるかのように響いた。
それに対してシリウスはコーヒーカップを置くと頭痛がして、額を押さえた。
これは体調が悪いのではなく、価値観の違いに眩暈がしているからだ。彼の心の中で混乱と嫌悪が渦巻いている。
「さあ、シリウス殿」
ヴェラは素早く立ち上がると彼の傍に寄り、褐色の手で彼の肩にそっと触れる。その瞬間、シリウスの背筋に冷たい恐怖が走った。
「やめろ!」
その手を振り払うとヴェラを睨みつけた。周りの客が驚いて二人のやりとりを見ているがシリウスは気に留めなかった。
「もう帰ってくれ、そして二度とこの国に来るな」
「シリウス殿」
「これは警告だ。もし再び現れたら……その時は容赦しない」
殺気を込めてシリウスはそれだけ言い放つと、テーブルに二人分の飲み物の代金を置き、席を立って店を出た。
外の雨が一層激しさを増し、彼の心の中の混乱を象徴するかのように打ちつける。シリウスは冷たい雨の中、再び自分の居場所に戻るために歩き出した。
アステルはテーブルの上に並べられた薬草を慎重に選び、次々と丁寧に刻んでいく。彼女の手際は熟練のもので、動きの一つ一つには、集中力が漲っていた。
ケルヴィンは目の前の材料を手際よく扱いながら、まだ不器用さを残す若い手で一生懸命に作業を進めていた。
彼はアステルの指導を受け、着実に成長を遂げていたが時折表情に不安の影を見せる。
「ケルヴィン、大きな戦いが近づいているかもしれないから、今のうちにたくさん回復薬を作っておきましょうか」
アステルはそう言いながら、薬を調合するための器具を整えた。彼女の心には緊張感が漂い、シリウスや道具屋アリサからの情報から自分にできることを行っている。
「それは……戦争ですか?」
ケルヴィンが顔を曇らせる。彼の声には、不安が滲んでいた。
「詳しいことはわからないけれど戦争ではないみたい」
アステルは言葉を選びながら続けた。わかることはシリウス抜きの騎士団では戦うのが難しいと早々に現場に駆り出される予定だ。
元々、シリウスは長い休みを取っていたがそのことが快く思われていなかったことも知っている。
シリウスは騎士団にとって重要なものであることが明らかだった。その存在は単なる力だけでなく、仲間たちの士気にも深く関わっている。
「だから私たちができることを精一杯やらなきゃいけないの」
アステルは強い口調で言った。彼女の言葉は自分自身を奮い立たせるためのものでもある。
「シリウスさんがいない間はどうなってしまうんですか?」
ケルヴィンは心配そうに顔を曇らせ、言葉を続けた。その問いには、彼の心の奥に潜む不安が色濃く映し出されている。
「シリウスがいない間は私たちの安全は保証されない。だからしばらくの間はガレットさんの屋敷で世話になれと言われているの」
シリウスがガレットを頼るしかなかった理由を思い起こし、彼女は少しだけ胸が痛むが「必要な時に頼れる場所があるのは心強いわね」とアステルは続けた。
彼女の言葉にはシリウスの心の重荷を軽くする意図が込められている。シリウスはいつも他者を思いやり、自分のことは後回しにしているからだ。
(シリウスは大丈夫かしら)
その時、ふと頭の中に浮かんだのは、あの日のことだった。
あの日、雨が止み、雲間から月が顔を覗かせる夜空を見上げていたシリウスの姿。彼は静かに窓の外を見つめながら、眠る準備をしているアステルに向かって静かに決意を告げていた。
「今度、あの女と直接交渉することに決めた」
「解決策は見つかったの?」
アステルはその言葉に驚いた様子で顔を上げた。彼女の声には期待と不安が交錯している。
「いや……まだだ。俺にその気がないことを伝えることしかできない」
シリウスは素直に答えた。自分の心の中で思い描く道筋はまだ不明瞭だが、彼は行動を起こすことが重要だと感じていたようだ。
「そう……でも無理だけはしないでね」
アステルは優しい目で見つめる。彼女のその言葉にはシリウスへの深い理解と愛情が込められていた。自分の決意を静かに受け止めるその表情は彼にとって何よりも力強い励ましだ。
◆
シリウスが家の前で雨に濡れた地面を見つめながら待っていると黒いフードを被った女、ヴェラが近づいてきた。
彼女の姿はしっとりとした雨に濡れ、まるで神秘的な影のように見える。
「我らの里に来てくれるのですか?」
彼女の声は静かで落ち着いていたがその問いかけには冷たい鋭さがあったが「そんなわけないだろう」とシリウスは無愛想に返した。
警戒心を抱きつつも、彼女の意図を見極めようとする眼差しを向ける。ヴェラが本当に危害を加えないつもりなのか、それとも彼女の背後には何か暗い意図が潜んでいるのか。心の中にざわめく不安が彼を一層、警戒させる。
「場所を変えよう」
先にシリウスが提案し、二人は静かな喫茶店へと足を運んだ。
雨音が薄れ、店内はほのかに漂うコーヒーの香りに包まれている。ヴェラがフードを外すと褐色の肌と銀色の長い髪が露わになり、周りの客が彼女を一瞬見つめた。その視線を気にせずにシリウスは黙って空いた席に座る。
「それで要件は何でしょうか?」
「俺は里に行かないと里に伝えてくれ」
ヴェラも座りながら尋ねると、シリウスは自身の要求を告げた。
「それはできません」
「何故だ?」
淡々と受け答えをするヴェラに対してシリウスの声には不満が滲んでいる。
「貴方を連れて来ないと里に帰ることができませんから」
彼女の毅然とした態度にシリウスは内心の動揺を感じる。今の状態の彼女には帰る故郷がないのだ。その事情を察しつつも首を縦には振れなかった。
「それでも俺は里には行かない。他のダークエルフを当たってくれ」
「どこにいるのですか?」
「知らん。だが探せば見つかる。確か……」
ヴェラの問いかけにシリウスは面倒くさそうに答える。ダークエルフの数はこの世界で希少だが、前にアステルを拉致したノワールのようなダークエルフもこの世界のどこかにいるとシリウスは教えてやる。
だがヴェラは俯いて考え込んでから、静かに問いを続けた。
「……本当に貴方は自分の意思でここを出る気はないのですか?」
その問いに対し、シリウスは小さく首を振る。これ以上断り続ければ彼女は実力行使に出るかもしれないと警戒をしていた。
「この国では貴方の功績に対して随分と不相応の評価を受けているようですね」
「不相応だと?」
シリウスの驚きにヴェラは強い意志をもって首を縦に振った。
「高い戦闘能力を持つ貴方はこの国にとって重要な人材です。そんな貴方にこの国はダークエルフだと差別し、不当な評価を下されています。それはおかしいことです」
彼女の目には、同胞への強い愛情が宿っていた。シリウスは彼女の意外な一面を見つけ、少し驚く。
しかし、シリウスは今の待遇に不満を感じたことはない。
ガレットが手厚く援助をしてくれて、同僚とも打ち解け、何よりアステルとステラが側にいるからだ。
「シリウス殿はもっと評価されるべきです。我が里に来てくだされば、里の者が全員、貴方を丁重に扱うでしょう」
「俺は今の待遇に満足している。何よりこの国のことが気に入っている。離れるつもりはない」
シリウスはそう言いながら注文したコーヒーがテーブルに置かれるとそのまま飲もうとするが
「ではこうしましょう。貴方がここを離れないのならば、我々がここに来て抱いてもらい、子種だけを受け取ります」
「は……?」
シリウスはコーヒーカップを持ったまま言葉を失った。ヴェラが何を言っているのか理解できず、頭が混乱する。
アステル以外の女を抱きたくないからこそ里への訪問を拒んでいるのに彼女たちはわざわざこちらに来て子種だけもらおうとしているのだ。
「そうすれば貴方は里に来る必要はなくなります」
「なぜそうなる……?」
「それが一番穏便な解決法だからです」
彼女の言葉には何の迷いもなく、まるでそれが常識であるかのように響いた。
それに対してシリウスはコーヒーカップを置くと頭痛がして、額を押さえた。
これは体調が悪いのではなく、価値観の違いに眩暈がしているからだ。彼の心の中で混乱と嫌悪が渦巻いている。
「さあ、シリウス殿」
ヴェラは素早く立ち上がると彼の傍に寄り、褐色の手で彼の肩にそっと触れる。その瞬間、シリウスの背筋に冷たい恐怖が走った。
「やめろ!」
その手を振り払うとヴェラを睨みつけた。周りの客が驚いて二人のやりとりを見ているがシリウスは気に留めなかった。
「もう帰ってくれ、そして二度とこの国に来るな」
「シリウス殿」
「これは警告だ。もし再び現れたら……その時は容赦しない」
殺気を込めてシリウスはそれだけ言い放つと、テーブルに二人分の飲み物の代金を置き、席を立って店を出た。
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