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ダークエルフの誘惑編
裏切りの予感
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シリウスは仕事の引き継ぎや緊急の長期休暇の申請を迅速に済ませ、帰宅する。ドアを開けるとアステルとステラが無事に彼を出迎えてくれた。安堵の気持ちが胸に広がり、一瞬だけその幸せを噛みしめた。
「お父さん!お帰りなさい!」
ステラが嬉しそうに駆け寄り、足に抱きつく。シリウスはその小さな頭を優しく撫で、子供の温もりを感じながら一瞬の安らぎを得た。
しかし、その幸福感の裏には、重い思いが渦巻いていた。家族が集まるこの場で、彼はこれからの厳しい話し合いをしなければならない。キャロラインも手伝いに来ていたため、家族だけでなく彼女も交えての話し合いとなった。
夕食を終え、ステラが眠りについた後、シリウスは重い口を開いた。
「ダークエルフの里で50年間暮らしてほしいと、ヴェラと名乗る女から言われた」
その言葉にアステルは驚きの表情を浮かべた。ダークエルフの女性が家の前に立っていたのはやはりシリウスが目当てだったのだ。
「当然、その話は拒否した。しかし、あの女はそう簡単に諦めないだろう。解決策が見つかるまでは、できるだけ外出は控えてくれ」
シリウスは力強く言った。彼の言葉には決意と不安が交錯していた。そして次に、シリウスはキャロラインに目を向ける。
「急ではあるが解雇させてほしい。今は何が起こるかわからない。俺たちと関わることで危険が及ぶかもしれない。今日までの給料と退職金はすぐに支払う」
キャロラインは驚いた表情を浮かべたがゆっくりと首を振った。
「私は大丈夫です。何かあった時にステラさんのそばに私がいた方がいいと思いますし。心配してくださるのはわかりますが……私もこの家の一員ですから」
「キャロライン、でも危険だから……」
「私はここに残りたいです」
アステルが異議を唱える前にキャロラインは毅然として答えた。彼女の声には揺るぎない決意がある。
その言葉にアステルとシリウスは一瞬言葉を失った。彼女の決意が伝わり、心の中でキャロラインに対する感謝の気持ちが芽生えた。
「わかった。だが、危険だと判断したら逃げてくれ」
シリウスは静かに言った。頼ることにしたが、同時に彼女を危険に晒すことに対する不安も募る。
「もちろん、ステラさんと一緒に逃げますね。一緒にこの問題を解決しましょう」
「本当にごめんなさい、キャロライン」
キャロラインはアステルの手を取ると共に立ち向かう意思を示した。アステルはその手を握り返し、深く頷いた。
◆
家の中には不穏な空気が漂い、どこにいてもその重さを感じることができた。キャロラインが泊まっているため、家族は何とか平静を保とうとしていたが心の底には緊張が渦巻いていた。
「まだ起きているの……?」
今夜はステラと一緒に寝ていたアステルが夜中に目を覚ましてシリウスの様子を見に、部屋に入るとシリウスが窓の外を黙って眺めている姿が目に入った。
アステルもそっと隣に立ち、外を見てみるが外には誰の姿もなく、フクロウの鳴き声と風が木々を揺らす音だけが耳に入ってくる。
「怖いの?」
ピリついた空気の中、そう尋ねるとシリウスはゆっくりとアステルの方を振り向き「ああ」と頷いた。
「俺が一番怖いのは家族を傷つけられることだ。それだけは耐えられない」
「うん、そうね……」
アステルは彼の気持ちを理解しながらも自身の不安も隠せなかった。
「いつまで続くんだ」
シリウスの声には苦悩が滲んでいた。ヴェラは彼が承諾するまでこの国に滞在するつもりだと言っていた。
本人は何もしないと言っていたが、場合によっては強行手段に出る可能性もある。
この国ではつきまとうだけでは罪には問われないが、暴力を振るった場合は国外追放もあり得るがそうなる前に解決をしたい。
例え彼女をこの国から追い払えたとしてもそれは一時しのぎに過ぎない。ヴェラがダメだったら、別のダークエルフがまた同じように現れる。
終わらない連鎖が続くだけなのだ。
「この国から離れた方がいいのだろうか」
「すぐに見つかってしまうと思う。私たちは目立ちすぎているから」
シリウスが自問自答をしているとアステルは真剣な表情で答えた。
エルフとダークエルフの夫婦とその子供は異端中の異端であり、すぐに噂になって見つけ出されてしまうだろう。
それに、ここ以外で自分たちを受け入れてくれる環境はそうそうない。
「シリウスがダークエルフの里に行ったら二度と戻っては来れないかも……」
アステルの心には不安が広がった。シリウスが自分が行けば丸く収まるのではないかと思い出さないか心配だった。
50年経過しても、一度里に引き入れられたシリウスをそう簡単に帰国させるとは思えなかった。絶対に逃げられないように閉じ込められてしまうかもしれない。
(それに)
シリウスの心も、その居心地の良さに慣れ、永住を決めてしまうのではないかという恐れもあった。もしそうなったらと想像をすると……アステルはシリウスの顔を見ることができなかった。
「アステル」
アステルが暗い顔で俯くとシリウスは優しく彼女の頬を指で撫でた。その指はわずかに震えていた。
「あ……ごめんなさい。自分のことばっかり考えて」
アステルは恥じるように呟いた。
「いや、俺が不甲斐ないからだ。」
「シリウスはいつも頑張っているわ。だから……」
一緒に乗り越えましょうと言おうとした瞬間、シリウスが彼女の体を抱き寄せた。
彼の腕には力が込められ、アステルはその温もりに包まれた。シリウスの胸に顔を埋めると、その心臓の鼓動が速くなっているのが感じられた。
(あの女と違う)
ヴェラに抱きつかれた時に触れられたときの恐怖感とは異なり、今、アステルの匂いや体温、柔らかさに心から安堵を覚えた。
彼女でなければならない、アステルの心と体、全てがシリウスを安心させてくれる。子供だって、彼女との間に生まれる子供しか欲しくない。
「このままでいたい」
シリウスはアステルの肩に顔を埋めたまま、強く抱きしめながら口を開いた。
「うん……」
アステルはシリウスの背中に腕を回し、体をより密着させた。
彼女もまた、シリウスが他の女性を抱いて子供を作ることを望んではいなかった。
しかし、シリウスの気持ちを完全には理解できていなかったため、不安が募っていた。
もし、彼が別の女性と愛し合い、子供ができたら……ステラになんて言えばいいのか考えるだけで恐ろしい。
様々な感情が入り交じったまま、静かな夜の闇の中で抱き合い、シリウスの存在を確かめた。
「お父さん!お帰りなさい!」
ステラが嬉しそうに駆け寄り、足に抱きつく。シリウスはその小さな頭を優しく撫で、子供の温もりを感じながら一瞬の安らぎを得た。
しかし、その幸福感の裏には、重い思いが渦巻いていた。家族が集まるこの場で、彼はこれからの厳しい話し合いをしなければならない。キャロラインも手伝いに来ていたため、家族だけでなく彼女も交えての話し合いとなった。
夕食を終え、ステラが眠りについた後、シリウスは重い口を開いた。
「ダークエルフの里で50年間暮らしてほしいと、ヴェラと名乗る女から言われた」
その言葉にアステルは驚きの表情を浮かべた。ダークエルフの女性が家の前に立っていたのはやはりシリウスが目当てだったのだ。
「当然、その話は拒否した。しかし、あの女はそう簡単に諦めないだろう。解決策が見つかるまでは、できるだけ外出は控えてくれ」
シリウスは力強く言った。彼の言葉には決意と不安が交錯していた。そして次に、シリウスはキャロラインに目を向ける。
「急ではあるが解雇させてほしい。今は何が起こるかわからない。俺たちと関わることで危険が及ぶかもしれない。今日までの給料と退職金はすぐに支払う」
キャロラインは驚いた表情を浮かべたがゆっくりと首を振った。
「私は大丈夫です。何かあった時にステラさんのそばに私がいた方がいいと思いますし。心配してくださるのはわかりますが……私もこの家の一員ですから」
「キャロライン、でも危険だから……」
「私はここに残りたいです」
アステルが異議を唱える前にキャロラインは毅然として答えた。彼女の声には揺るぎない決意がある。
その言葉にアステルとシリウスは一瞬言葉を失った。彼女の決意が伝わり、心の中でキャロラインに対する感謝の気持ちが芽生えた。
「わかった。だが、危険だと判断したら逃げてくれ」
シリウスは静かに言った。頼ることにしたが、同時に彼女を危険に晒すことに対する不安も募る。
「もちろん、ステラさんと一緒に逃げますね。一緒にこの問題を解決しましょう」
「本当にごめんなさい、キャロライン」
キャロラインはアステルの手を取ると共に立ち向かう意思を示した。アステルはその手を握り返し、深く頷いた。
◆
家の中には不穏な空気が漂い、どこにいてもその重さを感じることができた。キャロラインが泊まっているため、家族は何とか平静を保とうとしていたが心の底には緊張が渦巻いていた。
「まだ起きているの……?」
今夜はステラと一緒に寝ていたアステルが夜中に目を覚ましてシリウスの様子を見に、部屋に入るとシリウスが窓の外を黙って眺めている姿が目に入った。
アステルもそっと隣に立ち、外を見てみるが外には誰の姿もなく、フクロウの鳴き声と風が木々を揺らす音だけが耳に入ってくる。
「怖いの?」
ピリついた空気の中、そう尋ねるとシリウスはゆっくりとアステルの方を振り向き「ああ」と頷いた。
「俺が一番怖いのは家族を傷つけられることだ。それだけは耐えられない」
「うん、そうね……」
アステルは彼の気持ちを理解しながらも自身の不安も隠せなかった。
「いつまで続くんだ」
シリウスの声には苦悩が滲んでいた。ヴェラは彼が承諾するまでこの国に滞在するつもりだと言っていた。
本人は何もしないと言っていたが、場合によっては強行手段に出る可能性もある。
この国ではつきまとうだけでは罪には問われないが、暴力を振るった場合は国外追放もあり得るがそうなる前に解決をしたい。
例え彼女をこの国から追い払えたとしてもそれは一時しのぎに過ぎない。ヴェラがダメだったら、別のダークエルフがまた同じように現れる。
終わらない連鎖が続くだけなのだ。
「この国から離れた方がいいのだろうか」
「すぐに見つかってしまうと思う。私たちは目立ちすぎているから」
シリウスが自問自答をしているとアステルは真剣な表情で答えた。
エルフとダークエルフの夫婦とその子供は異端中の異端であり、すぐに噂になって見つけ出されてしまうだろう。
それに、ここ以外で自分たちを受け入れてくれる環境はそうそうない。
「シリウスがダークエルフの里に行ったら二度と戻っては来れないかも……」
アステルの心には不安が広がった。シリウスが自分が行けば丸く収まるのではないかと思い出さないか心配だった。
50年経過しても、一度里に引き入れられたシリウスをそう簡単に帰国させるとは思えなかった。絶対に逃げられないように閉じ込められてしまうかもしれない。
(それに)
シリウスの心も、その居心地の良さに慣れ、永住を決めてしまうのではないかという恐れもあった。もしそうなったらと想像をすると……アステルはシリウスの顔を見ることができなかった。
「アステル」
アステルが暗い顔で俯くとシリウスは優しく彼女の頬を指で撫でた。その指はわずかに震えていた。
「あ……ごめんなさい。自分のことばっかり考えて」
アステルは恥じるように呟いた。
「いや、俺が不甲斐ないからだ。」
「シリウスはいつも頑張っているわ。だから……」
一緒に乗り越えましょうと言おうとした瞬間、シリウスが彼女の体を抱き寄せた。
彼の腕には力が込められ、アステルはその温もりに包まれた。シリウスの胸に顔を埋めると、その心臓の鼓動が速くなっているのが感じられた。
(あの女と違う)
ヴェラに抱きつかれた時に触れられたときの恐怖感とは異なり、今、アステルの匂いや体温、柔らかさに心から安堵を覚えた。
彼女でなければならない、アステルの心と体、全てがシリウスを安心させてくれる。子供だって、彼女との間に生まれる子供しか欲しくない。
「このままでいたい」
シリウスはアステルの肩に顔を埋めたまま、強く抱きしめながら口を開いた。
「うん……」
アステルはシリウスの背中に腕を回し、体をより密着させた。
彼女もまた、シリウスが他の女性を抱いて子供を作ることを望んではいなかった。
しかし、シリウスの気持ちを完全には理解できていなかったため、不安が募っていた。
もし、彼が別の女性と愛し合い、子供ができたら……ステラになんて言えばいいのか考えるだけで恐ろしい。
様々な感情が入り交じったまま、静かな夜の闇の中で抱き合い、シリウスの存在を確かめた。
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