シークレットベイビー~エルフとダークエルフの狭間の子~【完結】

白滝春菊

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弟子と母親編

こんな場所で※

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 突然のバランスを崩した瞬間、アステルはシリウスの胸に飛び込んでしまった。その瞬間、彼の強い腕が優しくも力強くアステルを包み込む。まるで彼女を外の世界から守るための堅牢な城壁のようだった。

「シ、シリウス!?」  

 アステルは驚きの声をあげ、彼の温もりに触れながらも混乱した心を整理しようと必死になった。
 彼の胸を押し返し、離れようと試みるがシリウスの力は強く、まるで彼女を逃がすまいとするかのようにさらに抱き締めてきた。

「本当にどうしたの?何かあったの?」  

 アステルの声は心の奥底からの不安を帯びていた。シリウスは一瞬言葉を失い、ただ彼女を見つめる。その視線にはいつもの柔らかさが消え、鋭い刃のような緊張感が漂っていた。

「……距離が近すぎる」  

 その言葉は静かな空気を切り裂くように響いた。アステルが首を傾げると彼の腕の力が少しだけ緩む。だが、彼は決して彼女を手放さず、そのままの体勢で続けた。

「相手はエルフの異性だ」  
「弟子だから距離は近くなるし……相手は子供じゃない」  
「そうだな、俺がアステルに拾われた時と同じぐらいの年頃だ」
「それは……」

 その声には言い知れぬ重圧がのしかかって彼の言葉にアステルは一瞬、言葉を詰まらせた。意図的にケルヴィンとの距離を縮めようとしたつもりはないが親を失ったケルヴィンに心を開いて、弟のように甘えて欲しかったのは事実だ。
 それに似たような事をずっと昔、シリウスにもやっていたのを思い出す。だからシリウスは危機感を感じたのだろう。

「ごめんなさい、そんなつもりはないの」  

 アステルは真摯な思いを込めて謝った。シリウスは、その言葉を受け止めつつも、心配の色を隠しきれなかった。

「アステルは無防備すぎる。他の男にこんなことをされても平気なのか?」

 彼の呟きは、まるで彼女を守るための叫びのようだった。

「私はシリウス以外の人にこんなことさせないから」  

 その言葉が彼の心に届くとシリウスは彼女を抱きしめる力を弱め、ようやく安堵の表情を浮かべた。

「醜い所を見せてしまったな」

 自嘲気味に呟く彼に、アステルはそんなことないと否定の意を込めて首を振るがシリウスは落ち込んだ表情のままだった。

「子供相手に嫉妬をするなんてどうかしていた。だが、子供だった俺がアステルに焦がれて、今があるんだ」  
「他の人とはそういう関係にはならないから安心して」

 そう言ってクスクスと笑いながら机の上に置いてある本を重ねてると後ろからシリウスはアステルの体を抱き締めるとそのまま首筋に唇を落とした。

「ひゃっ!」
「わかっている。だが俺はアステルを誰にも渡したくないんだ」

 突然の行動にアステルは慌てて逃れようとしたがシリウスはアステルの腕をしっかり掴んでいるので逃げられない。
 更に抱き寄せられて後ろにいる彼に耳や首筋を舐められてしまうと体が熱くなるのを感じた。

「ちょ、ちょっと待ってせめてベッドで……」
「今はこの家に誰も居ないだろう」

 シリウスが耳元で囁くように問いかけてくるとアステルは体を震わせる。そして彼はそんなアステルの体を抱き寄せて服の中に手を滑り込ませた。大きな手がアステルの乳房に触れると、それだけで体が反応する。

「シリウス……んっ」
「可愛いな」

 アステルの反応を見てシリウスは楽しそうに笑うとアステルの首筋に軽く歯を立てた。

「いたっ……」

 シリウスは構わずに歯を立てて吸い付いたり甘噛みをしたりを繰り返す。そうすると白い柔肌に赤い跡がいくつも残されていった。

「見える所はやめて……」
「なら服で隠れる所にしておく」
「そうじゃなくて……」

 シリウスはアステルの首筋から顔の方へ唇を移動させるとそのまま唇を重ねてくる。最初は触れるだけの軽いものだったがすぐに舌が侵入してくると深いものへと変わっていく。

 キスをしながら胸を揉まれると甘い吐息が漏れる。シリウスもそれに気づいたようで執拗に胸への愛撫を始めた。指先で先端を摘まれたり優しく撫でられたりする度に体が跳ね上がるように反応する。

「アステルはもう少し自分の魅力を自覚した方がいい」
「あっ……ん、自覚、って、はぁ……あ」

 シリウスはそのまま後ろから覆い被さるような体勢になり、無骨な手がアステルの体を撫で回し続けていった。
 机に突っ伏したままアステルはシリウスに後ろから弄ばれて甘い吐息を漏らすことしか出来ない。

 シリウスは弱々しいアステルの反応を見て気をよくしたのか更に強くアステルの体を抱き締めると今度は後ろから覆い被さってきて片手で胸を揉みしだきながらもう片方の手で太股を撫で回してきた。
 スカートの中に手を入れられて下着の上から敏感な部分に触れられるとアステルの口から甲高い悲鳴が漏れる。

「もうこんなに濡れてるんだな」
「んっ……これは、あっ……そ、その……」
「もっと、俺の手で気持ち良くしてやる」

 シリウスの言葉にアステルは顔を真っ赤にして俯いた。恥ずかしくて死にそうな気分になるがそれと同時に胸や太股を責められると背筋がゾクゾクとするような快感に襲われる。
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