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弟子と母親編
娘は嫌だと言っている
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ようやく一段落をつけたシリウスは道具屋の中に足を踏み入れた。店内はほのかな薬草の香りに包まれ、暖かな光が差し込む窓越しに外の様子を伺うアリサの姿が見えた。彼女の表情は曇り、先程の騒ぎを目撃していたことがうかがえた。
「騒がしかったけど……何がありましたか?」
「ああ、少し……」
シリウスは今の出来事を説明をすればアリサはその話を聞きながら眉を寄せ、難しそうな顔をする。
「それは大変でしたね。それなら素顔を隠せばいいのに何故それをしないのですか?」
「俺がダークエルフとして善行を重なれば他のダークエルフはここで生きやすくなるはずだ。だから俺はダークエルフであることを隠さないようにしている」
シリウスは、自分の愛娘を見下ろしながらその理由を説明をするとアリサは頷き、理解を示すように微笑んだ。
ダークエルフの血を引くステラが堂々と街を歩くためにはこうした手段が必要なのだ。アリサはその思いをしっかりと受け止めてくれたようだった。
「そういうことなら応援しますね。あ、薬草の準備ができましたよ」
アリサはシリウスの話を聞いた後、すぐに対応を切り替え、薬草が入った麻袋を差し出した。その袋はステラよりも大きいものが三つもあり重そうだ。
「アステルはこの量の薬草で全部一人で作っていたのか……」
「そうですね……大丈夫だとおっしゃっていましたが流石に心配でした」
シリウスが驚愕をしているとアリサは心配そうに目を細めた。アステルがどれだけ大変な作業をしていたのかを痛感する。
「なら薬草だけでも定期的に送ってくれないか?その分、報酬が減ってもいい」
「それは構いませんが……それよりも人を雇ってみませんか?」
「人を?」
「アステルさんが一人で作るよりも人を増やして作ってもらった方が効率的かと思いますよ」
「しかし……それは……」
シリウスはステラの頭を撫でながら少し考え込む。確かにアステルの負担が減ることは望ましい。しかし、何よりも大切なのはステラが安心して暮らせる環境を整えることだった。
エルフの作る特別な薬は、エルフの魔法を付与して作られるため人間では再現できない。
それなら雑用をさせる人間を雇うことでアステルの負担を軽減できるかもしれない。しかし、雇った人間がステラに何かをする可能性も考慮しなければならなかった。それはシリウスにとって耐え難いことだった。キャロラインを信頼できるまでも時間がかかったのだ。
だから今まで一人でやってきたのだが……
(いつか限界がくるかもしれないな)
シリウスはそう判断してアリサの提案を受け入れることにした。
アステルの負担を減らすために、そして何よりステラの未来を守るためにも。
◆
道具屋から借りた荷車に薬草を積んで娘を一緒に乗せようと屈むとステラが期待に満ちた瞳で見上げてきた。その目は無邪気にキラキラと輝いている。
「お父さん、肩車して!」
「ああ、いいぞ」
シリウスが答えるとステラの顔にはパッと明るい笑顔が浮かんだ。その笑顔を見ると何でも言うことを聞きたくなってしまう。どんな困難があってもこの瞬間のためならば何でも乗り越えられる気がした。
ステラを肩に乗せると嬉しそうに笑い、シリウスの髪の毛を掴む。その小さな手の温もりが彼の心に深い安らぎをもたらし、充実感を感じながら背筋を伸ばした。
「ステラ、キャロライン以外にもまた人が家に来るのかもしれない」
「えー……やだぁ」
ステラの表情が一変した。露骨に嫌そうな顔をしてシリウスの銀色の髪をぎゅっと掴む力が強くなる。
「だがアステルが疲れて……」
「やだー!来るならお父さんがいいの!ずっとお家にいてよ!」
シリウスが理由を続けようとするとステラはそれを遮るように大きく首を振った。そして駄々っ子のように足をバタバタさせ情熱的に反抗した。その必死な姿を見てシリウスは思わず苦笑いを浮かべるしかなかった。
ステラの無邪気な反抗に心が揺れ動く。できれば信頼できる人物が家に来てくれればと願うが心の中では不安が広がっていく。シリウスはその思いを胸に秘めながら荷車を引き、家路を目指して歩き出した。
◆
ステラがシリウスの肩から降り、家の中に入ると薄暗い室内に少し戸惑いを見せた。
「お家、暗いね……お母さーん!」
ステラはリビングを通り過ぎ、家の奥へと走り出す。寝室までたどり着くと机に向かって本を読んでいるアステルの姿が目に入った。彼女は机の上に広げられた本に顔を埋めるようにすやすやと眠っている。
(疲れているんだな……)
その光景を見てシリウスはほっとした息を吐き、薬草の入った麻袋をテーブルに静かに置くとアステルの元へ向かい抱き上げる。
彼女が目を覚まさないように気を使いながら運びベッドにそっと寝かせる。そして最後に頬に優しいキスをして静かな眠りを祈った。
「お父さん、お腹すいた」
シリウスは寝室の扉をそっと閉め、ステラを抱き上げてそのままリビングへと向う途中で可愛らしい無邪気な声が響く。
「ああ、すぐに作る」
シリウスはステラをソファに座らせてから頭を撫でてからキッチンへと向かった。
(作られてる……)
キッチンへ向かうと目に飛び込んできたのはテーブルの上に置かれた大きな鍋だった。蓋を開けるとふわっと香ばしい香りが漂い、思わず息を飲む。中には具だくさんのシチューが煮込まれていて色とりどりの野菜と柔らかい肉がとろけるように煮込まれている。
冷蔵庫を開けると下ごしらえが済んだステーキ肉や彩り豊かなサラダが整然と並んでいた。アステルが既に用意していたのだろうとシリウスは申し訳なさを感じながらも火を入れ、続きの調理を始めることにした。
フライパンに油をひき、肉を焼くとジュウジュウという音とともに食欲をそそる香りが立ち上がる。肉の表面が美しい焼き色を帯びていくのを見ながら期待に胸を高鳴らせた。
そしてできあがった料理をステラの待つテーブルに並べるとお腹を空かせていたステラは嬉しそうにスプーンを握りしめ勢いよくシチューをすくい上げる。その様子を見てシリウスも自分の分を用意し正面の席に座った。
「おいしいっ」
「そうか」
ステラはシチューを頬張りながら笑顔を向けていた。そんな娘の姿を見てシリウスも嬉しそうに笑う。
「お父さん切って」
「ああ、すまない」
ステラがステーキ肉を切って欲しいと要求をするとシリウスは皿を取り、娘のために肉を小さく切り分けた。柔らかいので子供でも食べられる肉だが切り分けるのもアステルの役目だったのかもしれない。思ったよりも子供は手のかかる生き物だなとシリウスは考えを改めた。
「お母さんは食べないの?」
「疲れているから寝かせておいた方がいいだろう」
「疲れる……」
シリウスがアステルを気遣う気持ちを込めて答えるとステラは少し納得がいっていない様子で眉をひそめる。
「お母さんも疲れちゃうんだ」
「それはそうだな」
シリウスはその言葉に頷きながらも心の中で違和感を感じていた。アステルだって時には疲れることがある。生きているのだから当然だと。
「大人だから疲れないって言ったし……」
ステラの言葉がシリウスの疑問を解消してくれる。アステルは娘の前では弱いところを見せないように努めていたのだ。
子供を育てながら薬を作り、誰にも頼ることができずに全部一人でやっていた。疲れないわけはないのだが幼いステラには気にしないでいてほしかったのであろう。
「お父さん?」
「なんでもない」
シリウスは切り分けたステーキが乗った皿をステラの目の前に戻し、自分の分を食べ始めた。
出会った時からアステルはいつも気丈に振る舞っている。その姿がシリウスの心配を呼び起こすのだった。
「騒がしかったけど……何がありましたか?」
「ああ、少し……」
シリウスは今の出来事を説明をすればアリサはその話を聞きながら眉を寄せ、難しそうな顔をする。
「それは大変でしたね。それなら素顔を隠せばいいのに何故それをしないのですか?」
「俺がダークエルフとして善行を重なれば他のダークエルフはここで生きやすくなるはずだ。だから俺はダークエルフであることを隠さないようにしている」
シリウスは、自分の愛娘を見下ろしながらその理由を説明をするとアリサは頷き、理解を示すように微笑んだ。
ダークエルフの血を引くステラが堂々と街を歩くためにはこうした手段が必要なのだ。アリサはその思いをしっかりと受け止めてくれたようだった。
「そういうことなら応援しますね。あ、薬草の準備ができましたよ」
アリサはシリウスの話を聞いた後、すぐに対応を切り替え、薬草が入った麻袋を差し出した。その袋はステラよりも大きいものが三つもあり重そうだ。
「アステルはこの量の薬草で全部一人で作っていたのか……」
「そうですね……大丈夫だとおっしゃっていましたが流石に心配でした」
シリウスが驚愕をしているとアリサは心配そうに目を細めた。アステルがどれだけ大変な作業をしていたのかを痛感する。
「なら薬草だけでも定期的に送ってくれないか?その分、報酬が減ってもいい」
「それは構いませんが……それよりも人を雇ってみませんか?」
「人を?」
「アステルさんが一人で作るよりも人を増やして作ってもらった方が効率的かと思いますよ」
「しかし……それは……」
シリウスはステラの頭を撫でながら少し考え込む。確かにアステルの負担が減ることは望ましい。しかし、何よりも大切なのはステラが安心して暮らせる環境を整えることだった。
エルフの作る特別な薬は、エルフの魔法を付与して作られるため人間では再現できない。
それなら雑用をさせる人間を雇うことでアステルの負担を軽減できるかもしれない。しかし、雇った人間がステラに何かをする可能性も考慮しなければならなかった。それはシリウスにとって耐え難いことだった。キャロラインを信頼できるまでも時間がかかったのだ。
だから今まで一人でやってきたのだが……
(いつか限界がくるかもしれないな)
シリウスはそう判断してアリサの提案を受け入れることにした。
アステルの負担を減らすために、そして何よりステラの未来を守るためにも。
◆
道具屋から借りた荷車に薬草を積んで娘を一緒に乗せようと屈むとステラが期待に満ちた瞳で見上げてきた。その目は無邪気にキラキラと輝いている。
「お父さん、肩車して!」
「ああ、いいぞ」
シリウスが答えるとステラの顔にはパッと明るい笑顔が浮かんだ。その笑顔を見ると何でも言うことを聞きたくなってしまう。どんな困難があってもこの瞬間のためならば何でも乗り越えられる気がした。
ステラを肩に乗せると嬉しそうに笑い、シリウスの髪の毛を掴む。その小さな手の温もりが彼の心に深い安らぎをもたらし、充実感を感じながら背筋を伸ばした。
「ステラ、キャロライン以外にもまた人が家に来るのかもしれない」
「えー……やだぁ」
ステラの表情が一変した。露骨に嫌そうな顔をしてシリウスの銀色の髪をぎゅっと掴む力が強くなる。
「だがアステルが疲れて……」
「やだー!来るならお父さんがいいの!ずっとお家にいてよ!」
シリウスが理由を続けようとするとステラはそれを遮るように大きく首を振った。そして駄々っ子のように足をバタバタさせ情熱的に反抗した。その必死な姿を見てシリウスは思わず苦笑いを浮かべるしかなかった。
ステラの無邪気な反抗に心が揺れ動く。できれば信頼できる人物が家に来てくれればと願うが心の中では不安が広がっていく。シリウスはその思いを胸に秘めながら荷車を引き、家路を目指して歩き出した。
◆
ステラがシリウスの肩から降り、家の中に入ると薄暗い室内に少し戸惑いを見せた。
「お家、暗いね……お母さーん!」
ステラはリビングを通り過ぎ、家の奥へと走り出す。寝室までたどり着くと机に向かって本を読んでいるアステルの姿が目に入った。彼女は机の上に広げられた本に顔を埋めるようにすやすやと眠っている。
(疲れているんだな……)
その光景を見てシリウスはほっとした息を吐き、薬草の入った麻袋をテーブルに静かに置くとアステルの元へ向かい抱き上げる。
彼女が目を覚まさないように気を使いながら運びベッドにそっと寝かせる。そして最後に頬に優しいキスをして静かな眠りを祈った。
「お父さん、お腹すいた」
シリウスは寝室の扉をそっと閉め、ステラを抱き上げてそのままリビングへと向う途中で可愛らしい無邪気な声が響く。
「ああ、すぐに作る」
シリウスはステラをソファに座らせてから頭を撫でてからキッチンへと向かった。
(作られてる……)
キッチンへ向かうと目に飛び込んできたのはテーブルの上に置かれた大きな鍋だった。蓋を開けるとふわっと香ばしい香りが漂い、思わず息を飲む。中には具だくさんのシチューが煮込まれていて色とりどりの野菜と柔らかい肉がとろけるように煮込まれている。
冷蔵庫を開けると下ごしらえが済んだステーキ肉や彩り豊かなサラダが整然と並んでいた。アステルが既に用意していたのだろうとシリウスは申し訳なさを感じながらも火を入れ、続きの調理を始めることにした。
フライパンに油をひき、肉を焼くとジュウジュウという音とともに食欲をそそる香りが立ち上がる。肉の表面が美しい焼き色を帯びていくのを見ながら期待に胸を高鳴らせた。
そしてできあがった料理をステラの待つテーブルに並べるとお腹を空かせていたステラは嬉しそうにスプーンを握りしめ勢いよくシチューをすくい上げる。その様子を見てシリウスも自分の分を用意し正面の席に座った。
「おいしいっ」
「そうか」
ステラはシチューを頬張りながら笑顔を向けていた。そんな娘の姿を見てシリウスも嬉しそうに笑う。
「お父さん切って」
「ああ、すまない」
ステラがステーキ肉を切って欲しいと要求をするとシリウスは皿を取り、娘のために肉を小さく切り分けた。柔らかいので子供でも食べられる肉だが切り分けるのもアステルの役目だったのかもしれない。思ったよりも子供は手のかかる生き物だなとシリウスは考えを改めた。
「お母さんは食べないの?」
「疲れているから寝かせておいた方がいいだろう」
「疲れる……」
シリウスがアステルを気遣う気持ちを込めて答えるとステラは少し納得がいっていない様子で眉をひそめる。
「お母さんも疲れちゃうんだ」
「それはそうだな」
シリウスはその言葉に頷きながらも心の中で違和感を感じていた。アステルだって時には疲れることがある。生きているのだから当然だと。
「大人だから疲れないって言ったし……」
ステラの言葉がシリウスの疑問を解消してくれる。アステルは娘の前では弱いところを見せないように努めていたのだ。
子供を育てながら薬を作り、誰にも頼ることができずに全部一人でやっていた。疲れないわけはないのだが幼いステラには気にしないでいてほしかったのであろう。
「お父さん?」
「なんでもない」
シリウスは切り分けたステーキが乗った皿をステラの目の前に戻し、自分の分を食べ始めた。
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