33 / 104
エルフとダークエルフの狭間の子
しおりを挟む
アステルとステラが家に戻るとシリウスが家の中を掃除しつつ、荷造りをしていた。家の中が荒らされてしまったので持っていける物はほとんどなかったが、必要なものだけでも新居に運ぶ、そして次にこの家に住む人の為に綺麗にしておくとシリウスが自ら買って出てくれたのだ。
シリウスは二人の姿を見ると荷物を一旦置き、近寄ると母の後ろに隠れている幼いステラに目線を合わせて膝をつく。今のステラはエルフ特有の金髪に青い瞳、白い肌でアステルと同じ色だ。そんなステラはつぶらな青い瞳でシリウスをじっと見つめている。
「この人がステラのお父さんなの」
アステルが同じように膝をつき、目線を合わせて娘の肩を抱きながら、そう告げるとステラは目を丸くして見つめたまま固まってしまった。ステラはシリウスのことを母からの話でしか知らない。だが本能的に何かを感じ取ったようで言葉が出ないようであった。
シリウスはステラの反応に少し寂しさを感じたが無理もないことだと思った。ステラにとって自分は赤の他人でしかない。
「お父さん……死んだって……」
「ごめんね。もう会えないと思っていたから……」
アステルが申し訳なさそうに謝るとステラは不安気に彼を見る。
「ずっと会えなくてすまなかった。今からでも許してくれるなら俺を父親として受け入れてくれるか?」
シリウスはステラの目を見据えて真剣に問いかけた。
「え……やだ……」
するとステラはアステルの胸元に顔を埋めて拒絶する。覚悟はしていたがシリウスはショックを受けていた。今までの行いを振り返れば仕方がないことだと思いながらも、やはり辛かった。
「そうか……それなら二人を守ることだけは許してくれないか?」
「それなら……いいよ」
シリウスの問いに対して母にしがみついたまま頷くステラを見てアステルはホッとしたような表情を見せる。シリウスもアステルと同じように安堵した様子を見せるとステラに微笑みかけた。
「ありがとう……これからよろしく頼む」
「うん……」
ステラは照れくさそうな表情を見せるとアステルの服を握る手に力を込めた。シリウスはステラを怖がらせないように気をつけなければと思いつつ、立ち上がると頭上から羽ばたく音が聞こえた。
空を見る前にヴァンが肩に止まり、喉を鳴らせて甘えるように擦り寄ってきたのだ。
シリウスは頭を撫でてやると嬉しそうにまた喉を鳴らす。その様子を見てアステルはステラを抱きしめたまま幸せを噛みしめるように笑っていた。
シリウスは二人の姿を見ると荷物を一旦置き、近寄ると母の後ろに隠れている幼いステラに目線を合わせて膝をつく。今のステラはエルフ特有の金髪に青い瞳、白い肌でアステルと同じ色だ。そんなステラはつぶらな青い瞳でシリウスをじっと見つめている。
「この人がステラのお父さんなの」
アステルが同じように膝をつき、目線を合わせて娘の肩を抱きながら、そう告げるとステラは目を丸くして見つめたまま固まってしまった。ステラはシリウスのことを母からの話でしか知らない。だが本能的に何かを感じ取ったようで言葉が出ないようであった。
シリウスはステラの反応に少し寂しさを感じたが無理もないことだと思った。ステラにとって自分は赤の他人でしかない。
「お父さん……死んだって……」
「ごめんね。もう会えないと思っていたから……」
アステルが申し訳なさそうに謝るとステラは不安気に彼を見る。
「ずっと会えなくてすまなかった。今からでも許してくれるなら俺を父親として受け入れてくれるか?」
シリウスはステラの目を見据えて真剣に問いかけた。
「え……やだ……」
するとステラはアステルの胸元に顔を埋めて拒絶する。覚悟はしていたがシリウスはショックを受けていた。今までの行いを振り返れば仕方がないことだと思いながらも、やはり辛かった。
「そうか……それなら二人を守ることだけは許してくれないか?」
「それなら……いいよ」
シリウスの問いに対して母にしがみついたまま頷くステラを見てアステルはホッとしたような表情を見せる。シリウスもアステルと同じように安堵した様子を見せるとステラに微笑みかけた。
「ありがとう……これからよろしく頼む」
「うん……」
ステラは照れくさそうな表情を見せるとアステルの服を握る手に力を込めた。シリウスはステラを怖がらせないように気をつけなければと思いつつ、立ち上がると頭上から羽ばたく音が聞こえた。
空を見る前にヴァンが肩に止まり、喉を鳴らせて甘えるように擦り寄ってきたのだ。
シリウスは頭を撫でてやると嬉しそうにまた喉を鳴らす。その様子を見てアステルはステラを抱きしめたまま幸せを噛みしめるように笑っていた。
106
お気に入りに追加
487
あなたにおすすめの小説
執着系皇子に捕まってる場合じゃないんです!聖女はシークレットベビーをこっそり子育て中
鶴れり
恋愛
◆シークレットベビーを守りたい聖女×絶対に逃さない執着強めな皇子◆
ビアト帝国の九人目の聖女クララは、虐げられながらも懸命に聖女として務めを果たしていた。
濡れ衣を着せられ、罪人にさせられたクララの前に現れたのは、初恋の第二皇子ライオネル殿下。
執拗に求めてくる殿下に、憧れと恋心を抱いていたクララは体を繋げてしまう。執着心むき出しの包囲網から何とか逃げることに成功したけれど、赤ちゃんを身ごもっていることに気づく。
しかし聖女と皇族が結ばれることはないため、極秘出産をすることに……。
六年後。五歳になった愛息子とクララは、隣国へ逃亡することを決意する。しかしライオネルが追ってきて逃げられなくて──?!
何故か異様に執着してくるライオネルに、子どもの存在を隠しながら必死に攻防戦を繰り広げる聖女クララの物語──。
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞に選んでいただきました。ありがとうございます!】
ずっと好きだった獣人のあなたに別れを告げて
木佐木りの
恋愛
女性騎士イヴリンは、騎士団団長で黒豹の獣人アーサーに密かに想いを寄せてきた。しかし獣人には番という運命の相手がいることを知る彼女は想いを伝えることなく、自身の除隊と実家から届いた縁談の話をきっかけに、アーサーとの別れを決意する。
前半は回想多めです。恋愛っぽい話が出てくるのは後半の方です。よくある話&書きたいことだけ詰まっているので設定も話もゆるゆるです(-人-)
巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
追放された悪役令嬢は辺境にて隠し子を養育する
3ツ月 葵(ミツヅキ アオイ)
恋愛
婚約者である王太子からの突然の断罪!
それは自分の婚約者を奪おうとする義妹に嫉妬してイジメをしていたエステルを糾弾するものだった。
しかしこれは義妹に仕組まれた罠であったのだ。
味方のいないエステルは理不尽にも王城の敷地の端にある粗末な離れへと幽閉される。
「あぁ……。私は一生涯ここから出ることは叶わず、この場所で独り朽ち果ててしまうのね」
エステルは絶望の中で高い塀からのぞく狭い空を見上げた。
そこでの生活も数ヵ月が経って落ち着いてきた頃に突然の来訪者が。
「お姉様。ここから出してさし上げましょうか? そのかわり……」
義妹はエステルに悪魔の様な契約を押し付けようとしてくるのであった。
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる