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捜索
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外では雨が降り続いており、視界が悪い。しかしそんなことは言っていられなかった。
シリウスはアステルのためにレイアに何かあれば一生抱えるであろう罪悪感を少しでも和らげるためにも森の中へと足を踏み入れた。
シリウスが森の中を駆け抜けていく中、ふと気配を感じ取ると、その正体はヴァンだった。シリウスの肩に止まると濡れた布越しに彼の頭へすり寄ってくる。
羽が水滴を弾いており、この悪天候でも問題なく飛べるようだ。雨の日はシリウスもヴァンも外へ出掛けることがなかったため知らなかったことだが便利な体をしている。
「レイアを探してくれ、わかるな?」
シリウスの言葉を理解しているかのように鳴くとヴァンは飛び立ち、しばらくする上空から鳴き声が聞こえ、見上げるとそこには大きな翼を広げながら旋回するヴァンの姿があった。どうやら見つけたらしい。
その方向へと急ぐと、雨の当たらない木の陰に座り込んで泣いている少女、レイアを見つけた。前にアステルと一緒にいた子供だから間違いない。
顔を見られないよう、フードを思い切り深く被り、口元を隠してから声をかけると突然現れたシリウスの存在に気付いたレイアはびくりと震え、怯えた様子を見せた。
「俺は冒険者だ。キミの母親からの依頼で来た。怪我はないか?」
「お花摘みに来たら……お家、帰れなくなったの……」
なるべく優しい声で話しかけると、彼女は恐る恐るこちらを見上げてくる。
やはりレイアの母の言った通り、森へ花を摘みに来ていたようで、彼女は手にとても白い小さな花を持っていたがその花は強く握りしめて潰れてしまっていた。
オーガゴートを倒してからの森は平和になり、魔物も森の奥へと引っ込んでしまい、危険な獣もいない。だから大丈夫だと油断をしてしまったのだ。
「家に帰るぞ」
「で、でもお母さんは知らない人に付いていくなって……」
確かにそれは正しい判断である。しかし今は一刻を争う事態だ。この雨の中で長引いてしまえば風邪を引いてしまう。それにレイアの母は娘がいなくなったことに気が動転して冷静さを失っており、正常な判断ができていない状態だった。悠長に説得をしている暇はない。
「……俺の後をついて来い。危険と判断すればすぐに逃げればいい」
そう言ってシリウスは先に歩き出すと、レイアは慌てて立ち上がり、藁にも縋る気持ちで彼に着いて行った。
それからは黙々と森を進み続けた。その間、何度か魔物と遭遇したが、ほとんどがシリウスの姿を見付けるなり彼らは逃げるようにして姿を消したので戦闘にならずに済んだ。魔物は戦う相手を選ぶ。力の差が大きければ襲ってこないことが多く、逆に弱そうな獲物を狙うことが多い。そのため今のシリウスは手負いでもなく、疲れてもおらず、そして何よりオーガゴートを倒したことから魔物達は恐れていたのだ。
レイアの様子を見ながら歩き続けてもうすぐエルフの集落に着くまであと少しの所でシリウスは立ち止まり、気配を探る。
「ど、どうしたの……?」
レイアが不安そうに見つめながら問いかけるが、彼は無言のまま周囲を警戒していた。草木が揺れ動く音が聞こえ、シリウスは槍を構えてレイアを庇うように前に立つと、木々の間から飛び出して来たのはオーガゴートだった。
「まだいたのか……!?」
この前倒したオーガゴート達に比べてサイズは一番小さく、若い。しかしそれでも普通の人から見れば十分大きいのだ。シリウスはレイアを後ろに下がらせると槍を構える。雨で視界が悪い上に、子供を守りながら戦わなければならない状況に思わず舌打ちをしたくなった。そんなシリウスの気持ちなど知る由もないレイアは、目の前に現れた巨大な魔物に恐怖で体が固まってしまった。
「ヴァン!そいつを連れて行け!」
シリウスの指示を受けて空中から飛び降りたヴァンはすぐに彼女の腕を掴むと引っ張って無理矢理歩かせていた。それを確認したシリウスは槍をくるりと回転させて構え直して挑発をすると怒り狂ったオーガゴートは雄叫びを上げて突進してきた。
シリウスは向かってきた勢いを利用して素早く突きを放つ。槍が頭の片方の角を砕くと、悲痛な鳴き声を上げ、よろめいた。倒した二匹のオーガゴートに比べて明らかに未熟だ。恐らくあの二匹の弟分なのだろう。敵討ちでシリウスを殺そうとしているに違いない。
(まさか三兄弟だったとはな……)
しかしそんなことは関係ない。シリウスはすぐさま攻撃態勢に入ると、今度はこちらから攻撃を仕掛けようとした瞬間だった。
「レイアー!レイアいるのかー!」
遠くの方から声が聞こえてきたため、そちらへ目を向けると、そこにはこちらに向かって大声で呼びかけているエルフの男がいた。
その正体は商人のロディだ。彼もレイアの捜索に加わっていたらしい。それに気がついたのはシリウスだけではなくてオーガゴートも同じで、大声に反応をして標的を変えたらしく、シリウスではなく、ロディの元へと駆け出した。その行動を見てシリウスは焦りながらも急いで追いかける。
「オ、オーガゴートがなんでこんなところにいるんだよ!」
突然現れた魔物に驚きの声を上げたロディだったが、腰に下げていた剣を抜いて応戦の体勢を取る。しかし雨のせいでぬかるんでいて足取りが悪く、思うように動けず、苦戦しているようだ。
「くっ!」
シリウスはすぐに割り込んでロディにの体を突き飛ばすと、そのまま槍を振り下ろすと、刃はオーガゴートの背中を捉え、皮膚と肉を切り裂くと鮮血が飛び散る。苦痛に耐えきれず、暴れるオーガゴートの攻撃を避け、一旦距離を置いた。
だが、完全に倒すまでには至らなかったようで、奴はそのまま背中を向けて走り去って行ってしまった。この場から消えたことにシリウスは安堵の息を吐き出すと、後ろから震えた声が聞こえ、振り返るとそこには尻餅をつく形で座り込んでいるロディの姿があった。
「ダ、ダークエルフ……!?」
戦っている最中にフードが取れてしまったのか、彼の目にははっきりとシリウスの顔が見えているようであり、怯えの表情を浮かべていた。その姿を見たシリウスは急いでフードを被ると、オーガゴートと同じように森の中へと姿を消していく。
残されたロディは呆然としていたが、すぐに我に返って立ち上がるとレイアを探し始め、それからしばらくして、ようやくレイアを見つけると彼女は泣きじゃくりながら彼に抱きついてくる。怪我がないことを確認すると、ロディは安心した様子で抱きしめ返した。
(見られた……!)
シリウスは走りながら後悔すると同時に絶望感に襲われる。ダークエルフがエルフの集落の近くにいることは完全に知られてしまった。間違いなくしらみつぶしに探されるだろう。そうなればアステルのそばにはいられない。もしも彼女の様子を見に来た時に見つかってしまえば自分もアステルもどんな仕打ちを受けるかわからない。むしろよく今まで見つからなかったものだ。
ずっと迷っていた決意が今ここで固まった。アステルを裏切ることに罪悪感がないわけではない。それでも彼女が幸せになるならそれでいい。そう自分に言い聞かせるようにしながら、シリウスは雨に打たれ続けていた。
シリウスはアステルのためにレイアに何かあれば一生抱えるであろう罪悪感を少しでも和らげるためにも森の中へと足を踏み入れた。
シリウスが森の中を駆け抜けていく中、ふと気配を感じ取ると、その正体はヴァンだった。シリウスの肩に止まると濡れた布越しに彼の頭へすり寄ってくる。
羽が水滴を弾いており、この悪天候でも問題なく飛べるようだ。雨の日はシリウスもヴァンも外へ出掛けることがなかったため知らなかったことだが便利な体をしている。
「レイアを探してくれ、わかるな?」
シリウスの言葉を理解しているかのように鳴くとヴァンは飛び立ち、しばらくする上空から鳴き声が聞こえ、見上げるとそこには大きな翼を広げながら旋回するヴァンの姿があった。どうやら見つけたらしい。
その方向へと急ぐと、雨の当たらない木の陰に座り込んで泣いている少女、レイアを見つけた。前にアステルと一緒にいた子供だから間違いない。
顔を見られないよう、フードを思い切り深く被り、口元を隠してから声をかけると突然現れたシリウスの存在に気付いたレイアはびくりと震え、怯えた様子を見せた。
「俺は冒険者だ。キミの母親からの依頼で来た。怪我はないか?」
「お花摘みに来たら……お家、帰れなくなったの……」
なるべく優しい声で話しかけると、彼女は恐る恐るこちらを見上げてくる。
やはりレイアの母の言った通り、森へ花を摘みに来ていたようで、彼女は手にとても白い小さな花を持っていたがその花は強く握りしめて潰れてしまっていた。
オーガゴートを倒してからの森は平和になり、魔物も森の奥へと引っ込んでしまい、危険な獣もいない。だから大丈夫だと油断をしてしまったのだ。
「家に帰るぞ」
「で、でもお母さんは知らない人に付いていくなって……」
確かにそれは正しい判断である。しかし今は一刻を争う事態だ。この雨の中で長引いてしまえば風邪を引いてしまう。それにレイアの母は娘がいなくなったことに気が動転して冷静さを失っており、正常な判断ができていない状態だった。悠長に説得をしている暇はない。
「……俺の後をついて来い。危険と判断すればすぐに逃げればいい」
そう言ってシリウスは先に歩き出すと、レイアは慌てて立ち上がり、藁にも縋る気持ちで彼に着いて行った。
それからは黙々と森を進み続けた。その間、何度か魔物と遭遇したが、ほとんどがシリウスの姿を見付けるなり彼らは逃げるようにして姿を消したので戦闘にならずに済んだ。魔物は戦う相手を選ぶ。力の差が大きければ襲ってこないことが多く、逆に弱そうな獲物を狙うことが多い。そのため今のシリウスは手負いでもなく、疲れてもおらず、そして何よりオーガゴートを倒したことから魔物達は恐れていたのだ。
レイアの様子を見ながら歩き続けてもうすぐエルフの集落に着くまであと少しの所でシリウスは立ち止まり、気配を探る。
「ど、どうしたの……?」
レイアが不安そうに見つめながら問いかけるが、彼は無言のまま周囲を警戒していた。草木が揺れ動く音が聞こえ、シリウスは槍を構えてレイアを庇うように前に立つと、木々の間から飛び出して来たのはオーガゴートだった。
「まだいたのか……!?」
この前倒したオーガゴート達に比べてサイズは一番小さく、若い。しかしそれでも普通の人から見れば十分大きいのだ。シリウスはレイアを後ろに下がらせると槍を構える。雨で視界が悪い上に、子供を守りながら戦わなければならない状況に思わず舌打ちをしたくなった。そんなシリウスの気持ちなど知る由もないレイアは、目の前に現れた巨大な魔物に恐怖で体が固まってしまった。
「ヴァン!そいつを連れて行け!」
シリウスの指示を受けて空中から飛び降りたヴァンはすぐに彼女の腕を掴むと引っ張って無理矢理歩かせていた。それを確認したシリウスは槍をくるりと回転させて構え直して挑発をすると怒り狂ったオーガゴートは雄叫びを上げて突進してきた。
シリウスは向かってきた勢いを利用して素早く突きを放つ。槍が頭の片方の角を砕くと、悲痛な鳴き声を上げ、よろめいた。倒した二匹のオーガゴートに比べて明らかに未熟だ。恐らくあの二匹の弟分なのだろう。敵討ちでシリウスを殺そうとしているに違いない。
(まさか三兄弟だったとはな……)
しかしそんなことは関係ない。シリウスはすぐさま攻撃態勢に入ると、今度はこちらから攻撃を仕掛けようとした瞬間だった。
「レイアー!レイアいるのかー!」
遠くの方から声が聞こえてきたため、そちらへ目を向けると、そこにはこちらに向かって大声で呼びかけているエルフの男がいた。
その正体は商人のロディだ。彼もレイアの捜索に加わっていたらしい。それに気がついたのはシリウスだけではなくてオーガゴートも同じで、大声に反応をして標的を変えたらしく、シリウスではなく、ロディの元へと駆け出した。その行動を見てシリウスは焦りながらも急いで追いかける。
「オ、オーガゴートがなんでこんなところにいるんだよ!」
突然現れた魔物に驚きの声を上げたロディだったが、腰に下げていた剣を抜いて応戦の体勢を取る。しかし雨のせいでぬかるんでいて足取りが悪く、思うように動けず、苦戦しているようだ。
「くっ!」
シリウスはすぐに割り込んでロディにの体を突き飛ばすと、そのまま槍を振り下ろすと、刃はオーガゴートの背中を捉え、皮膚と肉を切り裂くと鮮血が飛び散る。苦痛に耐えきれず、暴れるオーガゴートの攻撃を避け、一旦距離を置いた。
だが、完全に倒すまでには至らなかったようで、奴はそのまま背中を向けて走り去って行ってしまった。この場から消えたことにシリウスは安堵の息を吐き出すと、後ろから震えた声が聞こえ、振り返るとそこには尻餅をつく形で座り込んでいるロディの姿があった。
「ダ、ダークエルフ……!?」
戦っている最中にフードが取れてしまったのか、彼の目にははっきりとシリウスの顔が見えているようであり、怯えの表情を浮かべていた。その姿を見たシリウスは急いでフードを被ると、オーガゴートと同じように森の中へと姿を消していく。
残されたロディは呆然としていたが、すぐに我に返って立ち上がるとレイアを探し始め、それからしばらくして、ようやくレイアを見つけると彼女は泣きじゃくりながら彼に抱きついてくる。怪我がないことを確認すると、ロディは安心した様子で抱きしめ返した。
(見られた……!)
シリウスは走りながら後悔すると同時に絶望感に襲われる。ダークエルフがエルフの集落の近くにいることは完全に知られてしまった。間違いなくしらみつぶしに探されるだろう。そうなればアステルのそばにはいられない。もしも彼女の様子を見に来た時に見つかってしまえば自分もアステルもどんな仕打ちを受けるかわからない。むしろよく今まで見つからなかったものだ。
ずっと迷っていた決意が今ここで固まった。アステルを裏切ることに罪悪感がないわけではない。それでも彼女が幸せになるならそれでいい。そう自分に言い聞かせるようにしながら、シリウスは雨に打たれ続けていた。
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