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白金と黒銀が交わる夜
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今夜は雨が降っていた。雨風が強い日は森へは行かない約束をアステルとしていたシリウスは大人しく部屋で槍の手入れをしている。
銀色の刃に自分の姿が映っている。その表情は暗く、不安げだ。アステルと別れるのは正直辛い。だが、このままではいつか彼女に迷惑をかけ続けてしまう。
それにここにいると我慢ができなくなりそうなのだ。薄桃色の唇に触れて柔らかさを感じたい。白い柔肌に触れ、豊満な胸を押し付けられたい。彼女と一つになりたい。
そんなことを考えていると、下半身が疼き始める。シリウスは自分の浅ましさに呆れると頭を振り、邪念を消そうとするが消えない。それどころか余計に意識してしまう。
(やはり早めにここを出ないとな)
そう思った瞬間、部屋の扉を叩く音が聞こえてきた。
「シリウス、起きてる?」
「起きてる」
「入ってもいい?」
「ああ」
シリウスが短く答えると扉が開かれ、アステルが入ってくる。彼女は俯いており表情は見えないが長い耳が赤く染まっているのが見える。様子がどこかおかしい。
「どうした?」
「その……」
何かを言いかけて口籠る彼女にシリウスは首を傾げると、意を決したようにアステルが顔を上げた。
「お話をしたいなと思って……」
「ここでか?」
「……ええ」
そう言ってアステルはベッドの端に腰掛けて彼の隣に座った。シリウスは少し戸惑う、今の彼女はいつも以上に艶っぽく見えるからだ。頬を染め、潤んだ瞳で見つめられ、シリウスは胸の奥がざわつくのを感じる。それに先ほど風呂に入ったばかりなのか石鹸の良い香りも漂い、金色の長い髪も少し濡れており、肌もほんのりと上気しているように見える。
シリウスは思わず唾を飲み込んだ。すると、アステルはシリウスの手を両手で掴むとそのまま胸に押し付けた。柔らかい感触が手に伝わる。それだけではない、ドクンドクンという心臓の音まで伝わってくるのだ。シリウスは顔を真っ赤にして硬直するが、アステルは彼の手に自分の手を重ねるとさらに強く押し当てる。
「ア、アステル……?」
突然の事にシリウスは驚くが、柔らかい感触に思考が停止する。アステルの手は小さく震え、シリウスの手に伝わってくる心音はだんだん早くなり、熱い吐息と共に彼女は呟いた。
「シリウス……居なくなる前に、最後に私を抱いて欲しいの……」
アステルは勇気を出して言った。シリウスが自分から離れようとしているのは分かっている。だからせめて最後に彼の欲望だけでも満たして欲しいと思ったのだ。あわよくば、この場所に繋ぎ止めておくことが出来るかもしれないと浅はかな考えもあった。
「俺はダークエルフだぞ……万が一子供が出来たら……」
シリウスはアステルから目を逸らし、絞り出すような声で答えたが、アステルは彼の顔に手を当てて正面を向かせる。
「大丈夫、避妊薬を飲んでいるから……」
避妊薬という言葉にシリウスは目を見開く。彼女が自分と交わる為に準備をしてくれていたのだと知り、シリウスは嬉しさと罪悪感と同時に押さえつけていた理性が弾け飛んだ。
銀色の刃に自分の姿が映っている。その表情は暗く、不安げだ。アステルと別れるのは正直辛い。だが、このままではいつか彼女に迷惑をかけ続けてしまう。
それにここにいると我慢ができなくなりそうなのだ。薄桃色の唇に触れて柔らかさを感じたい。白い柔肌に触れ、豊満な胸を押し付けられたい。彼女と一つになりたい。
そんなことを考えていると、下半身が疼き始める。シリウスは自分の浅ましさに呆れると頭を振り、邪念を消そうとするが消えない。それどころか余計に意識してしまう。
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「どうした?」
「その……」
何かを言いかけて口籠る彼女にシリウスは首を傾げると、意を決したようにアステルが顔を上げた。
「お話をしたいなと思って……」
「ここでか?」
「……ええ」
そう言ってアステルはベッドの端に腰掛けて彼の隣に座った。シリウスは少し戸惑う、今の彼女はいつも以上に艶っぽく見えるからだ。頬を染め、潤んだ瞳で見つめられ、シリウスは胸の奥がざわつくのを感じる。それに先ほど風呂に入ったばかりなのか石鹸の良い香りも漂い、金色の長い髪も少し濡れており、肌もほんのりと上気しているように見える。
シリウスは思わず唾を飲み込んだ。すると、アステルはシリウスの手を両手で掴むとそのまま胸に押し付けた。柔らかい感触が手に伝わる。それだけではない、ドクンドクンという心臓の音まで伝わってくるのだ。シリウスは顔を真っ赤にして硬直するが、アステルは彼の手に自分の手を重ねるとさらに強く押し当てる。
「ア、アステル……?」
突然の事にシリウスは驚くが、柔らかい感触に思考が停止する。アステルの手は小さく震え、シリウスの手に伝わってくる心音はだんだん早くなり、熱い吐息と共に彼女は呟いた。
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