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「私も先ほどこのお話を伺いました。身に余る光栄であり、ぜひ前向きに進めて頂ければいいのではないかと思っております。」

私がしっかりとお母様の目を見てそのように返せばにっこりと微笑んでくださいます。

「え?サリー?別に無理に受ける必要はないんだよ。陞爵だって今までのようにどうにか逃げられるかもしれないし、サリーの身を犠牲にしたいなんて思っていないよ?」

お父様がおろおろとしながらそうおっしゃいますが、そうじゃないのです!

身を犠牲にしたのはロディ様との婚約です!

「お父様、ドルマン侯爵令息との婚約はナシェルカ伯爵家にはなんのメリットもありませんでした。特にお父様が陞爵を断っていたのならなおのこと!しかし、フレッド様との婚約にはメリットしかございません。私も貴族の娘です。自分の気持ちだけで結婚したいと願ったことはございません。しかし、せめてメリットがある婚約がいいとは望んでいました。それがこんな形で提案頂けるのであれば、それは歓迎いたします。これは自分を犠牲にしているのではありません。どちらかというとこれも売り込みの一つなのです!」

私がお父様にこう言い切ると目の前に座っているフレッド様が笑いを堪えて…いえ、はっきりと笑ってらっしゃいます。

「サリー…あなた、第二王子殿下の前でいう言葉じゃないと思うわよ…」

お母様が呆れたようなお顔を私に向かっております。

あら?私なにか間違ったかしら。だってフレッド様だって私を愛しく思ってくださって結婚するわけではないのだし失礼ではないわよね。でも淑女が心の内を明かすべきではなかったわね。

「フレッド様、大変失礼いたしました…」

「いや、構わないよ。くくっ...伯爵、サリー嬢はこのように言っているが、了承いただけますか?」

お父様はそれでも不安気にお母様を見られますが、お母様がこくんと頷かれると観念したような顔になり

「畏まりました。しかし、サリーは大事な私たちの娘です。第二王子殿下といえど娘を不幸にするようでしたら私たちはそれ相応の対応をさせて頂きますので、そのようにご承知おきください。」

厳しい顔をしながら念を押すお父様。

お父様………………その対応を何故ドルマン侯爵にしなかった!?根本的に間違っています!

「畏まりました。サリー嬢を必ず幸せにすると誓います」

フレッド様がそのようにおっしゃい、私に微笑まれます……

あぁ、かっこいい人はなにを言っても絵になる……
もうその一言だけでいい気がします……

そう私が空想の世界へ飛び立とうとしているとフレッド様が私の目の前に歩いてこられ、思考を引き戻されます。
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