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しおりを挟むでも謝罪されるようなことはなかったのです。それに男としてあるまじき行為ばかりの婚約者がいた私からしたら、そんなこと気にもならないのにこんなものをもらうなんて…
「第2王子殿下、お心配り大変ありがたく思います。しかし、謝罪されるようなことはございません。それなのにこのような品を頂くなど…」
「サリー嬢、これは私からの気持ちなのです。私の為と思って受け入れてほしい」
そう言われてしまえばこれ以上はお断りできません。
素直にお礼を言って、頂戴するしかありません。
「畏まりました。第2王子殿下のお気持ち大変ありがたく頂戴致します。」
お父様が隣でにこにこしながら感謝を述べて受け取っているわ。
お父様、情に脆いのが唯一の弱点かと思っていたけど、もしかしてお酒も弱点なのかしら。これは早急に執事とすりあわせが必要だわ…
「ところでサリー嬢、できれば昨日のようにフレッドと呼んで頂きたいのですが。」
突然フレッド様がそのようなことをおっしゃいますが、昨日は第2王子殿下とは知らず、ただのフレッドとして接してと言われたのでフレッド様と呼ぶことができたのです。でも今は第2王子殿下としっています。それなのにフレッド様と呼ぶだなんて不敬にあたる行為かと思うのです。
「昨夜は知らなかったとはいえ、大変失礼いたしました。ですが、第2王子殿下をそのように呼ぶことなど不敬にあたります。ご容赦頂ければと…」
「呼ばれる私がそう呼んでほしいと願っている。不敬でもなんでもない。昨夜のようにぜひフレッドと呼んでください」
……何故にこんなに名前呼び推し?
……伯爵令嬢でしかない自分がこれに抗えるすべはない…
「畏まりました…では公の場以外ではそのように呼ばせていただきます。」
さすがに公の場では無理です。
そんな身分不相応な行い、身を滅ぼしかねません!
「わかった。ではそのように。してサリー嬢、その手はどうしたのですか?昨日見た時はそのような色ではなかったと思うのだが」
ふと私の手を見るフレッド様。
さっきまでハンカチの染め作業をしていたので手にブルーベリーの色がついており、紫色になっているのです。
「あっ、失礼いたしました。先ほどまで染め作業をしていたためその染料が手についてしまっているのです。」
私はすぐに見苦しい手をハンカチで隠しますが、フレッド様は気にされてらっしゃらないようで興味深そうに話しを続けます。
「サリー嬢は自分でも染め作業をされるのですね。それに今日はブルーベリー。それはとても興味深い。ぜひ染めた物を見せて頂けませんか。」
そのような申し出断れるわけもなく、思案しながらちょうど今がお昼時なのを思いだしました。
「フレッド様、不躾ではございますがお食事はもうお済ですか?もしまだでしたら我が家もこれからですのでご一緒にいかがでしょうか?食事は昨夜話しておりましたわが領地で取れた農産物を使っております。染物はもうそろそろ乾くかと思いますので、食事を召し上がられてからご用意いたします。」
フレッド様は午前の政務が終わりそのままの足で出向いたので食事はお済でないとのこと。大広間でと私は思っていたのに、父が執事に私とフレッド様の分だけ庭が見えるサロンに用意するように指示し、私たちはそちらに向かっている。
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