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しおりを挟む「正直彼自身の事を許せるかと言うと、腹立たしい事ばかりだ。先ほどのマリアを呼ぶ態度も彼はすでに平民なのに公爵家の婚約者を呼び捨てにしたんだ。その場で拘束しても誰からも文句は上がらない。それに学生時代あれだけ教室に来ては君のことを罵倒していて、あのパーティーでは魔女狩りをするかのようにマリアの事を罵倒していたんだ。正直殺しても殺したりないほど腹立たしいとおもっているよ!
だが、家族環境を考えると、その環境が哀れであることは事実だと思う。あの環境の中で真っ当な人間ができるとは思えない。そして、裁判の中で言われた通り1年間、過酷だと言われる糞尿処理施設での労働に従事してきたんだろう。侮辱罪と慰謝料の150万ルペルの支払いは完了していた。あの甘ったれた考えだったのに、1年間耐えられたことだけは認めてやれると思う。まぁ、それにあのパーティーから裁判までの出来事は平民の中でも話題になり、今でも色々なところで演劇にもなっている。その中で絵姿が出回っていたので、働き口を見つけることは至難の業だろうな。
まぁ、それらの事を踏まえて、公爵家の仕事ではなく、俺個人の仕事として隣国の掘削作業員としてなら雇うことを許してもいい。他の作業員と条件は同じ、移動費はこちら負担、住居も2か月間はこちらで負担する。もしそこで評判が良ければそのつながりから他の仕事も与えてもらえるかもしれないが、評判が悪ければ即刻出て行ってもらう。元貴族なんて特別扱いもない。
それが嫌ならうちでは雇わない。それにもしも雇ったとしても一言でも我が家の事やマリアの事を馬鹿にしたり、貶めたりするような言動をしたのなら、今度は裁判ではなく、影にその場で始末するように指示を出す。俺はそれほどできた人間ではない。それでも良ければ雇ってやる。どうする?」
………途中まではさすが次期当主の言葉として聞いていたのですが、最後はなんだかザックの闇を見た気がします。私が驚きでザックを見ると、ニコッと微笑んでくれますが、このタイミングでの微笑みも少し怖いです。でも実際、もし雇われたとして、雇い主を馬鹿にするような言動をしたのであれば、その人に落ち度があるということ。始末するかどうかは別として、脅す必要性はあったのかもしれません。
「も、もちろんです!!それでかまいません!それで十分です!それに絶対に公爵家のこともマリア様のことも馬鹿になんかしません。あの裁判でマリア様やアイザック様なら自分のことも鞭打ちにと訴えることはいくらでもできたはず。それなのにそうはしなかった。それがどうでもよかったからだとしても自分としては感謝の気持ちしかないんです。
本当にありがとうございます!!!そして、本当に申し訳ありませんでした!!!!」
こんな話の後で、スティーブ様は仕事の事を教えると執事が連れて行ってくれました。私たちに何度も何度も頭を下げ、部屋を出て行きました。
「ザック、ありがとう。でもスティーブ様のこと、本当によかったの?」
私はなんとなくそんなことを聞いてしまいました。ザックの対応が嫌だったのではありません。どちらかと言えばその判断力、対応力を素晴らしいと改めて尊敬してしまいました。
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