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スティーブ・レイズ視点⑤
しおりを挟む風呂で身体を洗ったはずなのに、身体からはあの匂いがまだする気がする…それに割り振られた部屋には一応ベッドはあるが、とても硬くて、こんなベッドでは寝られない。
それに食事の時間だと言われたが、体中から匂いがする気がして、食欲も湧かない。一緒に仕事をしたやつらが食べたくなくても腹に入れろと言うが、無理だ…食べたくなんかない…
そう思って食事を残した。そして、眠れないまま朝が来て、朝食もやはり残し、仕事に行く。今日は昨日とは違う部屋で、昨日よりも日にちが経った部屋だと言われた。その部屋は昨日ほど匂いもきつくなく、マスクも必要なかった。でも力は必要で必死に掘り返そうとするのに腹が減って力がでない………腹が減った………
貴族の時は腹が空いたらメイドに言ってお茶に茶菓子を運んでもらっていたのに、今は好きな時に物を食べることすらできない……
こんな生活をこれから一生するのか?いやだ……耐えられない………
どうして俺は婚約破棄だなんて言ったんだ……ナディアの話が本当だとしても叩いているわけでもない。あのくらいのいじめが本当だとしても放っておけばよかったんだ。あの一言がなければ今でも貴族だったのに。将来も楽して生活していけたのに。あの一言だけでこんな事になるなんて……
ここでの生活が始まって、1週間が経った。毎日スコップを使うため、手には豆ができ、潰れた。そして、手のひらが膨れ上がっていた。豆が潰れた場所に雑菌が入ったんだろう、ここではよくあることだと言われた。だからけがをしないように、豆ができたらすぐに包帯を巻いたり予防をしろと言われた。腫れあがって痛くても仕事をしなければいけない。痛いのにスコップを握り、力が入らなくても土を掘り返す。いやだけど、それが少しずつ当たり前になってきた。そんな頃、父を見かけた。まだ1週間しかたっていないはずなのに、以前よりとてもやつれているように思う。以前は威張るような歩き方をしていたのに、今は背中を丸めて歩いている。
そしてさらに時間が経って、ナディアを見かけた。ナディアも父のように背中を丸めて歩き、以前と白さは変わらないが、以前よりもずっと病的に見える。その一つが手のひらが腫れて丸々としているのと、足も腫れてしまっているからだろう。足に傷でもできたのか、そこから雑菌が入ったんだろう。ぱんぱんに膨れてしまっている。なんだか頬もこけてしまっている。今はナディアを見ても、なぜあんなに守ってやろうと思えたのかもわからない。俺は何を考えていたんだ……俺はなんてことをしたんだ………
あぁ……おれはなぜこんなところでこんなことをしているんだ………
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