えと…婚約破棄？承りました。妹とのご婚約誠におめでとうございます。お二人が幸せになられますこと、心よりお祈りいたしております

トーマス・スターン視点②

だが、家に来ていた医者が捕まったという。医者とは捕まるものなのか？
まぁ、だがあの聖水を買うのにそろそろ金が尽きそうだったのでよかった。その頃には投資していた金はもう回収できないものになってしまっていた。これから必ず業績が伸びると言われたから投資したのになんてことだ。

そしてその頃飲み屋で仲良くなったのがレイズ伯爵だ。彼はもうすでに伯爵家を継ぎ当主となっていた。そして、新規事業をするから一緒にしようと誘われた。内容は植物の栽培や隣国への輸出だという。それだけで予想利益はかなりな額だった。

だからすぐに話を受けた。そして、その話を受け、仕事で利益が出始めた頃、お互いの家の結びつきのために子ども同士を婚約しようと言われた。これは正直迷った。レイズ伯は評判がいいとは言えない。それなのに家族になってしまっていいものか。だが息子の歳を聞けばマリアと同じ歳だった。
もう弟の家で暮らしているマリアと婚約させてしまえば何かあれば弟に責任を押し付けられるし、最悪マリアとの縁を切ってしまえばいいだけ。そう思い付いたらすぐにも婚約を結んだ。そしてそれをマリアに知らせにいった。父上や弟に文句を言われたが、マリアの父は俺だ。文句を言われる筋合いはない。

だが利益が出始めた頃、父上から子爵と名乗るように言われた。なぜ俺は次期伯爵家当主なのに子爵などを名乗らなければならないのか。だが今は社交界にはあまり出ていないので、自己紹介することも少ない。今のうちにもっと利益をあげて、父上に早く当主交代してもらうしかない。

だがいいこともあった。領地を預けられたということで、税収が入ってくる。どうせならたくさんがいい！だから税をあげて、税収を増やした。子爵領なんて報告もしなくても国からの指摘なんて入らないだろう。そして、レイズ伯から今よりも売上を上げるために、もっと広く、日があまり当たらない場所で植物を育てたいと言われ、一緒に見にいった。見に行った土地のうち、人気がない林をレイズ伯が管理させてほしいと言う。どうせなにも使っていない林だ。もちろん許した。

だが、数ヶ月後、興味本位でその地を見に行くと昔何かの本でみた、違法薬物が生き生きと育っていた。なんだこれは………
違法薬物の栽培なんて違法だ！そんなこと子どもでも知っているぞ！！

俺はすぐにレイズ伯家に怒鳴り込みに行った！
レイズ伯は動揺した様子もなく、あの薬物を栽培・製造し、隣国へ輸出した時の3年間の予想利益は俺が母上に貰った資金の5倍程だった。レイズ伯は子爵領であれば、警察が見回りをすることなども殆どないという。確かに今まで子爵領に立ち入り調査が入ったなど聞いたことがない。子爵領など爵位が低いので目をつけられにくいということだろう。それにレイズ伯も目をつけたということか。そうか。見つかることもなく、あの金額が入ってくるのなら問題なんてないじゃないか！！！

そう思っていたのに………

立ち入り調査は行われていた。税を報告していないことも、自分で使っていたこともバレていた…

裁判では全て有罪だった。

しかも長男である俺が廃籍され、リアンが当主。もう誰も守ってなどくれない。