選ばれたのは私ではなかった。ただそれだけ

暖夢 由

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65.父だった男からの手紙(中)

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私はマリアがまだそこまでの心酔はしていないと信じていた。だが手遅れにならないうちに、そう思ってヨランダに薬を手配してもらうよう頼んだ。そして私はもらった薬をマリアに飲ませたんだ。

その薬を飲んだマリアは私の予想に反して、2時間後位からは激しく苦しみ始めた。最初は頭痛を訴え、すぐに嘔吐を始めた。ここまで魔女に心を預けていたとは。そのことに唖然として私はただ立ち尽くすしかできなかった。

だがこれでもう大丈夫、もう魔女の誘惑などに心を揺さぶられることもないだろう。そう安心していた。

それからも私はヨランダに言われる通り、少量ずつ薬を与え続けた。ここまで魔女に心を預けていた場合少量ずつを少しずつ与え心を治すしかない。そう言われたから。

しかし飲んでも飲んでもマリアの症状は良くなる事はなかった。それどころか日に日に悪くなるばかり。そしてこれ以上はまずいのではないかと思った私はヨランダに相談し医師に診てもらおうと言った。するとヨランダは自分の知り合いの医師がいるから彼を連れてくると言った。

そしてヨランダが連れてきた医師はマリアを見た瞬間、顔が青ざめた気がした。そして一言言った。”手遅れだ”と。悲しみに落ち込んだ私にヨランダは寄り添ってくれたよ。
『マリアは心の中から魔女を追い出すのを拒否したんだろう。だから最後まで良くなることがなかったのだと。だからあなたはなにも悪くない』そう言ってね。私は最後までマリアが自分よりも魔女を選んだことにひどく落ち込んだ。

そんな時ずっとそばで寄り添ってくれたのがヨランダだった。そしてヨランダはこうも言った。一人娘のナタリアもきっと悲しんでいる。彼女までもが魔女に魅入られる前に新しい母親を家に迎えて彼女の寂しさを取りに去ってあげるべきだと。

確かにその通りだと思った。だから私は両親に新しい母親としてヨランダを家に迎え入れることを告げた。
しかしなぜか母たちはそれをかたくなに拒否した。そういえば母も魔女に魅入られた一人だったと思い出した。もしかして魔女の影響力は母にまで…

そう思ったから、少し強硬ではあったがヨランダを妻として迎えたんだ。
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