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26.希望の女神
しおりを挟むそう喜んだカダールの元へ女性がやってきた。
こちらも白い服を身にまとった医師なのか、その助手なのかはわからないが、手には食事を持っている。
部屋に入ってきた彼女はドアの鍵を閉め、机に食事を下すとカダールの拘束具を外し始めた。
「大丈夫ですか?食事を2日間も取られていないと伺いました。さぞかしお腹が空いていたでしょう。どうぞ召し上がりください。
ですが、この施設には少し不安定な患者さんもおられますのでこの部屋の中から出られませんように。
食事を食べ終えられた頃、時間を見計らってまた来ますのでゆっくりなさっていてください。
さぁ、食事をなさってください」
そう言って、女は部屋から出て行った。
本当なら一刻も早くここから出ていきたいところ。
だが、目の前には食事が用意されている。
匂いを嗅いでいるだけで先ほどから腹の音が鳴りやまない。
ここを出ても食事を取るあてはない。
それにあの女は食事が終わったらまた部屋にくると言っていた。
きっと隙を見て逃がすつもりなんだろう。
それならばここは一旦食事が優先!
カダールは2日ぶりの食事にかぶりついた。
豪華とまではいかないが、肉もある。スープもある。
一口食べると余計に腹は空き、食べ終えるまで手は止まらなかった。
「ふぅー…」
腹いっぱいになったカダール。
食事を終えたころ女は来ると言っていた。
だが、しばらく待っても女は来ない。
何をしているんだ!
怒りを感じるカダールだが、鍵をかけられている部屋から出るには女を待つしかない。
今もきっと隙を見計らっているのだろう。
もう少し待つか……
そう思ってベッドに横になった。
まだか?まだか?と思ううちに瞼が重たくなり、いつの間にかカダールは眠ってしまっていた。
目を開けるとそこには先ほどの女がいた。
「おいっ!遅いぞ!
早くここから出してくれ!!」
やっと現れた迎えに安心したカダールが外に出ようと、身体を起き上がらせようとするが、身体を動かすことができない。
なんだ?
その違和感に視線を身体に移すと、身体はまた拘束されてしまっていた。
腕には針のようなものが刺されており、そこから血が下の受け皿に向かって落ちている。
「お、おい………
何しているんだ?早くここから出してくれ………」
この女は自分の味方ではなかったのか!?
困惑しながら必死に声を絞りだすが、目の前に広がっている光景に恐怖で身体がこわばる。
腕を引こうにも肘と手首が固定されているために動かすことさえできない。
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