20 / 41
20.ここに来た真実
しおりを挟むあの日リボンが食事を探しに行けと言ってカダールが街に出た時にカダールは思いついた。
自分には金も財産もないが、リボンと言う女がいる。
少し高飛車できつそうな顔はしているが、それでも売れば多少の金くらいにはなるだろう。
だがそんなことを言えば本人はついてこないし、何よりギャーギャーと騒ぐに違いない。だからリボンの容姿や性格を話した上で、自らルドファについて行くように仕組み、売ったのだ。
カダールが席を立ったのが合図だった。リボンが自分で動かなければ、ルドファが声をかけるはずだった。
だが、カダールの予想通り、リボンは案の定自分からついていった。
2人が出て行ったのを確認して席に戻ると、店の主人からルドファが預けていたお金を受け取ったのだ。
そんな話を聞いてリボンは唖然とした。
カダールが自分を売った。
そのお金を受け取った。
「そ、そんな………嘘よ………そんなことあるはずが………
そうよ。それならおかしいわよ。
私はここに来てとても丁寧にもてなされたのよ!
ルドファ様のお気に入りだからに決まってるじゃない!!私は騙されないわよ!!!」
リボンの言葉を聞いてもグラファイはニヤニヤとした顔を崩すこともない。
「そりゃあ気に入ってはいるだろう。
貴族の部屋に入れる女はそう多くはないからな。
貴族になりきれる女は少ない。平民が真似しようとなるとまずマナーを身につけなければならない。ここで一からそれを身に着けさせるには時間と金がかかりすぎる。
だが、元貴族が身売りするにしてもこんな所ではなくもっと高級娼婦に身を売る。
だからこの部屋にはあまり女が入ってこないんだよ。
だからお前のような女が目の前にいれば、そりゃ気に入りもするさ。
なによりこの部屋の女は壊されるのが多いっていうからな。だから先に話をもらった僕が2か月間分の金を払ったんだよ。人に壊されたものなんか使いたくはないからね」
「ちょ、ちょっと!
すでにお金は払っているですって?そんなもの私はもらってないわ。
それに壊れるってなんなの?そんなのいやよ!!
はやくルドファを呼んで!!っっ……………たい……………」
自分の為の金がすでに支払われたと聞いて、リボンは許せなかった。
どうして自分の価値が人に支払われなければならないのか。せめて自分に支払うべきなのだ。だからルドファに話を聞こうと思ったのに、またあの痛みがリボンを襲った。グワングワンと頭が揺れる感覚。
口の中が切れているのか、血の味が広がる。
痛い……いたい………この男はどうしてこんなに叩くの。
4
お気に入りに追加
2,518
あなたにおすすめの小説
不倫した妹の頭がおかしすぎて家族で呆れる「夫のせいで彼に捨てられた」妹は断絶して子供は家族で育てることに
window
恋愛
ネコのように愛らしい顔立ちの妹のアメリア令嬢が突然実家に帰って来た。
赤ちゃんのようにギャーギャー泣き叫んで夫のオリバーがひどいと主張するのです。
家族でなだめて話を聞いてみると妹の頭が徐々におかしいことに気がついてくる。
アメリアとオリバーは幼馴染で1年前に結婚をして子供のミアという女の子がいます。
不倫していたアメリアとオリバーの離婚は決定したが、その子供がどちらで引き取るのか揉めたらしい。
不倫相手は夫の弟のフレディだと告白された時は家族で平常心を失って天国に行きそうになる。
夫のオリバーも不倫相手の弟フレディもミアは自分の子供だと全力で主張します。
そして検査した結果はオリバーの子供でもフレディのどちらの子供でもなかった。
【完結】夫もメイドも嘘ばかり
横居花琉
恋愛
真夜中に使用人の部屋から男女の睦み合うような声が聞こえていた。
サブリナはそのことを気に留めないようにしたが、ふと夫が浮気していたのではないかという疑念に駆られる。
そしてメイドから衝撃的なことを打ち明けられた。
夫のアランが無理矢理関係を迫ったというものだった。
【完結】悪女のなみだ
じじ
恋愛
「カリーナがまたカレンを泣かせてる」
双子の姉妹にも関わらず、私はいつも嫌われる側だった。
カレン、私の妹。
私とよく似た顔立ちなのに、彼女の目尻は優しげに下がり、微笑み一つで天使のようだともてはやされ、涙をこぼせば聖女のようだ崇められた。
一方の私は、切れ長の目でどう見ても性格がきつく見える。にこやかに笑ったつもりでも悪巧みをしていると謗られ、泣くと男を篭絡するつもりか、と非難された。
「ふふ。姉様って本当にかわいそう。気が弱いくせに、顔のせいで悪者になるんだもの。」
私が言い返せないのを知って、馬鹿にしてくる妹をどうすれば良かったのか。
「お前みたいな女が姉だなんてカレンがかわいそうだ」
罵ってくる男達にどう言えば真実が伝わったのか。
本当の自分を誰かに知ってもらおうなんて望みを捨てて、日々淡々と過ごしていた私を救ってくれたのは、あなただった。
お久しぶりですね、元婚約者様。わたしを捨てて幸せになれましたか?
柚木ゆず
恋愛
こんなことがあるなんて、予想外でした。
わたしが伯爵令嬢ミント・ロヴィックという名前と立場を失う原因となった、8年前の婚約破棄。当時わたしを裏切った人と、偶然出会いました。
元婚約者のレオナルド様。貴方様は『お前がいると不幸になる』と言い出し、理不尽な形でわたしとの関係を絶ちましたよね?
あのあと。貴方様はわたしを捨てて、幸せになれましたか?
【完結】旦那に愛人がいると知ってから
よどら文鳥
恋愛
私(ジュリアーナ)は旦那のことをヒーローだと思っている。だからこそどんなに性格が変わってしまっても、いつの日か優しかった旦那に戻ることを願って今もなお愛している。
だが、私の気持ちなどお構いなく、旦那からの容赦ない暴言は絶えない。当然だが、私のことを愛してはくれていないのだろう。
それでも好きでいられる思い出があったから耐えてきた。
だが、偶然にも旦那が他の女と腕を組んでいる姿を目撃してしまった。
「……あの女、誰……!?」
この事件がきっかけで、私の大事にしていた思い出までもが崩れていく。
だが、今までの苦しい日々から解放される試練でもあった。
※前半が暗すぎるので、明るくなってくるところまで一気に更新しました。
(完)「あたしが奥様の代わりにお世継ぎを産んで差し上げますわ!」と言うけれど、そもそも夫は当主ではありませんよ?
青空一夏
恋愛
夫のセオは文官。最近は部署も変わり部下も増えた様子で帰宅時間もどんどん遅くなっていた。
私は夫を気遣う。
「そんなに根を詰めてはお体にさわりますよ」
「まだまだやらなければならないことが山積みなんだよ。新しい部署に移ったら部下が増えたんだ。だから、大忙しなのさ」
夫はとても頑張り屋さんだ。それは私の誇りだった……はずなのだけれど?
冷遇された王妃は自由を望む
空橋彩
恋愛
父を亡くした幼き王子クランに頼まれて王妃として召し上げられたオーラリア。
流行病と戦い、王に、国民に尽くしてきた。
異世界から現れた聖女のおかげで流行病は終息に向かい、王宮に戻ってきてみれば、納得していない者たちから軽んじられ、冷遇された。
夫であるクランは表情があまり変わらず、女性に対してもあまり興味を示さなかった。厳しい所もあり、臣下からは『氷の貴公子』と呼ばれているほどに冷たいところがあった。
そんな彼が聖女を大切にしているようで、オーラリアの待遇がどんどん悪くなっていった。
自分の人生よりも、クランを優先していたオーラリアはある日気づいてしまった。
[もう、彼に私は必要ないんだ]と
数人の信頼できる仲間たちと協力しあい、『離婚』して、自分の人生を取り戻そうとするお話。
貴族設定、病気の治療設定など出てきますが全てフィクションです。私の世界ではこうなのだな、という方向でお楽しみいただけたらと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる