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14.新しい出逢い
しおりを挟むカダールが連れてきたのは街の中では比較的綺麗な店に連れてこられた。
そこには男性がカダールを待っており、なにか挨拶をしていた。
男性は綺麗な服を着ているが、その生地は高価なものではなさそう。しかし、目を引くのはその指に光る大きな石がついた指輪。
きっとかなり高価なものなんじゃないか。
リボンはそう目を輝かせた。カダールなんかといるよりこの男といたほうが贅沢な暮らしができる。
この男が貴族を知っていたらその男に乗り換えればいいだけ。
カダールと話していたその男の目がこちらに向いた。
他の男たちのようにリボンを見定めるように上から下まで視線を巡らせてくる。
それからまるで突然の恋に侵されたように熱いまなざしでリボンを見つめた。
「リボン、こちらはルドファさんだ。僕がお世話になった方で、今日食事をご馳走してくれるそうだ。
ルドファさん、こちらがリボンです」
「リボン、その容姿にふさわしい可愛らしい名前のお嬢さんだ。
ルドファと申します。この界隈でいくつか事業をやっております。以後お見知りおきを」
ルドファはリボンの手を取り、その甲にチュッと口づけをした。
その仕草にリボンの胸は高鳴った。
カダールは出会った当初こそリボンのことを姫のように扱い、その行為に夢を見たが、最近はいることが当たり前でどちらかと言えば、その扱いもおざなりだった。
それでもカダールといるからこそ伯爵家にいられるんだと理解していたから、不満もなかったが、今や貴族ですらないカダールよりいくつか事業をしているというルドファの方が魅力的なのはいうまでもない。そのうえ自分のことを姫のように扱ってくれそうな男。
乗り換えたいと思うのは言わば必然だった。
3人で食事をし、ワインを飲み、そろそろすべて食べ終わると言うとき、カダールが席を立った。
いまだ!!いましかない!この時を逃したら次はないかもしれない。
「ルドファさん、私少し酔ってしまったみたいなんです。少し外の空気が吸いたくて……よければ外までエスコートしていただけません?」
リボンは右の手で右の頬を包み、首をかしげながらそうルドファに問いかけた。
ルドファはその言葉に驚いたように目を丸めたが、すぐに微笑んで「もちろん、光栄です」そう言って、リボンの手を取り、立ち上がらせたと思うと、腰を抱いて店の外に向かって歩き始めた。
『そうよ、私はこうやって素敵な男性にこそ求められるべきなのよ。それを今までカダールにだけ注いでしまっていたなんて、時間を無駄に消費してしまったわ』
そう後悔しながらも、ルドファの肩に頭を寄せて、甘えるようにして歩いた。
店を出るとそこには馬車が用意されており、男が扉を開けると、二人でそこに乗り込んでいく。
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