6 / 41
6.神殿からの使者
しおりを挟む
それから3日間キュリールはカダールと普段通り過ごした。
そして約束通り3日後、伯爵家には神殿からの使者がやってきた。
その場にはキュリールとキュリールの両親キジョルとブレンダ、そしてカダールがいた。カダールに関しては今日この場にいるようにとだけ伝えられ、内容は把握していなかったので、神殿からの使者がやってきて驚いていた。
全員が広間に揃ったところで神殿の使者が話し始める。
「本日をもってお2人キュリール・タンゼットとカダール・タンゼットの離縁が認められたことを報告いたします」
「は?どういうことだ?私は離縁などするつもりはない!」
使者の言葉を聞き、カダールはいやいやと頭を振った。
しかしその言葉を父キジョルが制する。
「静かにしなさい。
この方々も暇では無いのだ。話の途中に口を挟まぬよう。
大変失礼いたしました。続きをどうぞ」
「コホン、では。
伯爵家当主の申告により、お2人の婚姻関係は本日をもって破棄されました。理由は婿殿カダールの不貞によるものと認めます。
そのため離縁条件は伯爵家当主の望む所になります。
その内容がこちら。
・婿殿は本日をもって伯爵家を出ていくこと。
・その際愛人も共に連れて行くこと
・慰謝料等の要求は一切しない。代わりに伯爵家所有のもの、または伯爵家の資産で購入したものは何一つ持ち出さないこと。
以上がタンゼット家当主からの要求です。
私どもも多くの離縁に関わってきましたが、これほど欲のない要求は見たことがございません。
婿殿はご当主に感謝すべきだと思いますよ」
使者は感謝すべきだとカダールに語りかけるがその言葉に頷くことはない。
なぜなら彼は離縁するつもりなどないのだから。
「ちょっと待ってください、どうして私とキュリールの離縁が成立することになるのですか?不貞って、愛人のことが原因なら愛人は法律として認められています。私はそれに適した事しかしておりません」
まるで自分が正しいというように胸を張ってそういうカダール。
キュリールの両親は今にも殴りつけそうな顔で彼を見ているというのに気づかないのか。
「それはあなたに承認されている愛人の他に愛人がおり、それが不貞行為と見なされるからですよ」
使者のその言葉に一瞬で自信満々の顔が崩れた。
「な、なんの話ですか?」
その言葉にキジョルが反応し、書類をカダールの前に散らした。
「こちらの話だよ。
我が家に断りもなく愛人なんて連れてきただけでも腹立たしいのに、外でも愛人を作っていたなんてな。
だがそのおかげでこうして離縁することもできるんだ」
カダールは目の前に散らばる書類を見て、先ほどまでの自信満々の顔は鳴りを潜め、顔が真っ青になっていく。
「ち、違う、
彼女は愛人なんかでは……」
「そうよ。お父様、彼女を愛人だなんて言ってはいけないわ」
思わぬ言葉にカダールは伏せていた顔をあげ、キュリールを見つめた。
その顔は女神でも見つめるような顔で、キュリールは同意するのだと疑わない顔に変化した。
「キュリール!!そう!!そうなんだ!!君ならわかってくれると思っていた。
どうせ離縁も両親に無理強いされただけなんだろう。僕は君を愛して「お父様、彼女はこの人の真実の愛の相手なのよ。そんな人が愛人でなんてあるわけないじゃない」
…………キュ、キュリール?………なにを言って」
そして約束通り3日後、伯爵家には神殿からの使者がやってきた。
その場にはキュリールとキュリールの両親キジョルとブレンダ、そしてカダールがいた。カダールに関しては今日この場にいるようにとだけ伝えられ、内容は把握していなかったので、神殿からの使者がやってきて驚いていた。
全員が広間に揃ったところで神殿の使者が話し始める。
「本日をもってお2人キュリール・タンゼットとカダール・タンゼットの離縁が認められたことを報告いたします」
「は?どういうことだ?私は離縁などするつもりはない!」
使者の言葉を聞き、カダールはいやいやと頭を振った。
しかしその言葉を父キジョルが制する。
「静かにしなさい。
この方々も暇では無いのだ。話の途中に口を挟まぬよう。
大変失礼いたしました。続きをどうぞ」
「コホン、では。
伯爵家当主の申告により、お2人の婚姻関係は本日をもって破棄されました。理由は婿殿カダールの不貞によるものと認めます。
そのため離縁条件は伯爵家当主の望む所になります。
その内容がこちら。
・婿殿は本日をもって伯爵家を出ていくこと。
・その際愛人も共に連れて行くこと
・慰謝料等の要求は一切しない。代わりに伯爵家所有のもの、または伯爵家の資産で購入したものは何一つ持ち出さないこと。
以上がタンゼット家当主からの要求です。
私どもも多くの離縁に関わってきましたが、これほど欲のない要求は見たことがございません。
婿殿はご当主に感謝すべきだと思いますよ」
使者は感謝すべきだとカダールに語りかけるがその言葉に頷くことはない。
なぜなら彼は離縁するつもりなどないのだから。
「ちょっと待ってください、どうして私とキュリールの離縁が成立することになるのですか?不貞って、愛人のことが原因なら愛人は法律として認められています。私はそれに適した事しかしておりません」
まるで自分が正しいというように胸を張ってそういうカダール。
キュリールの両親は今にも殴りつけそうな顔で彼を見ているというのに気づかないのか。
「それはあなたに承認されている愛人の他に愛人がおり、それが不貞行為と見なされるからですよ」
使者のその言葉に一瞬で自信満々の顔が崩れた。
「な、なんの話ですか?」
その言葉にキジョルが反応し、書類をカダールの前に散らした。
「こちらの話だよ。
我が家に断りもなく愛人なんて連れてきただけでも腹立たしいのに、外でも愛人を作っていたなんてな。
だがそのおかげでこうして離縁することもできるんだ」
カダールは目の前に散らばる書類を見て、先ほどまでの自信満々の顔は鳴りを潜め、顔が真っ青になっていく。
「ち、違う、
彼女は愛人なんかでは……」
「そうよ。お父様、彼女を愛人だなんて言ってはいけないわ」
思わぬ言葉にカダールは伏せていた顔をあげ、キュリールを見つめた。
その顔は女神でも見つめるような顔で、キュリールは同意するのだと疑わない顔に変化した。
「キュリール!!そう!!そうなんだ!!君ならわかってくれると思っていた。
どうせ離縁も両親に無理強いされただけなんだろう。僕は君を愛して「お父様、彼女はこの人の真実の愛の相手なのよ。そんな人が愛人でなんてあるわけないじゃない」
…………キュ、キュリール?………なにを言って」
135
お気に入りに追加
2,698
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
旦那様、そんなに彼女が大切なら私は邸を出ていきます
おてんば松尾
恋愛
彼女は二十歳という若さで、領主の妻として領地と領民を守ってきた。二年後戦地から夫が戻ると、そこには見知らぬ女性の姿があった。連れ帰った親友の恋人とその子供の面倒を見続ける旦那様に、妻のソフィアはとうとう離婚届を突き付ける。
if 主人公の性格が変わります(元サヤ編になります)
※こちらの作品カクヨムにも掲載します
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
彼女にも愛する人がいた
まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。
「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」
そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。
餓死だと? この王宮で?
彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。
俺の背中を嫌な汗が流れた。
では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…?
そんな馬鹿な…。信じられなかった。
だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。
「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。
彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。
俺はその報告に愕然とした。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
[完結連載]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜
コマメコノカ@大人の女性向け
恋愛
王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。
そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
あの日、さようならと言って微笑んだ彼女を僕は一生忘れることはないだろう
まるまる⭐️
恋愛
僕に向かって微笑みながら「さようなら」と告げた彼女は、そのままゆっくりと自身の体重を後ろへと移動し、バルコニーから落ちていった‥
*****
僕と彼女は幼い頃からの婚約者だった。
僕は彼女がずっと、僕を支えるために努力してくれていたのを知っていたのに‥
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】旦那様は、妻の私よりも平民の愛人を大事にしたいようです
よどら文鳥
恋愛
貴族のことを全く理解していない旦那様は、愛人を紹介してきました。
どうやら愛人を第二夫人に招き入れたいそうです。
ですが、この国では一夫多妻制があるとはいえ、それは十分に養っていける環境下にある上、貴族同士でしか認められません。
旦那様は貴族とはいえ現状無職ですし、愛人は平民のようです。
現状を整理すると、旦那様と愛人は不倫行為をしているというわけです。
貴族の人間が不倫行為などすれば、この国での処罰は極刑の可能性もあります。
それすら理解せずに堂々と……。
仕方がありません。
旦那様の気持ちはすでに愛人の方に夢中ですし、その願い叶えられるように私も協力致しましょう。
ただし、平和的に叶えられるかは別です。
政略結婚なので、周りのことも考えると離婚は簡単にできません。ならばこれくらいの抵抗は……させていただきますよ?
ですが、周囲からの協力がありまして、離婚に持っていくこともできそうですね。
折角ですので離婚する前に、愛人と旦那様が私たちの作戦に追い詰められているところもじっくりとこの目で見ておこうかと思います。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
二度目の恋
豆狸
恋愛
私の子がいなくなって半年と少し。
王都へ行っていた夫が、久しぶりに伯爵領へと戻ってきました。
満面の笑みを浮かべた彼の後ろには、ヴィエイラ侯爵令息の未亡人が赤毛の子どもを抱いて立っています。彼女は、彼がずっと想ってきた女性です。
※上記でわかる通り子どもに関するセンシティブな内容があります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
あなたの破滅のはじまり
nanahi
恋愛
家同士の契約で結婚した私。夫は男爵令嬢を愛人にし、私の事は放ったらかし。でも我慢も今日まで。あなたとの婚姻契約は今日で終わるのですから。
え?離縁をやめる?今更何を慌てているのです?契約条件に目を通していなかったんですか?
あなたを待っているのは破滅ですよ。
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる