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5.離縁の申請
しおりを挟むナリッタが家まで送り届けられた頃、ようやくキュリールは神殿に到着していた。
神殿で集めた証拠を見せながら離縁の申請を行う。
神官は話を頷きながら聞き、その書類を受理した。
しかし、結果が出るまで3日は時間を要すると言われた。
3日…長い気はするけれどそのぐらいならばナリッタも待てるだろう。
そうして神殿で手続きを終えたキュリールは自宅に戻った。
帰りつく頃にはすでに空は暗くなっていた。
沈んだ気持ちで家に入ろうとすると、玄関に両親の姿が目に入る。
神殿に向かう際に両親に文を出していたが、きっと受け取ってすぐに来てくれたのだろう。
私と旦那は学生時代に出会い、恋愛結婚だった。
両親がもっと良い相手はいる、そう言って止めるのも聞かず、私がこの結婚を押し切ってしまったのだ。
旦那は同じ伯爵家だったが5番目に生まれた子であり成人になるとともに貴族籍を失う予定だった。
しかし伯爵家当主予定の私と結婚したことにより、貴族として今でもその名を残すことができている。
恋は盲目とは聞いていたけれど、まさか自分がその状態に陥るだなんて思ってもみなかった。
よく見ているつもりだったし旦那の事はよく知っているつもりだった。だから何の疑いもなかったし不安になったりもしなかった。
でも結婚して1年後私がどれだけ盲目になっていたのか思い知らされた。彼は家に1人の女性を連れて帰ってきた。そして私に向かって「これから一緒に住むことになるからよろしくな」、そう言って紹介してきた。
両親はすぐさま旦那を追い出そうといったが、我が国の法律では男女ともに愛人を1人連れ込むことは認めるとされているから追い出すことも離縁することも難しかった。
子どもが少ない時代にその法律が定められ、そのまま変更されず今まで続いている。
だから堂々と愛人を我が家に連れてきたカダールを追い出すことは難しかった。
しかし、法律として1人の愛人を認めるからこそ、2人以上の愛人は認めておらず、逆にそれが判明すれば即時に離縁が認められる。
その際は、浮気された側の要求が概ね通るとされている。
1人目の愛人が許されているのは子作りのためとされており、不貞行為であるその他の愛人は許さないとされているのだ。
だから今回2人目の不貞行為が明るみになったカダールとの離縁の手続きはすぐに進められることになった。
しかし、一度離縁すると再縁は3年以上経たないと結ばれないとされているため、その審議は慎重に行われる。本人たちが冷静になるための期間でもあるのだ。
その為今回の案件でも3日の時間を要するのだ。
キュリールは両親にナリッタのことを説明した。
両親は話しを聞いてカダールについて激怒したのと同時に、ようやく離縁させてやれるとほっと安堵した。
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