ゲームのシナリオライターは悪役令嬢になりましたので、シナリオを書き換えようと思います

暖夢 由

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なんだこれは!?……ナタロンです……

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「……そうよね?

こんなに誰にでも見分けがつく簡単な見た目は酷似しているとは言わないわ。見分けることが難しいことを酷似と言うのよ?」

王妃様、ごもっともでございます。どうしてこの王妃様からこんなお馬鹿さんになってしまったのでしょう……なんだか悲しくなってしまいます。

「王妃様!!失礼を承知で申し上げます!これらは子どもだましのように絵など描いておりますが、それさえなければよく似ているものです!これを盗作と言わずしてなんと言うのか…」

「………でもこれを描いて販売しているのでしょう?ならば見分けはつくじゃない。
なければ、なんて関係ないわ。現にここに絵が描いてあるのですもの」

王妃様の一言に男爵はなにも言い返すことさえできず、でもなにか言いたいのでしょうね。口をパクパクとさせています。

「……ジョンの教育はもう一度やり直さなければ仕方がないだろう。ここまで酷いとは。私も王妃もこの事実からは逃れられないようだ…」

王妃様と王子のやり取りを黙って見ていた陛下がぽつりとそう呟かれます。

正直今からでなにがどう変わるかはわかりませんが……再教育はすべきだとは思います…

その言葉を少しだけ顔を歪ませながら聞いた王妃様はナタロンを一口召し上がられます。

「……っ」

ナタロンを口に含んだ王妃様はすぐに扇子で口元を隠し、お茶を召し上がられます。普段は指先の仕草にまで気を配っている王妃様が、少し必死でお茶をコクコクと召し上がっています。

不敬は承知で……口元がにやけてしまいそうです。

その様子を横目に陛下と宰相様も同じようにナタロンを口に運びます。

「「…んっ!?」」

王妃様と同じようにすぐさまお茶を手に取り、ごくごくごくっと飲み干していきます。

「なんだこれは!?」

陛下が苛立ったようにそうおっしゃいますが、この場にいる誰もがその気持ちがわかる気がします...でもなんだと言われれば……”ナタロン”?

「陛下、それはナタロンですよ。口直しをしたいのでしたらシア・スイーツ店のマカロンをお召し上がりください。別に召し上がっていただかなくてもいいんですが、評価もありますので仕方ないですからね」

お父様が陛下たちの様子を見て冷たくそう言い放ちます。

そう言えばお父様も宰相様も同い年で学生の頃も仲がよかったと言っていました。でも私と王子の婚約を無理やりにこじつけられてしまってから、お父様は王宮に用事がなければ寄り付かなくなってしまったと誰かが言っていました。友人とは言え、明確な身分差があり、それを盾に命令されてしまえば断ることは出来ない。だから、ささやかな抵抗なんでしょうね。

それにしても不敬にしか聞こえませんが…
これで問題視されないと言うことは王子を押し付けた負い目は大きいと言うことでしょうか。
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