ゲームのシナリオライターは悪役令嬢になりましたので、シナリオを書き換えようと思います

暖夢 由

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陛下と王妃様と宰相様

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そうして馬車は王宮につき、すでに出迎えが入口で待っていたため、そのまま向かいました。

案内されたのはお茶会なども行われるようなサロンでした。長いテーブルがあり、そこにはすでに奥から王子、男爵、ヒロインが座っており、その向かいの席の入口側に公爵夫妻も座っていらっしゃいます。私たちは王子たちの向かいの席に案内されます。

先ほどまではいなかった私の姿を見て、王子とヒロインが睨むように見てきますが、私はなにも悪いことはしておりません。なので無視させていただきます。

王子の前にお父様、男爵の前にお母様、ヒロインの前に私が座ります。そして私の隣が侯爵夫妻です。
侯爵夫人も来てくださったのですね。なんだか申し訳ないですが、感謝です。

座ったところでドアがノックされ、開かれると陛下たちが入っていらっしゃいます。全員が腰を上げようとしますが、陛下に手で制され、そのままの姿勢で頭を下げます。
驚いたことに陛下の隣には宰相様の姿だけでなく王妃様の姿もあります。

「畏まった挨拶は抜きにしよう。話は簡単に公爵の使いから聞いている。盗作騒ぎがあったが、その場では収まらないためとあったが、ジョン、お前がいながらその場で解決は出来なかったということなのか」

陛下が王子に尋ねられます。
ただ、王子がいても収まらなかったのではなく、王子がいたから収まらなかったのです。

「はい。陛下。申し訳ございません。双方の言い分が真っ向から食い違うため、陛下の意見を伺いたいと参上致しました。」

「まぁよい。話は全てを聞いた後でまた聞く。それで詳細を。」

「はい。陛下私から説明いたします。今回シア・スイーツ店にて販売されている商品ですが、ステジア男爵令嬢ナターシャが考案した菓子と酷似しております。そのため、創造法の発想を守る権利に基づきこれを盗作にあたるとして男爵家がシア・スイーツ店に慰謝料を請求致しました。第3者であるクレド侯爵の意見も取り入れましたが、意見が割れたため、このように陛下のご意見を伺いにまいりました」

王子がとても意気揚々と陛下に詳細を話しますが、クレド侯爵の意見を取り入れて、割れたのは王子と男爵家のみ。分かれたと言えば分かれたのですが……なんとも言えないもやもや感が胸に広がります。

この国の創造法とは、初めて創造した人の権利になります。貴族では爵位があるため、どうしても高位貴族が物を言えば、そこにNOは言えません。
以前は子爵・男爵が創造したものでもそれを高位貴族が勝手に販売し、利益を得るということがあったようです。その中でも悪質な事があり、法化されたということです。
そのため、食べ物にせよ、発明にせよ、初めて創造した物と認定されれば、他の貴族や商人が真似しようとも、それを販売する際は創造法に基づき、創造者にお金を支払わなくてはなりません。ただし最初の3年のみ。これが過ぎてしまえばだれでも好きに使用していいことになります。

そのため、平民街でこういった商品がでまわるのは基本的に3年が過ぎてからになります。貴族が平民街での商売に重きを置いていないため、使用するたびにお金がかかる商品は平民街ではなかなかでまわらないのです。
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