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エンドコースはどこへ

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「アル、本当にシルヴィちゃんとあのお馬鹿王子をこのまま結婚させるつもりなの?いくら陛下たちに頼まれたからと言ってこのままで仕方がないなんてことはないわよね。」

「そうは言ってもなぁ、まだ逃げ道を見つけられないんだよ。まぁ最悪どうしようもなくなったら国を出てもいいし、陛下に弱みをネタに脅しをかけてもいいが。どうせならあの王子が婚約破棄でも申し付けてくれたら快諾できるんだがなぁ。そしたらしっかりと慰謝料も請求できる。

ちなみにその女性のことは私も聞いたことがあるよ。王子が『いじめられているか弱い女性を守ることも出来ない男ならば国を守ることもできない。これは王子としての試練なのだ』と諫める教師に言ったそうだ。呆れかえっていたよ。」

いくら公爵家と言えど陛下からの願いを無碍にすることはできません。ですが…

「お父様、お母様、もしかしたら王子は婚約破棄をされるかもしれませんよ。噂の男爵令嬢を私がいじめると疑っているようですし、もしかしたらすでに私がいじめているとおもっているかもしれません。だからそれまではそのままでいいのではないでしょうか。今慌てて婚約を解消しようとしたところで、どうせ私が王子と婚約していたことは周知の事実。それならば我が家に有利になる時まで待つ方が良いのではないでしょうか」

「シルヴィア、お前はまだ学生なのにそんなに悟りのような境地に…しかし、シルヴィアの言うことはもっともだ。シルヴィアさえよければその間に婚約破棄される場合に備えておくことができる。だが、本当にそれでいいのか。どうしても苦しいなら無理矢理にでも…」

まぁ、一度結んでしまった婚約。理由もなく破棄ということは難しい。しかも相手は王家。いくらお父様でもなかなかね。

「大丈夫です。今でもあってないような婚約。なくなっても嬉しくはあっても悲しくなどありません。ですがお馬鹿とは言っても相手は王子。お気にすむようにされてはいかがでしょうか。ただ、質問があるのですが、お馬鹿様は将来的に王になったりなさりませんよね」


私が聞きたいのは私の婚約のことよりもそのこと。あんな人が国王になんかなんてしまったら絶対に国は終わる。そしてピンクちゃんと一緒になろうものならば……あぁ、考えるだけでも恐ろしい……


「今のところその説はほとんど可能性がないな。第2王子は10歳年下でまだまだ幼いが優秀らしい。同じ教師に教わってきたらしいんだが、性格も考え方も違うということで、陛下も王太子としては第2王子を優先で考えているとのことだ」


あぁぁぁ、、これはヒロインのバッドエンドへ向かっているのか……

王子ルートのバッドエンドは主に3つ。
①ヒロインと王子が結ばれるが、取り巻き達との好感度が高すぎたため、王子は嫉妬のあまりヒロインを殺してしまう。後日談として王子は自分の妃を殺し、心を壊してしまったとして、療養の為、僻地へ送られ、そのまま毒を飲んで儚くなった…とエンディングで紹介される。
②ヒロインと王子が結ばれたのち、婚約者同伴で行われる王位継承試験で試験に失敗。その失敗が原因で、2人とも平民に身を落とすことになる。
③ヒロインは王子の好感度を十分に上げることが出来ずに、攻略失敗。王子たちへの度重なる接触を危険視され、学園より追放処分となる。

私の考えたシナリオでは王子の性格故ではなく、ヒロインと絡んだことで起きてしまったバッドエンドだったはず…でもこの話を聞くにはヒロインというよりも王子自身の問題。
しかも私はヒロイン側じゃないのに先に結末を知れるかもしれないなんて……
ある意味チートな気がする。


……ん?ヒロインのハッピーエンドならどこに行きつくんだろう…
そもそも誰を攻略しようとしてるのか。

今の現状は王子と桃太郎劇団の攻略は概ね良好と……
その場合バッドエンドだとしたら①の可能性が高そうかな。②に行きつくまでには、王位継承試験を受けるための陛下の推薦を得ることも議会の承認が下りることもなさそうな気がする。

なんだか私の書いたシナリオ破綻してる……


とりあえず今のところ私が修道院に行くことはなさそうだし、もし行ったとしてもきっとエドはヒロインの手には堕ちない!

この二つはよさそうね。


でもそっか。視点が違うからまったく違うストーリーに見えているのかも知れない。もしかしたらヒロインと王子のストーリーは着々と進んでるからあの二人の仲は進んでるし、桃太郎劇団とヒロインも仲良しでいる。
もしかしたらヒロインサイドからすればすごく順調にゲームを進めている感覚なのかもしれない。

そう考えればなんとなく腑に落ちた。


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