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しおりを挟む愛しいメルティシアを虐げられているようで身体中の血が煮えたぎるかのように怒りが湧いた。それと同時にその時わずかだが自分だけに向けられる助けを求める視線にメルティシアが死んでから得られなかった幸せを見つけることができたのだ。
だからあえてグライアンスたちの前では気にした様子を見せず、その後ナティシアだけを部屋に呼んで慰めていたのだ。可哀そうなナティシアを助けられるのは自分だけだとナティシアに理解させる為に。
マックスは後継が育てば早くに引退し、領地に戻るつもりだった。ナティシアだけを連れて。
しかし、誤算だったのが王太子の婚約者候補にナティシアが選ばれてしまったこと。
話すことのできないナティシアなど選ばれるわけがないと高を括っていたのに、最終選考まで残るなど完全に当てが外れてしまったのだ。
しかもライバル候補の毒物事件。王太子がナティシアを望んだとしても貴族たちがクレンティ公爵の娘を押せば問題はないと思っていたのに、公爵家に恩を売りたいもの以外はだんだんとナティシアに寛容になってきてしまった。
その為、正式に婚約者となる前に辞退することにしたのだ。
今後は男の目に入らないように自分だけの場所に閉じ込めておくつもりなのだ。
自分だけを頼り、自分だけが味方であると理解させ、自分だけを愛させるために。
アーネイスはそんな反吐が出る世界からナティシアを何とかして救いたかった。
だが、状況を把握することはできても助けることはできない。
だからジョシュアに伝えることにしたのだ。
ジョシュアはアーネイスの話を聞いても、頭の中は混乱したままだった。
愛する妻を亡くし、失意に暮れたことはわかる。それだけ愛していたのだろう。
しかしならばどうしてナティシアにその愛情を向けなかったのか。
それに容姿が似ているからと自分の娘を妻の身代わりにする?
気が狂ってる。そんな男がこの国の公爵だなんて。
だが今はそんな事を考えている余裕はない。
どうしたらナティシアを公爵の手から救い出せるかということだ。
「状況はわかった。
だが私はどうしたらいい?どうすればナティシアを救い出せる?」
「そんなこと知らないわよ。人間の世界の事なんて私にはわからないもの。
自分で考えなさい。王子様なんだからなんとでもできるでしょう」
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