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しおりを挟むしかし美しいと評判の女もメルティシアと比べれば結局誰も一緒にしか見えなかった。
公爵はグライアンスを愛することなどできなかった。ただ、ナティシアの母として迎え入れたのだ。
しかし、グライアンスは夫婦としての役割を果たしてほしいと懇願した。
その為月に1回閨を共にすることにしたのだ。ある条件をだして。
その条件とは………
『グライアンスではなく、メルティシアの代わりとして抱く』というものだった。
マックスは閨の最中、何度も愛を囁く。愛おしそうに見つめる顔で「メルティシア、愛してる」とグライアンスの耳元でいうのだ。顔を見つめているようで、何も映していない目には元妻しかいないのだろう。
そんな行為でも2人の子を儲けることができた。
しかし、グライアンスとメルティシアでは違いすぎるのだ。使用人にまで優しいメルティシアに対し、気に入らないことがあれば当たり散らすグライアンス。
その様を見ていると身代わりにさえ見えず、結婚5年目には目に入れるのも億劫になってしまっていた。
その間、ナティシアがどのような生活をしているのか知ろうともせずに。
ようやくマックスがナティシアと会ったのはデビューを翌年に迎えた12歳の年だった。
久しぶりにナティシアを見てマックスはとても驚いた。
一般女性に比べてナティシアはひどく痩せていたのだ。
グライアンスとメイド長からは元気に暮らしていると聞いていたのに心配になる程痩せてしまっていた。彼女たちの仕業だとすぐに理解できた。
だがそれ以上に驚いたのは彼女が驚くほどメルティシアに似ていたことだ。
陽にあたると輝く金の髪に、魅了されてしまうほど大きな潤いのある茶色の瞳、ぷっくりと可愛らしい唇、そのすべてが母親にそっくりなのだ。
それに加え、病的な細さが死ぬ間際の彼女を思い出させた。
『メルティシア………』
マックスは心の中で何度も妻の名前を呼んだ。
本来ならばグライアンスとメイド長に罰を与え、ナティシアへの待遇を見直すべきだが、そうなればきっとこの病的な細さは失われてしまうだろう。
そうなれば健康的な身体になる。その様を見ることもマックスにとっては辛かったのだ。
だからそのままにした。
マックスが見逃したことでグライアンスたちは自分たちが支持されていると思った。そのため目の前でも堂々とナティシアを虐げるようになったのだ。
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