(仮)母を亡くした令嬢が幸せになるまで

暖夢 由

文字の大きさ
上 下
38 / 43

38

しおりを挟む

しかし美しいと評判の女もメルティシアと比べれば結局誰も一緒にしか見えなかった。
公爵はグライアンスを愛することなどできなかった。ただ、ナティシアの母として迎え入れたのだ。

しかし、グライアンスは夫婦としての役割を果たしてほしいと懇願した。
その為月に1回閨を共にすることにしたのだ。ある条件をだして。

その条件とは………

『グライアンスではなく、メルティシアの代わりとして抱く』というものだった。


マックスは閨の最中、何度も愛を囁く。愛おしそうに見つめる顔で「メルティシア、愛してる」とグライアンスの耳元でいうのだ。顔を見つめているようで、何も映していない目には元妻しかいないのだろう。

そんな行為でも2人の子を儲けることができた。

しかし、グライアンスとメルティシアでは違いすぎるのだ。使用人にまで優しいメルティシアに対し、気に入らないことがあれば当たり散らすグライアンス。
その様を見ていると身代わりにさえ見えず、結婚5年目には目に入れるのも億劫になってしまっていた。

その間、ナティシアがどのような生活をしているのか知ろうともせずに。

ようやくマックスがナティシアと会ったのはデビューを翌年に迎えた12歳の年だった。

久しぶりにナティシアを見てマックスはとても驚いた。
一般女性に比べてナティシアはひどく痩せていたのだ。

グライアンスとメイド長からは元気に暮らしていると聞いていたのに心配になる程痩せてしまっていた。彼女たちの仕業だとすぐに理解できた。

だがそれ以上に驚いたのは彼女が驚くほどメルティシアに似ていたことだ。
陽にあたると輝く金の髪に、魅了されてしまうほど大きな潤いのある茶色の瞳、ぷっくりと可愛らしい唇、そのすべてが母親にそっくりなのだ。
それに加え、病的な細さが死ぬ間際の彼女を思い出させた。

『メルティシア………』

マックスは心の中で何度も妻の名前を呼んだ。
本来ならばグライアンスとメイド長に罰を与え、ナティシアへの待遇を見直すべきだが、そうなればきっとこの病的な細さは失われてしまうだろう。
そうなれば健康的な身体になる。その様を見ることもマックスにとっては辛かったのだ。
だからそのままにした。

マックスが見逃したことでグライアンスたちは自分たちが支持されていると思った。そのため目の前でも堂々とナティシアを虐げるようになったのだ。

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。

愛は全てを解決しない

火野村志紀
恋愛
デセルバート男爵セザールは当主として重圧から逃れるために、愛する女性の手を取った。妻子や多くの使用人を残して。 それから十年後、セザールは自国に戻ってきた。高い地位に就いた彼は罪滅ぼしのため、妻子たちを援助しようと思ったのだ。 しかしデセルバート家は既に没落していた。 ※なろう様にも投稿中。

我慢してきた令嬢は、はっちゃける事にしたようです。

和威
恋愛
侯爵令嬢ミリア(15)はギルベルト伯爵(24)と結婚しました。ただ、この伯爵……別館に愛人囲ってて私に構ってる暇は無いそうです。本館で好きに過ごして良いらしいので、はっちゃけようかな?って感じの話です。1話1500~2000字程です。お気に入り登録5000人突破です!有り難うございまーす!2度見しました(笑)

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

年に一度の旦那様

五十嵐
恋愛
愛人が二人もいるノアへ嫁いだレイチェルは、領地の外れにある小さな邸に追いやられるも幸せな毎日を過ごしていた。ところが、それがそろそろ夫であるノアの思惑で潰えようとして… しかし、ぞんざいな扱いをしてきたノアと夫婦になることを避けたいレイチェルは執事であるロイの力を借りてそれを回避しようと…

元妻からの手紙

きんのたまご
恋愛
家族との幸せな日常を過ごす私にある日別れた元妻から一通の手紙が届く。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

処理中です...