(仮)母を亡くした令嬢が幸せになるまで

暖夢 由

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2つの公爵家を敵に回した伯爵家が生きていけるはずがない。

特にアクアンティ公爵家には実際毒を持って侵入し、公爵家内の池に毒を入れているのだ。殺人未遂と取られても仕方なかった。

アクアンティ公爵家からは慰謝料を請求されることとなり、その支払いは王都の邸を支払っても足りないほどだった。

領地も一部手放し、領地の邸に帰ることとなったが、こんな伯爵家とは今後取引してくれる相手もかなり減るだろう。もしかするとなくなるかもしれない。

そうすれば領地の生産物も領地内だけで回すことになり、税収どころか、領民の生活すら守れないかもしれない。

そうなる前に領地、爵位を返上するしかないだろう。それはきっとそう遠くない未来なのだ。

それなのに、たった1日でそんな大惨事に陥れた本人は帰ってきたと思ったら謝罪の言葉もなく、呑気にどうしたのかなどときいてくる。
父は怒りとも悲しみともわからない感情が心の中を渦巻いたのだ。

どこで間違えてしまったのだろうか。

優しくて、よくできた娘になってくれたと喜んでいた。そんな時に上がってきた王太子殿下の婚約者候補の話。あの礼儀正しい王太子殿下の婚約者になれればきっと娘も幸せになれる。それに領主を引き継ぐ弟にとっても心強い見方ができると妻と2人でどれほど喜んだ事か。

それなのに……

「ま、待って……私はナティシア様に毒なんて盛っていない。

ちょっと、ちょっとだけ困ればいいのにって、池に毒を入れただけ。

それにあの毒はリターシャ様が用意してくださったものなの!だからクレンティ公爵家に言えばきっと助けてもらえる」

「クレンティ公爵家は何も知らない、一切関わりはないと言ったそうだ。
それどころか、無関係なのに多大な迷惑を被ったとな。
騎士団が調査してもお前に毒を渡した証拠など出てこなかった。

クレンティ公爵からは慰謝料を請求しない代わりに二度と姿を見せるなと言われたよ。
二度と取引もしないとな。

本当に……どこで間違えてしまったのだろうな。
王太子殿下の婚約者候補など、私たちには大きすぎる船に乗ることを夢見てしまったせいでこんなことになってしまったのだろう。

イザエル、お前には今後全ての社交界への参加が禁止されている。縁談も見込めないだろう。
我が家としてもこれ以上の被害を被ることはできない。

よって、今日この場をもって家族の縁を切ることとする。
これからは平民として自分で稼ぎ、自分で生活していくんだ。」

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