(仮)母を亡くした令嬢が幸せになるまで

暖夢 由

文字の大きさ
上 下
17 / 43

17

しおりを挟む
ハウラナを陥れるつもりが自分達の首を絞めることになった側室達。

特にレーネは焦って愚行に走り、取り返しがつかない事態に無い頭を痛めていた。

「どうしてうまくいかないの!私には時間がないのに!」
第三側室レーネはあと1週間で年季が終わる、つまり正妃になるチャンスはほぼ消えたのだ。
すでに離縁の為の引っ越し準備も帝国側が始めている、契約通りなので文句も言えない。


最後の手段にと、皇帝の寝室へ夜這いをかける計画をたてたが護衛たちがそれを許さなかった。
ふつう王宮に居室を持つものだが、皇帝は隣接された黒曜宮に住んでいた。
そこは軍部の機密組織でもあるため、簡単には入れない。

など通されるわけもないのだ。
屈強な護衛を排除しなければ到底無理だし、侵入したとて謀反人として捕縛され処罰されるだろう。


結局なんの打開もできないまま、レーネは母国イースレッドへ帰された。
とうぜん白い結婚だ、皇帝クレイブとは赤の他人に戻った。




帰国後、レーネは軍国の姫らしくドレスから軍服に着替え凛とした姿に戻り鼻息荒く宣った。
「ゼベールを討つべし」

怒りの矛先をハウラナの母国ゼベールへ向けたレーネは、父である国王と王太子の兄ルードに国力にものを謂わせ潰せないかと相談したのだ。


「ふむ、お前の無念は、余の無念でもある。しかしだな相手は小国なれど優れた魔導士が大勢おる、簡単には墜とせまいよ」

軍事国家イースレッドは軍艦建造に力を入れており海戦に強い、帝国に次ぐ強さを有してはいるが魔法国と戦ったことはない。それゆえに王は危惧しているのだ。


「お気の弱いことを、あの国の脅威などほとんど聞いたことがないですわ!文献にもございません、他国も我が国も魔法を使う者がほとんどいないせいで警戒しすぎなのですわ!」

咆える妹の声に兄が言う。
「うむ、確かにな……蔑称で”臆病な鎖国”と言われてもいたな、たしかにあの国を落とせば魔道具技術は我が手に……悪くはない、艦隊と戦用に開発した魔道具を有すれば帝国さえ敵でなくなるぞ」


王太子ルードのその言葉に気を良くしたレーネはほくそ笑む。

「さすがですわ兄様!ゼベールは東海に位置する小国です、背後は険しい山脈があり逃げるのも一苦労でしょう、海側から攻めればひとたまりもないですわ」


王子と王女の強い意気込みにイースレッド王は長考し口を開く。

「我が代で偉業を達するのも悪くないだろう、優れた船を幾隻と持とうが持ち腐れ。ルードよ、ゼベールに探りをいれろ。」

「御意、すぐに密偵を放ちましょう」




しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

嘘をありがとう

七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」 おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。 「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」 妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。 「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ

猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。 当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。 それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。 そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。 美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。 「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」 『・・・・オメエの嫁だよ』 執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?

10年間の結婚生活を忘れました ~ドーラとレクス~

緑谷めい
恋愛
 ドーラは金で買われたも同然の妻だった――  レクスとの結婚が決まった際「ドーラ、すまない。本当にすまない。不甲斐ない父を許せとは言わん。だが、我が家を助けると思ってゼーマン伯爵家に嫁いでくれ。頼む。この通りだ」と自分に頭を下げた実父の姿を見て、ドーラは自分の人生を諦めた。齢17歳にしてだ。 ※ 全10話完結予定

最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません

abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。 後宮はいつでも女の戦いが絶えない。 安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。 「どうして、この人を愛していたのかしら?」 ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。 それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!? 「あの人に興味はありません。勝手になさい!」

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

彼が愛した王女はもういない

黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
シュリは子供の頃からずっと、年上のカイゼルに片想いをしてきた。彼はいつも優しく、まるで宝物のように大切にしてくれた。ただ、シュリの想いには応えてくれず、「もう少し大きくなったらな」と、はぐらかした。月日は流れ、シュリは大人になった。ようやく彼と結ばれる身体になれたと喜んだのも束の間、騎士になっていた彼は護衛を務めていた王女に恋をしていた。シュリは胸を痛めたが、彼の幸せを優先しようと、何も言わずに去る事に決めた。 どちらも叶わない恋をした――はずだった。 ※関連作がありますが、これのみで読めます。 ※全11話です。

夫の母親に会いたくない私と子供。夫は母親を大切にして何が悪いと反論する。

window
恋愛
エマ夫人はため息をつき目を閉じて思い詰めた表情をしていた。誰もが羨む魅力的な男性の幼馴染アイザックと付き合い恋愛結婚したがとんでもない落とし穴が待っていたのです。 原因となっているのは夫のアイザックとその母親のマリアンヌ。何かと理由をつけて母親に会いに行きたがる夫にほとほと困り果てている。 夫の母親が人間的に思いやりがあり優しい性格なら問題ないのだが正反対で無神経で非常識な性格で聞くに堪えない暴言を平気で浴びせてくるのです。 それはエマだけでなく子供達も標的でした。ただマリアンヌは自分の息子アイザックとエマの長男レオだけは何をしてもいいほどの異常な溺愛ぶりで可愛がって、逆にエマ夫人と長女ミアと次女ルナには雑な対応をとって限りなく冷酷な視線を向けてくる。

処理中です...