(仮)母を亡くした令嬢が幸せになるまで

暖夢 由

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ジョシュア殿下が先ほど言った言葉が気になりちらりと殿下に視線を送るも、にこやかな笑顔で何事もなかったかのように「今日は本当にありがとう」と見送られてしまった。
どういうことだったのか結果、意味はわからなかったが、今日がナティシアにとって素敵な思い出になった事は変わらなかった。

使用人のような生活に変わりはなかったが、グライアンスたちが謹慎をしていることで比較的平穏な生活をしているナティシアの元へ再度茶会への招待状が届いたのであった。

『王太子殿下を囲む茶会』そう書かれているが、この茶会の招待客は皆未婚の令嬢だと執事は言う。殿下の婚約者探しが本格化されているということなのだろう。

招待状を受け、マックスは執事に指示を出し、ナティシア用の新たな茶会用のドレスを用意させた。

それだけではなく、社交界の知識を学ぶための家庭教師もつけられることとなった。
ナティシアは今までそういった事を学んだことがなかったため、他家の名前を一から覚えることになったのだが、家庭教師を驚かせるほどの理解力と記憶力で知識を身につけていった。
本人は使用人の仕事をお休みすることができ、新しい知識を得ることができて楽しそうに、家庭教師が提示する資料に食いついていたのだった。


こうして茶会の準備は淡々と進められた。



茶会当日

今回は招待客のみの参加のため、会場には令嬢たちの姿しかない。

ナティシアが会場に着いた時にはほとんどの令嬢たちはすでに到着しており、すでに席が埋まってしまっていた。
こういった場には来たことがないナティシアは案内人に促されるまま、空いている席に腰を降ろした。

他の令嬢たちは元々知り合いのようで皆が親しそうに話をしているが、ナティシアにとって見知った顔もなければ、話すこともできないため、ただただ、周りを見渡しながらお茶をのどに流し込むしかできなかった。

そうして少し時間が過ぎたとき、王太子殿下の到着を知らせる声が響いた。

殿下は席ごとに挨拶に周り令嬢たちと声を交わしていく。最後にナティシアのいる席に挨拶に来たかと思うと、同じ席にいる3人の令嬢と言葉を交わした後、ナティシアの隣に腰を降ろした。

王太子殿下の突然の行動に周りの令嬢たちは驚きの表情を浮かべた。
今まで殿下は特定の誰かを自ら選ぶような素振りを見せたことはなかったからだ。

それなのにそんな殿下がナティシアの隣を自分で選び、ナティシアに話しかけ、たまには笑みを浮かべている。
その笑みは今まで見ていた上辺だけのような笑みではなく、本心で会話を楽しんでいるような笑みだった。

それに比べてナティシアはそんな王太子殿下の隣に平然と座り、話しかけられることを平然と受け止め、笑いかけることもなく頷いて見せ、なにかを書いて会話を続けている。

そんな2人の様子に嫉妬を覚える令嬢は少なくはなかった。

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