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しおりを挟むそうして遂に王太子の誕生日パーティー当日。
5人を乗せた馬車が王宮に近づいていく。王宮は白を基調とした建物で、落ち着きはあるものの、陽光を反射してまばゆい程の輝きを放っている。
「お母様!見て、なんて素敵なのかしら」
グレースが王宮を見て感嘆の声を上げる。社交デビューをしたからと言って、王宮は誰もが訪れてよい場所ではないため、グレースもトーマスも今日初めて足を踏み入れるのだ。
「えぇ、本当に素晴らしいわ。もしもグレースが王太子殿下に見染められたらここで暮らすことができるようになるのよ。グレースはとても素敵なレディだもの。王太子殿下もきっとあなたとお話したいと願うはずよ」
「そうだよ姉さん。姉さんは綺麗だからきっと王太子殿下の目に留まるはずさ。そうなったら僕をえらい役職につけてよね」
「もちろんよトーマス。その為にもあんたはどっかにいっててよね。あんたと姉妹なんてばれた日にはきっと王太子殿下だって私との縁を嫌がってしまうわ。挨拶だけは仕方ないけどそれさえ済めばあんたは私たちから離れたところにいるの。わかったわね。
もしちゃんといい子にできたらそうね、もし私が王宮で暮らすようになったら召使としてあんたを傍におくことを考えてあげても良いわよ。どう?光栄でしょ?きゃははははっ」
まるで王子からの誘いがある事を前提に、いや、まるでグレースが結婚でもするかの様に話がすすめられる馬車の中。そんな会話に気をよくしたグレースは歪んだ笑顔を浮かべながらナティシアに汚い言葉をぶつけ、その様子をニヤニヤと見守る義母と義弟。
それを聞きながら全てを諦めたかの様にナティシアはただ俯きながら黙っているだけだ。
入場は爵位順に行われるため公爵家のナティシアたちが入場する時には既に、ほとんどの貴族が入場を済ませていた。
最後の招待客が入場を終えると王族入場のファンファーレが鳴り響いた。
♪♪~♪~~♪♪~~
「陛下並びに王妃陛下、ジョシュア王太子殿下、クレイトン王子、キラメイル王女の御入場」
集まった貴族たちが一斉に頭を下げる。
そんな中、頭を下げずキョロキョロとしているグレースとトーマス。周りを見てようやく見よう見まねで頭を下げた。
「皆のもの、頭を上げてくれ。
今日は息子の誕生日祝いに駆けつけてくれた事、礼を言う。
料理も酒も最高級のものを用意した。存分に楽しんで行ってくれ」
「本日は私の誕生日パーティの為にお集まりいただきありがとうございます。このような日を祝福してくださる皆様に心から感謝申し上げます。
これからさらに多くのことを学び、私自身の人生だけでなく、私が任じられた役割や責任を果たすことで、この国の発展に貢献していくことを誓います。どうぞこれからもよろしくお願いいたします」
陛下の言葉に続いて王太子殿下がそのようにご挨拶された。会場は大きな拍手に包まれた。王族でありながら民へ敬意をもって話す話し方は老若男女から評価されることになった。
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