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第1章

触らぬ神に祟りなし

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「どうだった?」

そう聞くアイシャに私は笑いながら返す。

「ふふっ、どうってなによ。でもさすがね、リードがとてもお上手だったわ。おかげでとても楽しく踊れたの。1曲でもとてもいい思い出だわ。
でも夢を見る時間はお終いにしてちょっとご挨拶しなくちゃ」

私はアイシャと話しながら周りの方々に挨拶をする。
今回アイシャにドレスを来てもらったことですでに注目が集まっていた。アイシャ用にレースを被せたことが功を奏したようで、多くの質問を頂いた。そして、今度お話したいというお声もかけて頂いた。

アイシャの周りでひと段落つくと、父と母の元へ行き、今まで取引をして頂いている方にも挨拶に行く。父が私のドレスを見せ、新商品として報告すると、ぜひ話を聞きたいと。アイシャにドレスを着てもらったおかげか、予想よりもかなり多くの方が話を聞きたいと言ってくれた。これを続けていけば、ドレスが有名な領地として名が上がるのも遠い未来ではなさそうだ。
今日のところは私としては十分仕事をしたのでそろそろ帰りたいと両親に言えば、まだ話していない人がいるから先に帰ってよいと言われ、一人で失礼させて頂くことにする。

なんだか驚くこともあったが、フレッド様は迎えにも来てくれ、入場も気遣ってくれ、ダンスも踊り、楽しいお話もできと、7年間も婚約していた元婚約者にはして頂いたことのない完璧なエスコートをしてもらった。おかげさまで楽しいパーティになった。

そんな晴れやかな気分で帰る前にアイシャたちに声をかけに行く。
幸せそうに話しをしているアイシャとデイヴに向かって話しかけるのはお邪魔虫になった気分。
いえ、実際きっとお邪魔虫なのだけど。


「アイシャ、デイヴ、私そろそろ失礼しようと思うの。悪いけれどフレッド様にも伝えてもらえる?」


「え?サリー帰るの?でもフレッド様は…」


アイシャの言葉と視線につられてフレッド様に視線をうつすと、未だ女性の群れに囲まれているフレッド様。
大人気の模様。


「エスコートしていただいて申し訳ないけれど、帰りは必要ないし。でも殿下に黙って帰るなんて不敬になるかしら…できればせっかくの機会をつぶしてしまうのも嫌だからお声をかけないで帰らせてもらいたいの。」


フレッド様は婚約者がいない王子ということもあり、実際に見たらあんなに綺麗な人だったのだ。人気はかなり高い。女性からしたらこんな機会を絶対に逃したくない。
それなのにそんな時にただの伯爵令嬢でしかない私が邪魔をしに行ったりしたら、今後の私の営業活動にも差し障りがでる。

触らぬ神に祟りなしという。できれば触らずに帰りたい。
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