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第1章

怒ってる?

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少し考えた後、デイヴとアイシャの方を見る。


私の視線に気づいた2人が気まずそうに苦笑いを浮かべている。


やっぱりそうなんだ…


「なんで?なんでエスコートなんて頼んだの!???」


困ったように眉を下げたデイヴが指先で頬を搔きながら言う。


「いや、俺からエスコートを頼んだわけではないよ。あいつから頼まれたんだ。相手がいなかったのは事実だし、、、後の詳しいことは本人に聞いて」


そんなことで逃げられると思ってるの?
そう問い詰めようとしていると、フレッド様がデイヴの後ろから歩いてくるのが見えた。その様子は少し困ったような笑顔を浮かべている。
そして彼が歩こうとする場所は道が出来るように人が避けていく。周りの女性は避けた先の彼を、熱い眼差しで見つめている。


これだけ綺麗な方がまだ婚約者を定めていない第2王子殿下だとわかれば注目の的にならないはずがない。




「サリー・ナシェルカ嬢、私と踊って頂けますか?」


私の目の前に来て、そう手を差し伸べてくる。
エスコートして頂いて来たのに受けないわけにはいかない。だから


「喜んで…」


差し出された手に自分の手を重ねてホールに進み出る。
そして踊りだすとフレッド様が伺うように「怒ってる?」と聞いてくるけど、怒っているなんてとんでもない。


「いえ、怒るだなんてめっそうもございません。
ただ事実に驚いただけでございます。王子殿下とは存じ上げず、野菜染めの話などしてしまい申し訳ございません」


「違うんだ。謝らないで。僕の勝手な我がままだったんだ。出来れば普通に話してみたかった。デイヴの話に何度も出てくるサリーって女の子と」


私をリードして踊りながら困ったように微笑み、話してくれたのは従弟のデイヴとは仲が良く、アイシャや私の話しをよくしていたということ。その中でもナシェルカ領の織物について、デイヴが興奮しながら話していたのだそう。それを教えてくれた子がサリーという子だと。その子と王子としてではなく普通に話してみたかったのだと謝ってくれた。


そんなことを話し終えるとちょうどダンス曲が終わり、後ろには王子と踊りたいと未婚女性の列が出来ていた。婚約者でもない私と踊るのは1曲のみ。だから他の令嬢も次は自分が王子と踊り話したい、あわよくば仲良くなりたいと思っているのだ。

そんな様子を見て私は王子に一礼をし、アイシャたちのところへ戻る。
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