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第1章

王誕祭のエスコート

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あれから半月が経ち、ようやく婚約破棄の書類も認められた私が今一番気がかりなのは、2週間後の王宮での王誕祭。
国王陛下のお誕生日をお祝いするこのパーティーは1年で一番大きな催し。


基本的に女性は婚約者にエスコートされて出席する。
でも私はめでたく今回婚約破棄をされてしまったのでそのお相手がいない。そして身近にエスコートを勤めてくれる親戚男性もいない。そのことに日夜頭を悩ませているのだ。


あんな婚約者にエスコートしてほしかったわけではないけれど、相手がいないのも困ってしまう。さてどうしたものか。


でも実は婚約者がいないこと自体は私たちの年代ではあまり珍しくない。私によくお小言をこぼしてくるキャロル様もアイシャも実は婚約者がいない。


その理由は私たちの3歳年上の第2王子殿下。その第2王子殿下の婚約者がまだ見つかっていないため爵位が高ければ高い家の娘程、その座に収まろうと婚約者を見つけていないのだ。
伯爵位程度の私にはあまり関係がないことなので、私には10歳の時に婚約者が出来ていたのだけど。


アイシャにもどうするのか聞いたところ、特に決めてないけど最悪兄に頼むと言っていた。
お兄様の婚約者様は隣国の方でまだこちらに来られていないので、普段のパーティーなどはエスコートしてもらっているのだ。


そうか…兄がいない私はどうしよう…


そんなことを考えながらアイシャと一緒に食堂に向かっていると、歩いていく先でなにか人だまりが出来ているのが見える。
そしてその人だまりの中から聞こえてくる甲高い声。
その声に耳をすましてみると


「デイヴィッド様、次のパーティーのお相手はお決まりですか?もしまだでしたら、私のエスコートをお願いできませんこと?」


そう聞こえてくる。いつもはお小言攻撃をしてくる声が、今日は少し甘えるような媚びを売るような話し方をしているのがひじょうに耳につく。


…その声に驚き横を見ると、同じような顔をしたアイシャと目が合った。
この国では基本的に男性から女性をお誘いする。しかし、逆の場合は心に決めた人がいない限り、お断りはしないのが暗黙のルール。
女性に無駄な恥をかかせない為にこのようなルールになっているが、正直このルールはいかがなものかと思ってしまう。
だって男性にだって本来選ぶ権利だって、断る権利だって女性と同じだけあるはずなのに……



そう思いながら足を進めた先にいるデイヴは明らかに困り顔で…それでも私たちが出ていくのもおかしな話しで………でもこのままではデイヴはお断りできないかもしれなくて…


どうしよう………


そう思っていると、こちらを見たデイヴと目が合った気がする。


そしてデイヴがふっと笑った…気がする。

そんなデイヴはこちらへ向かって歩みを進めてくると私たちの目の前で跪き…


「急な誘いであり、こんな場での申し込みになってしまい申し訳ない。
だが、この場でなければあなたをエスコートしたいと申し出ることが出来なくなってしまいそうなので許してほしい。
次のパーティーであなたをエスコート出来る幸せを私に与えて頂けませんか?アイシャ嬢」

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