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第1章

ピーチルとの出会い(ロディ視点)

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侯爵家としてふさわしい振る舞いの為か、父は公の場ではやけに伯爵に下手に出ている。それを当たり前のように受け入れ、ナシェルカ伯爵は侯爵である父を立てようともしていない。言葉遣いこそ丁寧だが、まるで同等のような振舞い!ありえない!!


父があるパーティーの帰り、酔っぱらいながら馬車の中で怒りながら言っていた。
「どうして由緒正しき侯爵家当主の私が伯爵相手に遜らねばならないんだ!本来ならば伯爵家が頭を下げるなんだ!
ロディ、伯爵家の娘なんか適当にあしらっても侯爵家に逆らうことはできないんだからな!身分の差があるんだ。適当に話を合わせておけばいい!」


伯爵家が侯爵家に縁を求めたというのに、それに相応しくない態度。どうして父はちゃんと言わないのかわからない。
もしこれから本当に結婚して縁続きになるならば、そういう態度は改めるようにどこかで指摘しなければいけないのに。


そんな事を思っていたある日、たまたま行ったパーティーで女性に会った。今まで見た女性より随分胸元を広くあけた女性。
その女性は僕の顔を覗き込んで話しかけてきたものの、自分のことをよく話す女性だった。僕に質問はするが僕が話しているときはあまりこっちを見ずになにかを食べていることが多い。でも僕が話し終わると「ロディ様はすごいですね」と褒めてくれる。それに…………あの腕に当たるふくよかな感覚は悪くない………


また会いたいと言われ、次のパーティーでエスコートする約束をした。
そしてその次もエスコートの約束をした。ピーチルは父や母と少し似ているんだ。話はするけど、あまり聞いていないようなそんな感じ。だから居心地がいいのかもしれない。


そして4回目にエスコートしたとき、ずっとこうしてロディ様の隣でロディ様の話が聞きたいと言われた。
でもそれはできない。僕には婚約者がいる。伯爵家なのに侯爵家を敬うこともできない婚約者が。


そんな事を話すとピーチルはそんな令嬢ロディ様にはふさわしくない。こんな素敵な方他にはいないのに敬えないだなんてと言った。やはりそうか!僕にサリーはふさわしくないんだ!!
そうわかって、父が言えないのなら時期当主の僕が言ってやることにした!


もうすぐ我が邸でパーティーがある。そこであの忌々しい伯爵家との縁を切ってやる!
そう思っていただけなのに。


ピーチルがロディ様のよさもわからない婚約者さんに挨拶がしたいというので、彼女の元へ一緒に行った。
するとピーチルが急に「婚約を破棄する」だなんて言ったんだ。
確かに婚約を破棄しようと思っていたけど、こんなに公の場で宣言しなくても。
僕は両親のいる前で婚約破棄すると伝えられればそれでよかったんだ。それなのに…
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