NEVER☆AGAIN~それは運命の出会いから始まった~

ハルカ

文字の大きさ
上 下
117 / 198
第11章『新たな仲間』

10話

しおりを挟む
 店を出て少し歩いた所で、誰かに呼ばれた気がしてイズミはぴたりと足を止める。
 そして周りを見回した。
 少し離れた所からタクヤが手を振りながら走ってくるのが見えた。
「……来たじゃねぇか」
 誰に話すという訳でもなく、イズミはぼそりと呟く。
「あっ、やっぱり来てくれたんだっ」
 レナもタクヤの姿を確認すると嬉しそうに笑う。

「イズミっ!」

 目の前まで来ると、タクヤは嬉しそうにもう一度名前を呼んだ。
「……お前な。人前で俺の名前を呼ぶなと言ってるだろう」
 なんとも嫌そうな顔でイズミは大きく溜め息を付く。
 今回もそれで自分のことが知られることとなり、面倒なことに巻き込まれたのだ。
「なんだよ、いいじゃんかっ!……って、あれ?」
 顔を赤くしながら強く言い返したタクヤだったが、誰かを探すようにきょろきょろと辺りを見回している。
「なんだよ?」
「えっ、いや、その……。誰かと一緒だったっていうから……。もう帰ったのか? 知り合い?」
 じろりとイズミに睨まれ慌てたようにタクヤが答える。しかしどこか顔が不安そうである。
「……知らない奴だ」
 じっとタクヤを見つめた後、イズミは目を逸らし、そのまま歩き出した。
「えっ!? 知らない人と一緒だったのか?」
 ぎょっとした顔をすると、タクヤも慌ててイズミの隣に並んで歩く。
「だから?……お前、俺のこと信じるとか言ってたんじゃないのか?」
 タクヤを見ることなくイズミは淡々と答える。
「えっ! なんで知って……あ、レナか。いや、お、俺はっ、別に心配だから来たんじゃないからなっ。その男がイズミに襲い掛かったりとかしたら、そ、そりゃ心配だけどっ」
 なんで知ってるんだと慌てたタクヤであったが、後ろからついて来ているレナを見て納得する。
 そしてなんとか誤魔化そうと必死になっていた。
「はぁ? 何言ってんだ、お前。なんで俺が襲われるんだよ」
 呆れ返った顔でタクヤを見ると、イズミは再び大きく溜め息を付いた。
「そんなことないよっ! イズミ可愛いしっ」
 顔を赤らめながらもタクヤはムキになって言い返す。
「はぁ?」
 今度は嫌そうな顔でイズミはタクヤを睨み付けた。

「恥ずかしい奴……」

 後ろからぼそりと聞こえた声にハッとして振り返ると、タクヤについて来ていたリョウだった。
「おい、なんでコイツがついて来てるんだよ」
 リョウの顔を見るなりイズミは不機嫌そうにタクヤを睨み付ける。
「え? なんでって――」
「イズミ君が可愛いっていうのも微妙よね」
 タクヤが説明をしようとしたところでレナが口元に手を当てながら口を挟んできた。
「どういう意味だ」
 リョウの存在よりもレナの言葉に引っ掛かったイズミは、今度はムッとした顔でレナを睨み付ける。
「えー、だってさ。昔は確かに超絶可愛かったけど、今は性格こんなだしぃ?」
「確かに」
 揶揄うように話したレナの言葉に思わず頷いてしまったタクヤであったが、イズミに凄い勢いで睨まれ思わず体を小さくさせる。
「まぁまぁ、そんな拗ねないのぉ。今は可愛いっていうより美人さんだから。あたしはそれが言いたかったのよぉ」
 機嫌を損ねてしまったイズミをレナはえへっと笑いながら見つめた。
「別に。俺はどうせ性格こんなだよ。悪かったな」
 ふんっと鼻を鳴らし、イズミは機嫌を直すことなく足早に歩き出した。
「ちょっと待てって。なぁ、怒るなよ。俺はイズミのそんなとこも含めて好きなんだから。悪くなんかないよっ」
 慌ててイズミを追い掛けると、タクヤは真剣な顔で話す。
「っ!? てめぇは素直すぎんだよっ」
 真っ赤な顔で振り返ると、イズミは腕を大きく振り上げタクヤの頭をバシンと叩く。
「いっ……なんだよぉー……」
 頭を叩かれ涙目になりながらタクヤは口を尖らせた。

「……あんたらさ、どういう関係? 旅の仲間?」
 すっかり放置されていたリョウが、両手を頭の後ろで組みながら3人の会話に入ってきた。
「えっ? 俺たちの関係?……うーん、なんだろ。あ、イズミと俺は恋人っ――いてっ!」
 突然リョウに問い掛けられ、ぴたりと立ち止まると、タクヤはうーんと腕を組み考え込む。
 そしてニッと白い歯を出して笑って答えた瞬間、再びイズミに頭を叩かれた。
「レナさんはそうね、お友達って感じかな。うふっ」
 ふたりを無視してレナは嬉しそうにリョウに答える。
 しかしその瞬間、タクヤとイズミは揃って嫌そうな顔をしていたのだった。
「ふぅん……じゃあさ、俺も、俺もついて行っていい?」
 じっと3人を順番に眺めると、リョウは真剣な顔でタクヤをじっと見上げた。
「ええっ! ついてくって……。リョウの家族は? ひとりじゃないんだろ?」
 まさかの言葉にタクヤは驚いて目を丸くする。ぱちぱちと瞬きをさせた後、今度は心配そうな顔でリョウを見下ろした。
「母さんと兄さんが……別に平気だよ。……俺、もっと強くなりたいんだ。あんた達について行けば強くなれる気がする。……ダメ?」
 暗い表情で俯いてしまったリョウだったが、キッと顔を上げ、懇願するようにタクヤを見つめた。
「うーん、困ったな……。気持ちは分かるんだけど……。リョウ、俺たちの旅は半端じゃなく危険なんだ。もしかしたら、二度とここには帰ってこれないってことも――」
「分かってるっ。俺だってもう子供じゃない。あんたらの足引っ張ったりしないからっ!」
「…………」
 必死になっているリョウを見ながら、タクヤは困った顔でイズミを窺うように見た。

「それは楽しそうだね。ぜひ俺も参加させてほしいな」

 するとその時、後ろから聞いたことのある男の声がした。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...