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第5章『要求する魔物』
12話
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朝食を済ますと、すぐに用意をしてアンナ達にお礼を言い、2人は再び旅に出た。
「いい人達だったね。ご飯も美味しかったし」
タクヤは背伸びをしながら嬉しそうに話す。
しかし、イズミは旅立つ前にアンナの祖母に言われた言葉が気になっていた。
『あの子、気をつけておやり。嫌な卦が出ておる。どうなるかは分からないが、何か、不吉なものが近づいておる。そばにいておやり。お前さんが一緒なら大丈夫だろう。昨日も言ったが、お前さんはあの子にとってプラスの存在になっておる。しっかりするんだよ』
(……あれは、どういう意味なんだ……一体……)
イズミは嫌な予感がしていた。
「どうかしたのか?」
イズミの様子に気が付き、タクヤが心配そうに覗き込む。
「……いや、何でもない」
無表情にすっと顔を背ける。
「そう? ならいいけど……。体調でも悪いのか?」
「あのなぁ、お前こそすぐ何でも『体調悪いのか』とか言うのやめろよ」
イズミはムッとしながらタクヤを軽く睨んだ。
「だってイズミ、体弱そうなんだもん」
言い終わるか終わらないかという時に、ヒュッと肩辺りに足が飛んできた。
タクヤは反射的に避け、そして驚きながらもイズミを睨む。
「あっぶねぇなっ。そんなに怒ることないだろっ」
「うるせぇ猿。誰が体が弱いって?」
イズミは足を戻すと横目でタクヤを睨んだ。
「もうっ、睨むなよ……。逞しそうって言われるよりいいだろっ?」
タクヤはイズミに睨まれ少し怯えながらも、すぐに強気に言い返す。
「…………」
イズミは言われた言葉で少し複雑な気持ちになり、眉間に皺を寄せる。
「大丈夫っ。イズミが強いことは知ってるから。弱いって言ってんじゃないんだからっ」
「お前は激弱……」
「誰がだよっ!」
タクヤは嬉しそうに話したが、イズミに馬鹿にされ顔を赤くしながら怒る。
イズミはそんなタクヤを面白そうに眺める。しかしまた不安な気持ちが頭をよぎり、真剣な表情でじっとタクヤを見上げた。
「何? 見惚れちゃう程いい男?」
その様子を見て、タクヤがニヤッとしてイズミを見下ろした。
「……死ね」
眉間に皺を寄せ、ぼそりと答える。
「なんだとぉーっ!」
再び顔を赤くしながら悔しそうに叫ぶ。
「お前の場合、『呆れちゃう程バカな男』の間違いだろ?」
イズミは軽く溜め息をつくと、再び馬鹿にしたような表情でタクヤを見上げる。
「だーっ、ムカつくっ!」
タクヤは顔を真っ赤にしながら悔しそうに地団駄を踏む。
イズミは鼻で笑うと、タクヤを無視して歩き始めた。
「ちょっ、ちょっと待てよ。置いてくなよっ」
タクヤも急いでイズミの後を追う。
「イズミイズミっ、ずっと一緒にいようなっ」
追いつくなり嬉しそうにイズミを見つめながら話す。
「お前なぁ、すぐそうやって俺の名前呼ぶのやめろよ」
イズミは溜め息をつきながらタクヤを見る。
「何で? いいじゃん。呼びたいから呼ぶのっ。イズミ、名前呼ばれるの嫌なの? 俺はイズミに名前呼ばれるのすっげぇ好きっ。でも、あんまり呼んでくんないのな、イズミ」
「別に……嫌な訳じゃない。ただ、人前では呼ぶなよ」
「なんだよっ。まだそんなこと言ってんのっ?」
少し怒ったようにイズミを見る。
「そうじゃない。そういうことじゃなくてだな……」
「だったら何でだよっ。何でダメなんだよ」
更に睨むようにしてイズミを見つめる。
「もういい。分からないならいい」
イズミは溜め息をつき、ふいっと横を向く。
「なんだよっ。バカにしてんの? ……もうっ、分かんないから言うこときかないっ」
タクヤも頬を膨らませると、ぷいっと横を向いてしまった。
そんなタクヤを呆れながら見ると、イズミはもう一度深く溜め息をつく。
「まぁいいや。行こうイズミ」
不機嫌になっていたというのにタクヤはそう言って振り返ると、イズミの手を取り歩き始めた。
「おいっ、また……」
イズミは嫌そうな顔をして手を離そうとする。
「いいのっ」
しかし、タクヤはぎゅっと強く握り締め、手を離そうとはしなかった。
イズミは前を歩くタクヤを見上げ、仕方なさそうに溜め息をつく。
「なぁ、イズミ。あの服貰ってこれば良かったのに」
「はぁ?」
嫌そうな顔をしたイズミをちらりと振り返ると、タクヤはふと思い出したように話し掛ける。
そしてイズミは更に顔を顰めると眉間に皺を寄せる。
「だってめっちゃ似合ってたし。可愛かったし。頼めば貰えたんじゃない?」
再び前を見ると、タクヤは嬉しそうに顔を綻ばせる。
「ぜってぇーやだ」
「ええーっ、なんでだよぉー」
本当に嫌そうに顔を顰めるイズミとムスッと頬を膨らませるタクヤ。
そして、お互い違った思いを胸に、再び旅に出たのであった。
「いい人達だったね。ご飯も美味しかったし」
タクヤは背伸びをしながら嬉しそうに話す。
しかし、イズミは旅立つ前にアンナの祖母に言われた言葉が気になっていた。
『あの子、気をつけておやり。嫌な卦が出ておる。どうなるかは分からないが、何か、不吉なものが近づいておる。そばにいておやり。お前さんが一緒なら大丈夫だろう。昨日も言ったが、お前さんはあの子にとってプラスの存在になっておる。しっかりするんだよ』
(……あれは、どういう意味なんだ……一体……)
イズミは嫌な予感がしていた。
「どうかしたのか?」
イズミの様子に気が付き、タクヤが心配そうに覗き込む。
「……いや、何でもない」
無表情にすっと顔を背ける。
「そう? ならいいけど……。体調でも悪いのか?」
「あのなぁ、お前こそすぐ何でも『体調悪いのか』とか言うのやめろよ」
イズミはムッとしながらタクヤを軽く睨んだ。
「だってイズミ、体弱そうなんだもん」
言い終わるか終わらないかという時に、ヒュッと肩辺りに足が飛んできた。
タクヤは反射的に避け、そして驚きながらもイズミを睨む。
「あっぶねぇなっ。そんなに怒ることないだろっ」
「うるせぇ猿。誰が体が弱いって?」
イズミは足を戻すと横目でタクヤを睨んだ。
「もうっ、睨むなよ……。逞しそうって言われるよりいいだろっ?」
タクヤはイズミに睨まれ少し怯えながらも、すぐに強気に言い返す。
「…………」
イズミは言われた言葉で少し複雑な気持ちになり、眉間に皺を寄せる。
「大丈夫っ。イズミが強いことは知ってるから。弱いって言ってんじゃないんだからっ」
「お前は激弱……」
「誰がだよっ!」
タクヤは嬉しそうに話したが、イズミに馬鹿にされ顔を赤くしながら怒る。
イズミはそんなタクヤを面白そうに眺める。しかしまた不安な気持ちが頭をよぎり、真剣な表情でじっとタクヤを見上げた。
「何? 見惚れちゃう程いい男?」
その様子を見て、タクヤがニヤッとしてイズミを見下ろした。
「……死ね」
眉間に皺を寄せ、ぼそりと答える。
「なんだとぉーっ!」
再び顔を赤くしながら悔しそうに叫ぶ。
「お前の場合、『呆れちゃう程バカな男』の間違いだろ?」
イズミは軽く溜め息をつくと、再び馬鹿にしたような表情でタクヤを見上げる。
「だーっ、ムカつくっ!」
タクヤは顔を真っ赤にしながら悔しそうに地団駄を踏む。
イズミは鼻で笑うと、タクヤを無視して歩き始めた。
「ちょっ、ちょっと待てよ。置いてくなよっ」
タクヤも急いでイズミの後を追う。
「イズミイズミっ、ずっと一緒にいようなっ」
追いつくなり嬉しそうにイズミを見つめながら話す。
「お前なぁ、すぐそうやって俺の名前呼ぶのやめろよ」
イズミは溜め息をつきながらタクヤを見る。
「何で? いいじゃん。呼びたいから呼ぶのっ。イズミ、名前呼ばれるの嫌なの? 俺はイズミに名前呼ばれるのすっげぇ好きっ。でも、あんまり呼んでくんないのな、イズミ」
「別に……嫌な訳じゃない。ただ、人前では呼ぶなよ」
「なんだよっ。まだそんなこと言ってんのっ?」
少し怒ったようにイズミを見る。
「そうじゃない。そういうことじゃなくてだな……」
「だったら何でだよっ。何でダメなんだよ」
更に睨むようにしてイズミを見つめる。
「もういい。分からないならいい」
イズミは溜め息をつき、ふいっと横を向く。
「なんだよっ。バカにしてんの? ……もうっ、分かんないから言うこときかないっ」
タクヤも頬を膨らませると、ぷいっと横を向いてしまった。
そんなタクヤを呆れながら見ると、イズミはもう一度深く溜め息をつく。
「まぁいいや。行こうイズミ」
不機嫌になっていたというのにタクヤはそう言って振り返ると、イズミの手を取り歩き始めた。
「おいっ、また……」
イズミは嫌そうな顔をして手を離そうとする。
「いいのっ」
しかし、タクヤはぎゅっと強く握り締め、手を離そうとはしなかった。
イズミは前を歩くタクヤを見上げ、仕方なさそうに溜め息をつく。
「なぁ、イズミ。あの服貰ってこれば良かったのに」
「はぁ?」
嫌そうな顔をしたイズミをちらりと振り返ると、タクヤはふと思い出したように話し掛ける。
そしてイズミは更に顔を顰めると眉間に皺を寄せる。
「だってめっちゃ似合ってたし。可愛かったし。頼めば貰えたんじゃない?」
再び前を見ると、タクヤは嬉しそうに顔を綻ばせる。
「ぜってぇーやだ」
「ええーっ、なんでだよぉー」
本当に嫌そうに顔を顰めるイズミとムスッと頬を膨らませるタクヤ。
そして、お互い違った思いを胸に、再び旅に出たのであった。
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