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第4章『タクヤの目的』
2話
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「あーもうっ、めっちゃ腹立つっ!」
タクヤは宿に戻ると部屋のドアを勢いよく開け、声を荒げながら入ってきた。
「…………」
ルームサービスを取ったのか、コーヒーを飲みながらイズミは呆れた顔でタクヤを見ている。
「ちくしょうっ、今度会ったらぜってぇ負けねぇっ」
何やら勝手に1人で決心している様子である。
イズミは相変わらずよく分からないタクヤの言動を呆れながら見ていた。
「ちょっとイズミっ、聞いてよっ。すっげぇムカつく奴がいてさぁ」
普通に話しかけてくるタクヤに対し、イズミは嫌そうな顔をしている。
「お前、俺のこと嫌いになったんじゃなかったのか?」
「あっ……」
タクヤはやっと先程イズミに言ってしまったことを思い出した。
謝ろうと決心した後にあの男が出現したせいで、自分の中で男への苛立ちが大きく占めていた為、イズミのことをすっかり忘れてしまっていた。
「イズミっ、ごめんっ。俺……」
イズミに向かって頭を下げる。
しかし言葉に詰まってしまった。
イズミは机に頬杖をつきながらタクヤをじっと見つめている。
「あの……俺さ、イズミにばっか教えろ教えろって言って。その……俺のこと、全然話してなかったのな。俺、全然気付かなくて……。イズミに酷いこと言っちゃった。ごめん」
タクヤは頭を下げたまま話す。
「だからさっ、俺のことちゃんと全部話すからっ、イズミもちゃんと教えてくれよなっ」
タクヤは顔を上げると、笑みを浮かべイズミを見る。
「……別に。話さなくていい」
イズミは頬杖をついた姿勢のまま無表情に横を向く。
「なんだとーっ! 自分が言いたくねぇからだろっ」
そしてまた、タクヤは怒り散らす。
「別に。興味ねぇだけ」
「ムカつくっ!」
相変わらず横を向いたまま、本当に興味なさそうに答えるイズミに、タクヤは悔しがっていた。
「もういいよっ。あー、なんか腹減ったな……。あっ、それまだ残ってんの? 食べていい?」
タクヤはむくれながらも喋り続け、そして机の上に残っている食事を見ると、何事もなかったようにイズミに話し掛ける。
「食えば?」
イズミはタクヤを見ることなく無表情に答える。
「いっただきまーっす。あれ? もしかしてこれ、俺の分だったの?」
タクヤは嬉しそうに席に着くと、机に置かれていたまだ使われていない箸を取る。
そして、残り物かと思われていた食事は優に1人分あることに気が付いた。
そのことにとても驚いた顔でイズミを見る。
「別に……。頼みすぎただけだ。」
イズミは相変わらず無表情に答えるが、さすがのタクヤもその答えが嘘であることに気付いた。イズミがそんなミスをするとは思えない。
えへへっと嬉しそうに笑うと、再びいただきますっと言って食べ始めた。
それを横目でイズミは溜め息をつきながら見ていた。
「あっ、そうそう。さっきさぁ、すっげぇムカつく奴に会ってさぁ」
食事をしながらイズミに先程の男の話をし始める。
「もう、すっげぇ嫌な奴でさぁ」
余程腹が立ったのだろう。さっきから同じことしか話していない。
「ぜってぇ俺のこと馬鹿にしてるっ」
「馬鹿だからだろ?」
「むかつくっ!」
箸を持ちながら悔しそうに話すタクヤに、イズミは呆れ顔で横槍を入れる。
そして再びタクヤはムッとしている。
「で? どんな奴だったんだ?」
そんなタクヤを面白そうに見ながら話の続きを聞く。
「ふっごぐ、むっが、ぐ、で……」
「食いながら喋んなっ!」
口に物を入れながら話すタクヤに、イズミが激怒する。
「だからぁ、すっごくムカつく奴なんだって!」
口に入っている物を飲み込むと、もう一度同じことを話す。
「お前、さっきから同じことしか言ってねぇじゃねぇか。殺すぞ。」
本当で殺気を感じるような目でイズミが睨む。
「だってっ! めっちゃムカついたんだもん」
イズミに怒られて頬を膨らませる。
「ガキかてめぇはっ。……分かったから、そいつの特徴を話せ」
イズミは怒鳴りながらも半分呆れたような顔をしている。
「うん。とにかく態度がもうめっちゃ最悪。ずっとヘラヘラしてて、背がバカでかくてさー」
イズミの怒りが治まったことを確認すると、素直に言われた通り話し始めた。
「お前と変わらんだろうが」
「なんでだよっ!」
イズミがしれっとして言うのを、タクヤは顔を真っ赤にしながら怒る。
「もうっ!……背がっ、俺よりもでかくて、髪はちょい長めって感じ」
タクヤはどうやら自分より背が大きかったことが余程悔しかったようだ。
「あっ!」
「なんだよ?」
突然何かを思い出したように叫んだタクヤを、イズミは鬱陶しそうに見る。
「そうそう! あいつ、あいつの目も金色だった!」
「っ!?」
タクヤの言葉にイズミは目を大きくしている。
「何? もしかして知り合いとか? そういえば、人をバカにするとことか似てるよなー」
タクヤはイズミの様子を見て不思議そうに覗き込むが、あまり気にしていないようだ。
「そういや、イズミの目ってどうなってんの? 今は茶色だしさぁ。でも、本当は金色なんだろ? なんかあるのか? でも、最初見た時思ったけど、めっちゃ綺麗だよなー。……あっ! そういや前聞いた時も教えてくんなかったじゃんっ」
タクヤがひたすら1人で話し続けているのだが、イズミは何か考えこんだまま返事をしない。
「イズミ? どうかしたのか?」
「……何でもない」
タクヤが心配そうに覗き込むが、イズミはそう答えるとそのまま黙り込んでしまった。
タクヤは宿に戻ると部屋のドアを勢いよく開け、声を荒げながら入ってきた。
「…………」
ルームサービスを取ったのか、コーヒーを飲みながらイズミは呆れた顔でタクヤを見ている。
「ちくしょうっ、今度会ったらぜってぇ負けねぇっ」
何やら勝手に1人で決心している様子である。
イズミは相変わらずよく分からないタクヤの言動を呆れながら見ていた。
「ちょっとイズミっ、聞いてよっ。すっげぇムカつく奴がいてさぁ」
普通に話しかけてくるタクヤに対し、イズミは嫌そうな顔をしている。
「お前、俺のこと嫌いになったんじゃなかったのか?」
「あっ……」
タクヤはやっと先程イズミに言ってしまったことを思い出した。
謝ろうと決心した後にあの男が出現したせいで、自分の中で男への苛立ちが大きく占めていた為、イズミのことをすっかり忘れてしまっていた。
「イズミっ、ごめんっ。俺……」
イズミに向かって頭を下げる。
しかし言葉に詰まってしまった。
イズミは机に頬杖をつきながらタクヤをじっと見つめている。
「あの……俺さ、イズミにばっか教えろ教えろって言って。その……俺のこと、全然話してなかったのな。俺、全然気付かなくて……。イズミに酷いこと言っちゃった。ごめん」
タクヤは頭を下げたまま話す。
「だからさっ、俺のことちゃんと全部話すからっ、イズミもちゃんと教えてくれよなっ」
タクヤは顔を上げると、笑みを浮かべイズミを見る。
「……別に。話さなくていい」
イズミは頬杖をついた姿勢のまま無表情に横を向く。
「なんだとーっ! 自分が言いたくねぇからだろっ」
そしてまた、タクヤは怒り散らす。
「別に。興味ねぇだけ」
「ムカつくっ!」
相変わらず横を向いたまま、本当に興味なさそうに答えるイズミに、タクヤは悔しがっていた。
「もういいよっ。あー、なんか腹減ったな……。あっ、それまだ残ってんの? 食べていい?」
タクヤはむくれながらも喋り続け、そして机の上に残っている食事を見ると、何事もなかったようにイズミに話し掛ける。
「食えば?」
イズミはタクヤを見ることなく無表情に答える。
「いっただきまーっす。あれ? もしかしてこれ、俺の分だったの?」
タクヤは嬉しそうに席に着くと、机に置かれていたまだ使われていない箸を取る。
そして、残り物かと思われていた食事は優に1人分あることに気が付いた。
そのことにとても驚いた顔でイズミを見る。
「別に……。頼みすぎただけだ。」
イズミは相変わらず無表情に答えるが、さすがのタクヤもその答えが嘘であることに気付いた。イズミがそんなミスをするとは思えない。
えへへっと嬉しそうに笑うと、再びいただきますっと言って食べ始めた。
それを横目でイズミは溜め息をつきながら見ていた。
「あっ、そうそう。さっきさぁ、すっげぇムカつく奴に会ってさぁ」
食事をしながらイズミに先程の男の話をし始める。
「もう、すっげぇ嫌な奴でさぁ」
余程腹が立ったのだろう。さっきから同じことしか話していない。
「ぜってぇ俺のこと馬鹿にしてるっ」
「馬鹿だからだろ?」
「むかつくっ!」
箸を持ちながら悔しそうに話すタクヤに、イズミは呆れ顔で横槍を入れる。
そして再びタクヤはムッとしている。
「で? どんな奴だったんだ?」
そんなタクヤを面白そうに見ながら話の続きを聞く。
「ふっごぐ、むっが、ぐ、で……」
「食いながら喋んなっ!」
口に物を入れながら話すタクヤに、イズミが激怒する。
「だからぁ、すっごくムカつく奴なんだって!」
口に入っている物を飲み込むと、もう一度同じことを話す。
「お前、さっきから同じことしか言ってねぇじゃねぇか。殺すぞ。」
本当で殺気を感じるような目でイズミが睨む。
「だってっ! めっちゃムカついたんだもん」
イズミに怒られて頬を膨らませる。
「ガキかてめぇはっ。……分かったから、そいつの特徴を話せ」
イズミは怒鳴りながらも半分呆れたような顔をしている。
「うん。とにかく態度がもうめっちゃ最悪。ずっとヘラヘラしてて、背がバカでかくてさー」
イズミの怒りが治まったことを確認すると、素直に言われた通り話し始めた。
「お前と変わらんだろうが」
「なんでだよっ!」
イズミがしれっとして言うのを、タクヤは顔を真っ赤にしながら怒る。
「もうっ!……背がっ、俺よりもでかくて、髪はちょい長めって感じ」
タクヤはどうやら自分より背が大きかったことが余程悔しかったようだ。
「あっ!」
「なんだよ?」
突然何かを思い出したように叫んだタクヤを、イズミは鬱陶しそうに見る。
「そうそう! あいつ、あいつの目も金色だった!」
「っ!?」
タクヤの言葉にイズミは目を大きくしている。
「何? もしかして知り合いとか? そういえば、人をバカにするとことか似てるよなー」
タクヤはイズミの様子を見て不思議そうに覗き込むが、あまり気にしていないようだ。
「そういや、イズミの目ってどうなってんの? 今は茶色だしさぁ。でも、本当は金色なんだろ? なんかあるのか? でも、最初見た時思ったけど、めっちゃ綺麗だよなー。……あっ! そういや前聞いた時も教えてくんなかったじゃんっ」
タクヤがひたすら1人で話し続けているのだが、イズミは何か考えこんだまま返事をしない。
「イズミ? どうかしたのか?」
「……何でもない」
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