White cat in Wonderland~その白い猫はイケメンに溺愛される~

ハルカ

文字の大きさ
上 下
222 / 226
Lovers~晴れのち曇り、時々雨~【スピンオフ】

第26話

しおりを挟む
 体が柔らかい布団に沈んだのが分かった。ベッドに押し倒されたのだ。
 両肩を押さえ付けられたまま、眉間に皺を寄せながらセバスチャンはイーサンを睨み付ける。
 しかし、イーサンは口の端をくいっと上げて嬉しそうな顔で見下ろしているだけであった。
「おいっ! この状況はなんだっ! 俺は明日仕事だと言っただろうっ!」
 笑みを浮かべているイーサンに向かって思い切り睨みながら怒鳴り付ける。
 やはり、この男を部屋に入れるのではなかったと後悔する。一緒に過ごすだけで済むはずがないのだ。
「俺は明日も休みだ」
「だから、そういうことじゃないっ!」
 しれっとして答えるイーサンに更に頭にきた。
「じゃあ、どういうことだ?」
 今度は不思議そうな顔になると、イーサンはこてんと首を傾げる。
「だからっ、お前よりも俺のが大変なんだってことだよっ」
 かぁっと顔を赤く染めながらセバスチャンが怒鳴り付ける。
「……あぁ、そういうことか。だったら大丈夫だ」
 少し考えた後、漸く理解したのかイーサンは真面目な顔でそう答えた。
「はぁっ? 何が大丈夫なんだよっ!」
 全く分かっていないと、顔を赤くしたままセバスチャンは更に声を荒げる。
「ん? だから、それくらいなら俺でもなんとかできるってことだ」
「なんとかってなんだっ! お前いつも俺が動けなくなってるの知ってるだろうっ!」
 しれっとした顔をしているイーサンにこれでもかと怒鳴り付ける。
 自分がどれだけ大変な思いをしているかなど、いつも平然としているこいつに分かるはずがないと思いつつも、言わずにはいられなかった。
「あぁ。いつもはわざとセバスチャンが動けないようにしてんだよ。そうしないとセバスチャン、俺を置いてひとりで朝飯食いに行っちまうだろう?」
 じっと顔を見つめながらイーサンが言い訳をする。
「はぁっ?」
 何を言っているんだと思い切り睨み付けた。
「だから、今日はちゃんとするって言ってるんだ。体の痛みとかだるさとかも、それくらいなら俺でも治せるし、できるだけ負担にならないようにする」
 しかし、セバスチャンの睨みも全く効いておらず、イーサンはふわっとセバスチャンの髪を撫でた。
「お前に何が分かるんだっ!」
 先程よりも顔を真っ赤にさせながら、セバスチャンは怒鳴ってイーサンの手を叩く。
「痛っ……ったく、怒るなよ。大丈夫だって」
 そう言って今度は手を頬に移動させると、イーサンはセバスチャンの唇にそっと口付けをする。
「んっ……」
 ぐいぐいとイーサンの胸を押してどかそうとするが全く動かない。
 いつもそうだ。力で敵うはずもないとは分かっているのだが、無駄な抵抗をしてしまう。
「セバスチャン」
 唇を離すと今度は耳たぶを甘噛みするイーサン。
「っ!?」
 ぞくりと体が震える。耳が弱いことを知っていてこういうことをするのだ、この男は。
「やめっ……」
 そのままぺろりと耳を舐められ更にぞくっとする。
「ほんと耳弱いよな、セバスチャンって」
 耳元でくすっと笑い声と低い声が聞こえてきた。
「う、うるさいっ!」
 そのまま頬と首筋にキスをしているイーサンに向かって怒鳴り付けるが、やはり全く聞き入れてはもらえない。
 時々さわさわとイーサンの前髪が顔や首に当たってくすぐったくなる。
 その度にぞくぞくと体が震えてしまう。
「ん……」
 びくっと体を震わせ声が漏れる。
「……そんな、エロい声出すなよ。我慢できなくなるだろ?」
 再び耳元でイーサンが低い声で呟いた。
「なっ……」
 恥ずかしさで顔が真っ赤になり体温が上昇していく。
 そんなセバスチャンの様子に気が付いたかどうかは分からないが、ガバッと体を起こしたかと思うと、イーサンが上着を脱ぎ始める。
「ちょっ……ちょっと待てっ! さっきも言ったが、俺は明日仕事なんだっ!」
 赤い顔のまま焦ったように声を上げる。
「…………」
 すると、イーサンは意外そうな顔でちらりと黙ってセバスチャンを見下ろした。
「だ、だからっ」
「ふぅん? その反応は期待してるってことでいいんだよな?」
 続けて話そうとしたセバスチャンの言葉を遮るように、イーサンは口の端を上げながらじっと見下ろしてきた。
「なっ!?……何を言ってるんだ! ち、違うっ!」
 あまりの恥ずかしさで体中から湯気でも出そうな程に熱くなっていく。
「どう違うんだ? なんだかんだ言ってセバスチャンも期待してるってことだろ?」
 にやりとした顔のままじっとセバスチャンを見下ろし、イーサンはネクタイをぐいっと緩めて外すとそのまま床に放った。
「ち、違うっ! き、期待なんかするかっ! 勝手なことを言うなっ!」
 恥ずかしさから涙ぐみ、それでも目を見開きながら大声で反発する。
「ふむ……まぁいいさ。セバスチャンが素直じゃないのなんていつものことだからな」
 シャツのボタンも全て外したイーサンは、シャツも脱いでバサッと床へと放り投げた。
 イーサンの強靭な上半身が露となった。
 見慣れているはずなのに、なぜだか無性に恥ずかしくて顔を背けるが、いつの間にかイーサンはセバスチャンの上着のボタンを外し始めていた。
「だ、だから待てと言っているだろっ!」
 ハッと気が付き慌ててイーサンの手を掴み、睨み上げる。
「俺は犬じゃない。それに、2週間も放っておかれてこのまま帰るわけないだろう。なぁ? セバスチャン」
 淡々と話しているが、どこか意地悪そうな声色に聞こえてくる。
 必死に掴んだ手もむなしく、イーサンはセバスチャンの上着のボタンを全て外してしまった。
 そして今度はセバスチャンのタイを外し、シャツのボタンを1つずつ外し始める。 
「べ、別にっ、俺が放っていたわけじゃないだろっ! お前が勝手にっ――」
「そうだな。俺が勝手に拗ねてただけだ。でも、会いに来なかったじゃないか、セバスチャンも」
 怒って言い返すセバスチャンの言葉に被せながら、今度はどこか責めるような口調でイーサンが話す。
「だ、だからってっ!」
「もう限界なんだよ」
 睨み付けるセバスチャンを無視するように、イーサンは低い声でそう言うと、そのまま覆いかぶさるようにセバスチャンの体の上に自分の体を合わせ、強引に唇を重ねたのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

飼われる側って案外良いらしい。

なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。 なんでも、向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。 「まあ何も変わらない、はず…」 ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。 ほんとに。ほんとうに。 紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22) ブラック企業で働く最下層の男。悪くない顔立ちをしているが、不摂生で見る影もない。 変化を嫌い、現状維持を好む。 タルア=ミース(347) 職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。 最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

処理中です...