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Lovers~晴れのち曇り、時々雨~【スピンオフ】
第21話
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言われた言葉にセバスチャンは大きく目を見開いた。
あれは、イーサンが拗ねて言っているだけだと思っていたが、本当に『片想い』だと思っているのだろうか?
いや、まさかイーサンに限ってそんなはずはないと、セバスチャンは頭の中で否定して首を横に振る。
「セバスチャン、答えてくれ。どうなんだ?」
しかし、真剣な顔でイーサンは見つめている。
一体なんなんだ。何を言わせたいんだ。いや、『言わせたい』のだろう。あの『言葉』を。
「セバスチャン……」
今度は少し悲しそうな顔でイーサンがじっと覗き込んできた。
こんな顔は初めて見る。
思わずセバスチャンは焦ってしまった。
「いや……」
「いや?」
「だから、その、俺はっ……いや、だって、分かるだろ? そんなの言わなくたって……6年だぞ? 嫌いなやつとか、どうでもいいやつと、6年もなんてありえないだろっ」
更に顔を覗き込まれ、どう答えればいいか分からず顔を逸らして慌てながら答える。
いや、答えなければいけない言葉は分かっている。分かっているのだが……。
「だから?」
しつこく顔を覗き込んでくるイーサン。
先程もそうだが、今日は妙に意地悪だ。普段から態度も口も悪いのだが、今日はなんとも言えない陰険さを感じる。まるでルイと話しているようだ。
ふたりとも自分より年下だというのに、なぜこうも上手いこと言い返せないのか。
「だ、だからっ、別に、お前は片想いなんかじゃ……」
自分で言って顔がどんどん熱くなっていくのが分かる。
「ちゃんと言って?」
じっと顔を見られてセバスチャンはぶわっと顔が真っ赤になった。
なぜかいつもと口調が違うイーサンに戸惑う。
更に緊張しているのか、手が震えている。
「だ、だから……」
「だから?」
「お、俺は……その……」
「うん?」
「……あー、もうっ! なんなんだよっ、さっきから! お前なんか変だぞっ?」
まるで問い詰められているような気持ちになった後、セバスチャンはどうにもイーサンの態度と口調が気持ち悪くなり声を上げる。
「別に変じゃない。聞いてるだけだろ? なんだ、嫌なのか?」
急にいつもの無表情と口調に戻ると、近付けていた顔を離してイーサンはじっと見下ろしてきた。
「……嫌だ」
ふいっと顔を逸らしてセバスチャンは口を尖らせる。
イーサンと話しているのに、まるで別の人間と会話しているようで嫌だった。
「ふん、まったく……セオのやつ嘘つきだな……何が優しく話してやれだよ」
顔をすっと横に向けると、イーサンは顎に手を当てながらぼそりと呟いている。
一体なんのことを言っているのかとセバスチャンはこてんと首を傾げた。
「はぁ……ったく。なんで言わないんだよ、セバスチャンは。だから、俺が聞きたいのは、セバスチャンの口から『好きだ』っていう言葉なんだよ。なんで分からないんだよ。6年だぞ? あんた、自分でさっき言っただろ? そうだ、6年間ずっとあんたの口から、俺に『好きだ』って言葉が一度もないんだよ」
大きく溜め息を付いて髪をぐしゃっとかき上げたかと思うと、イーサンは早口で一気に捲し立てた。
先程までとは違い、どこか苛ついた顔をしている。
「っ!」
言われた言葉に呆然としながらも顔がじわじわと熱くなる。
「そん、なの……」
恥ずかしくなり俯くと、ぼそりと呟いた。
なぜこんなに拘るのかが理解できない。ただの言葉でしかないのに。そんな言葉になんの意味があるのか。
「人は……嘘をつく、生き物だ……」
「は?」
俯いたまま呟くように話したセバスチャンの言葉に、イーサンは眉間に皺を寄せながら首を傾げる。
「そんな言葉……意味ないだろうっ」
勢いよく顔を上げ、セバスチャンは思い切りイーサンを睨み付けた。
人は嘘つきだ。平気で嘘をつく。騙すために嘘をつく。自分を良く見せるために嘘をつく。信じて裏切られたことが何度ある?
人から発せられた言葉など、ただの音でしかない。自分が欲しいのは事実だけだ。愛だの恋だのなんて、自分には必要のない物だ。
「セバスチャンっ」
ぐっと強く両肩を掴まれてセバスチャンはハッとした。
いつの間にか目の奥が熱くなっている。端からじわりと涙が滲んでいた。
「怖がるな」
低い声でイーサンがすぐ目の前でそう言った。
(怖い? 何を?)
言われた意味が分からず、先程まで熱くなっていた顔も目の奥もすっと熱が引いていくようだった。
「何がだ」
強がっているわけではない。本当に言われた意味が分からなかった。
「怖がってるだろ。さっきので分かった。セバスチャンは怖いんだよ、裏切られるのが」
「なっ!」
呆れたような顔で話すイーサンに、再び全身の熱が上がったような気がした。
「何があったか知らないが、俺は嘘はつかない。絶対に」
今度は真剣な表情でいつか見た黒く強い瞳で見つめられる。
「嘘つけっ! お前だって嘘つくだろっ」
しかし頭にきてすぐに言い返した。どの口がと言いたい気分だった。
「俺が? いつ?」
なんとも不満げにイーサンがセバスチャンの顔を覗き込む。
「見るなっ。お、お前、ついこの前だって嘘ついたじゃないかっ」
急に顔を覗き込まれて顔がカッと熱くなる。全身の血液が顔と頭に上っているようだった。
「この前? なんのことだ?」
更にムッとしたような顔で首を傾げるイーサン。
その反応にセバスチャンは思い切り睨み付けながら答える。
「お前の嘘で面倒なことになったんじゃないかっ。まさか、自覚ないのかっ?」
「俺の嘘? なんのことだよ」
本当に分からないと言った顔でイーサンはじっとセバスチャンを見つめ返した。
「は? お前はバカなのか? イアンとのことを嘘ついただろうっ、俺とグスターヴァルにっ」
ありえないと思いながらも強い口調で言い返す。
まさかわざとなのか?
「は? イアン?……あぁ、『あのこと』か。だったら俺は嘘はついてない」
「なにっ!」
少し考えるような仕草をして漸く理解したのか、しかしイーサンが発した言葉にこれ以上ないくらいに頭にきた。
思わずイーサンの胸倉を掴んで目を見開きながら睨み付ける。
「嘘は言っていない。俺はイアンの抱き心地が良かったって言っただけだ。『抱いた』とは一言も言っていないだろう? 実際、あいつを後ろから『抱き締めて』眠ったんだからな」
睨み付けているセバスチャンのことを、いつものような無表情でイーサンが見下ろした。
あれは、イーサンが拗ねて言っているだけだと思っていたが、本当に『片想い』だと思っているのだろうか?
いや、まさかイーサンに限ってそんなはずはないと、セバスチャンは頭の中で否定して首を横に振る。
「セバスチャン、答えてくれ。どうなんだ?」
しかし、真剣な顔でイーサンは見つめている。
一体なんなんだ。何を言わせたいんだ。いや、『言わせたい』のだろう。あの『言葉』を。
「セバスチャン……」
今度は少し悲しそうな顔でイーサンがじっと覗き込んできた。
こんな顔は初めて見る。
思わずセバスチャンは焦ってしまった。
「いや……」
「いや?」
「だから、その、俺はっ……いや、だって、分かるだろ? そんなの言わなくたって……6年だぞ? 嫌いなやつとか、どうでもいいやつと、6年もなんてありえないだろっ」
更に顔を覗き込まれ、どう答えればいいか分からず顔を逸らして慌てながら答える。
いや、答えなければいけない言葉は分かっている。分かっているのだが……。
「だから?」
しつこく顔を覗き込んでくるイーサン。
先程もそうだが、今日は妙に意地悪だ。普段から態度も口も悪いのだが、今日はなんとも言えない陰険さを感じる。まるでルイと話しているようだ。
ふたりとも自分より年下だというのに、なぜこうも上手いこと言い返せないのか。
「だ、だからっ、別に、お前は片想いなんかじゃ……」
自分で言って顔がどんどん熱くなっていくのが分かる。
「ちゃんと言って?」
じっと顔を見られてセバスチャンはぶわっと顔が真っ赤になった。
なぜかいつもと口調が違うイーサンに戸惑う。
更に緊張しているのか、手が震えている。
「だ、だから……」
「だから?」
「お、俺は……その……」
「うん?」
「……あー、もうっ! なんなんだよっ、さっきから! お前なんか変だぞっ?」
まるで問い詰められているような気持ちになった後、セバスチャンはどうにもイーサンの態度と口調が気持ち悪くなり声を上げる。
「別に変じゃない。聞いてるだけだろ? なんだ、嫌なのか?」
急にいつもの無表情と口調に戻ると、近付けていた顔を離してイーサンはじっと見下ろしてきた。
「……嫌だ」
ふいっと顔を逸らしてセバスチャンは口を尖らせる。
イーサンと話しているのに、まるで別の人間と会話しているようで嫌だった。
「ふん、まったく……セオのやつ嘘つきだな……何が優しく話してやれだよ」
顔をすっと横に向けると、イーサンは顎に手を当てながらぼそりと呟いている。
一体なんのことを言っているのかとセバスチャンはこてんと首を傾げた。
「はぁ……ったく。なんで言わないんだよ、セバスチャンは。だから、俺が聞きたいのは、セバスチャンの口から『好きだ』っていう言葉なんだよ。なんで分からないんだよ。6年だぞ? あんた、自分でさっき言っただろ? そうだ、6年間ずっとあんたの口から、俺に『好きだ』って言葉が一度もないんだよ」
大きく溜め息を付いて髪をぐしゃっとかき上げたかと思うと、イーサンは早口で一気に捲し立てた。
先程までとは違い、どこか苛ついた顔をしている。
「っ!」
言われた言葉に呆然としながらも顔がじわじわと熱くなる。
「そん、なの……」
恥ずかしくなり俯くと、ぼそりと呟いた。
なぜこんなに拘るのかが理解できない。ただの言葉でしかないのに。そんな言葉になんの意味があるのか。
「人は……嘘をつく、生き物だ……」
「は?」
俯いたまま呟くように話したセバスチャンの言葉に、イーサンは眉間に皺を寄せながら首を傾げる。
「そんな言葉……意味ないだろうっ」
勢いよく顔を上げ、セバスチャンは思い切りイーサンを睨み付けた。
人は嘘つきだ。平気で嘘をつく。騙すために嘘をつく。自分を良く見せるために嘘をつく。信じて裏切られたことが何度ある?
人から発せられた言葉など、ただの音でしかない。自分が欲しいのは事実だけだ。愛だの恋だのなんて、自分には必要のない物だ。
「セバスチャンっ」
ぐっと強く両肩を掴まれてセバスチャンはハッとした。
いつの間にか目の奥が熱くなっている。端からじわりと涙が滲んでいた。
「怖がるな」
低い声でイーサンがすぐ目の前でそう言った。
(怖い? 何を?)
言われた意味が分からず、先程まで熱くなっていた顔も目の奥もすっと熱が引いていくようだった。
「何がだ」
強がっているわけではない。本当に言われた意味が分からなかった。
「怖がってるだろ。さっきので分かった。セバスチャンは怖いんだよ、裏切られるのが」
「なっ!」
呆れたような顔で話すイーサンに、再び全身の熱が上がったような気がした。
「何があったか知らないが、俺は嘘はつかない。絶対に」
今度は真剣な表情でいつか見た黒く強い瞳で見つめられる。
「嘘つけっ! お前だって嘘つくだろっ」
しかし頭にきてすぐに言い返した。どの口がと言いたい気分だった。
「俺が? いつ?」
なんとも不満げにイーサンがセバスチャンの顔を覗き込む。
「見るなっ。お、お前、ついこの前だって嘘ついたじゃないかっ」
急に顔を覗き込まれて顔がカッと熱くなる。全身の血液が顔と頭に上っているようだった。
「この前? なんのことだ?」
更にムッとしたような顔で首を傾げるイーサン。
その反応にセバスチャンは思い切り睨み付けながら答える。
「お前の嘘で面倒なことになったんじゃないかっ。まさか、自覚ないのかっ?」
「俺の嘘? なんのことだよ」
本当に分からないと言った顔でイーサンはじっとセバスチャンを見つめ返した。
「は? お前はバカなのか? イアンとのことを嘘ついただろうっ、俺とグスターヴァルにっ」
ありえないと思いながらも強い口調で言い返す。
まさかわざとなのか?
「は? イアン?……あぁ、『あのこと』か。だったら俺は嘘はついてない」
「なにっ!」
少し考えるような仕草をして漸く理解したのか、しかしイーサンが発した言葉にこれ以上ないくらいに頭にきた。
思わずイーサンの胸倉を掴んで目を見開きながら睨み付ける。
「嘘は言っていない。俺はイアンの抱き心地が良かったって言っただけだ。『抱いた』とは一言も言っていないだろう? 実際、あいつを後ろから『抱き締めて』眠ったんだからな」
睨み付けているセバスチャンのことを、いつものような無表情でイーサンが見下ろした。
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