White cat in Wonderland~その白い猫はイケメンに溺愛される~

ハルカ

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Lovers~晴れのち曇り、時々雨~【スピンオフ】

第12話

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 近頃の自分はどうもおかしい。
 もっとはっきり嫌だと言って突き放せばいい。拒絶すればいいのだ。
 それなのに、なぜできない?
 いつも気が付くとすぐそばにイーサンがいて、あの黒く強い瞳で見つめられている。
 何かされたり邪魔されるわけではないが、気が散って仕方がない。
 唯一心休まる読書の時間を奪われているのだ。
 いや、違う。
 父に事情を話して、自分の自由にできる時間を変えてもらえば済むだけの話だ。
 しかし、それをしていない。嫌なはずなのに……。
 なぜか拒否できない自分がいる。
(まさか、絆されたのか? この俺が?)
 いやいやとセバスチャンは首を横に振る。
 絆されたわけでも、ましてやイーサンのことを好きになったわけでもない。
 ただ、拒否する理由がないだけだ。
(ん?)
 なぜ理由がないのだ?
 こてんと首を傾げる。
 これじゃまるでこの状況が嫌じゃないみたいじゃないか。
(嫌じゃない?)
 ふと頭に浮かんだ言葉に驚いた。
「まさかっ!」
 思わず声を上げてしまった。

「何がだ?」

 すると突然、すぐ近くからあの男の声が聞こえた気がしてびくっとする。
 いや、そんなはずはない。
 今自分はベッドの上で、布団の中なのだ。
 そして今は夜で自分の部屋にいる。
 まさか幻聴まで聞こえるようになったのか?
「さっきから何をコロコロと表情を変えてるんだ? 面白いぞ?」
 また聞こえてきた。
「はっ?」
 ついにおかしくなったのかとも考えるが、こんなにはっきりと幻聴が聞こえるものだろうか。いや、そんなまさか――。
 ハッとして横を見る。
「ん?」
 こてんと首を傾げるイーサンと目が合った。
「はぁっ!?」
 目が飛び出すんじゃないかと思うほどに目を見開く。
 幻聴でも幻覚でもないのなら、今この目の前にいるのは現実か?
「なんでお前がここにいるっ!」
 もうすぐ夜中だというのに大声を上げてしまった。
「んー? 会いたかったから?」
 首を傾げたまましれっとした顔でイーサンが答える。
 ありえない。
 こんな勝手に他人の部屋に侵入するなどと。
「ふざけるなっ! 今すぐ出ていけっ!」
 ガバッと体を起こすと、セバスチャンは更に大声で怒鳴り付けた。
「嫌だね。だってセバスチャン、俺のこと好きだろ?」
 ムッとした顔でイーサンも体を起こすと、セバスチャンの両肩を掴んでそのままベッドに押し倒した。
 ぼすんと枕に頭が沈む。
「うわっ……な、何をするっ!」
 痛くはなかったが驚いて声を上げ、そのままイーサンを思い切り睨み付ける。
「セバスチャン……好きだ」
 しかしイーサンは退くことなく、じっとセバスチャンを真面目な顔で見つめ、そのままキスをしてきた。
「んっ……んんっ」
 ぐいぐいと胸を押すが全く動かない。
 なぜまたキスをされているのか。
 しかもまた舌を口の中へと侵入させてきた。
「んぅっ……」
 必死にもがくのも虚しく、舌を絡ませ噛み付くようにキスをするイーサン。
 嫌なはずなのに、やはり拒めない。
 思い切り頬を叩いて怒ることだってできるはずだ。
 それなのに……気持ちいいなんて思ってしまっている自分がいる。
 一体自分はどうしてしまったのか。
 あの黒い瞳に見つめられたからか?
 分からない……。
 頭が混乱している中で、イーサンのキスはどんどん深くなっていく。
 ぼんやりとしてしまっていると、着ているパジャマのボタンを外し、イーサンの指がセバスチャンの肌を滑らすように触り始めた。
「んっ……」
 左の乳首を触られ思わず体がびくんと跳ねる。
「セバスチャン……」
 漸く唇を離したイーサンは、ぼそりと名前を呼びながらそっとセバスチャンの首筋に口付けをする。
「ふ……んっ……」
 右手を腰に、左の指でセバスチャンの右の乳首を転がし、唇で左の乳首を咥える。
 そして舌で転がすように舐めていく。
「ふぁっ!……んんっ……っ」
 一体何をされているのか、頭が追いつかない。
(ダメだ……拒否しないと……)
 なんとなく分かってはいるものの、まるで体が言うことを聞かないみたいに動かせない。
 イーサンに触れられた部分が熱くておかしくなりそうだった。
 更にイーサンの右手がセバスチャンの下着の中へと入っていく。
「あっ!」
 1番敏感な部分を触れられ思わず声を上げる。
 こんなこと、ダメなのに。
 なぜ拒否できないのか。
 このまま受け入れてはダメだ。
「セバスチャン……好きだ」
 再びイーサンが耳元で囁く。
 それは魔法の呪文のように、低く耳の奥に響くようだった。



 ☆☆☆



「っ!」
 朝になり、ハッと目が覚めて思わず勢いよく体を起こす。
(あれは、夢か?)
 昨夜のことが曖昧で、夢なのか現実なのかが分からなくなっていた。
(夢だ……いや、夢でもあんなことっ……)
 口元を両手で覆いながら、セバスチャンは顔を真っ赤にさせる。
 キスだけでなく、イーサンと性行為をしてしまうなんて。
 そんな夢を見た自分が許せない。
 そう思った時だった。
「ん……」
 すぐ近くから男の声が聞こえた気がしてぎょっとする。
「はっ?」
 パッと横を見ると、自分のすぐ横に気持ち良さそうに眠るイーサンの寝顔があった。
「っ!?」
 夢じゃなかった。
 大きく目を見開き、更に体温が上昇する。
(嘘だ嘘だ嘘だ!)
 頭の中で叫び続ける。
 まさか本当にイーサンとしてしまったのか? 自分は……。
 必死に自問自答する。
 しかし答えが出てこない。
 なぜなのか全く分からない。
「なんでだっ!」
 思わず大声を出してしまった。
「うっ……んー……」
 今の声でイーサンが目を覚ましたようだった。
 ぐぐっと両腕を上に伸ばしている。
「ふ……ふぁあ……ん?」
 伸びをしたまま目を開けて、ちらりとセバスチャンの方を見た。
「っ!」
 目が合ってしまいセバスチャンの顔が再び真っ赤になる。
「ふっ……おはよ。なんだよ、今更恥ずかしがってんのか?」
 余裕の笑みを浮かべ、イーサンは両手を頭の後ろに置く。
「はっ? な、何言ってんだっ! お、お前っ! お、俺に何かしただろっ!」
 真っ赤な顔のままイーサンに怒鳴り付ける。
 あんなこと、きっと魔法か何かでおかしくされたに違いないと考える。
「何かって、何言ってんだ? セックスしただろ?」
 しれっとした顔で答えるイーサンに、セバスチャンは頭の中が沸騰しそうなほどに熱が上がった。
「なっ!」
「覚えてないわけじゃないだろ? あれだけ気持ち良さそうにしてたのに」
 よいしょっと声を出しながらイーサンも体をゆっくりと起こし、じっとセバスチャンの顔を覗き込む。
「なっ! だ、誰がっ!」
 湯気でも出そうなほどに顔が熱い。
 頭がおかしくなりそうだ。
「ふっ……まぁ別にいいけど。俺も気持ち良かったし」
 なんとも良い顔でじっとイーサンが見つめてくる。
「はぁっ?」
 この顔がまたムカつくのだ。思い切りイーサンを睨み付ける。
「体は大丈夫だろ? 痛みが出ないっていう液体使ったし。体に害もないはずだから平気だろ」
 そう言ってチュッとイーサンがセバスチャンの頬にキスをした。
「なっ! お、お前っ! お、俺は、初めてだったんだぞっ! キ、キスだってっ!」
 頭が混乱し過ぎてとんでもないことを口走ってしまった。
 ハッと気が付き思わず口を両手で押さえる。
「へぇ~。セバスチャン、初めてだったのか。それはいいことを聞いた。……まぁ、俺もそうだけど」
 にやりと笑い、嬉しそうな顔でイーサンがじっと見つめてくる。
「はぁっ? お前が初めてなわけないだろっ」
 その顔で、と思わず言いそうになり慌てて止める。
「なんでだ? 俺が初めてじゃダメなのか?」
 不思議そうな顔でイーサンはこてんと首を傾げる。
「だ、だってお前っ、な、慣れてるだろっ」
 かぁっと顔を赤らめたまま反論する。
「ふむ……そうか。つまりそれは上手かったと言いたいんだな」
 口元に手を当て、うんうんと頷いている。
「ち、違うっ! お前みたいなのが初めてなわけがないだろっ! どうせ色んなところで遊びまくってるに決まってるっ!」
 なぜだか悔しくて涙目になりながら言い返す。
「俺が? なんでだ? 15年生きてきて今まで一度も他人に興味なかったのに?」
 じっと顔を覗き込みながらイーサンが問い返す。
「は……はっ? 15年って……おま、お前っ、15歳なのかっ!?」
 聞こえた言葉に一瞬固まってしまった。
 この顔で、この体で、あれで15歳だと?
 ありえないといった顔でセバスチャンは目を見開いた。
「ん? そうだが? 何か問題か?」
 きょとんとした顔でイーサンは首を傾げている。
「はぁぁぁぁ……」
 思わず大きな溜め息が出てしまった。
 年下とは思っていたが、まさか相手が15歳の子供だったなんて。
 ありえない。
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